たぶん、庇護欲②
……なんかめちゃめちゃ移動してない?
レヴシオンが忘れ物をしたと言って別れた後、カリナはすぐにヴェールを使った。
念のため、の魔法だった。
日差しが心地よく、少し眠くなってきたなとポヤポヤしていたら、急に意識が飛んだ。
気がつくと手足を縛られ、ガタゴトと荒く揺れる荷馬車に乗せられていた。
「どうしてこんなことに……。」
今日は帰ったらレヴィとチョコスコーンを食べながら、昨日読み始めた本の続きを読もうと思っていたのに。優雅な放課後が一変。少しやばい感じ出てるなぁ。
荷馬車の中には人影はなく、カリナは荷物の隙間に詰め込まれている状況だった。
今のうちに自力で脱出してもいいけど、どうしてこんなことになってるか知りたい気持ちもあるし、脱出するのは着いてからでもいいか……?
どうしようかと悩んでいる間も荷馬車はどんどん進む。
「うわあ、どうしよう。レヴィ心配するよなあ。」
自分が力のある人間だと分かっていると、こんな絶望的な状況でも全く不安にならない。
靴も片方なくなっているが、どうせ回復できるし裸足でもいいか、もう片っぽも脱いじゃおう、なんて雑な考えに至る。
「おい、ちゃんとターゲットを捕まえてきたんだろうな。」
「ああ、情報通りだ。門からすぐのベンチで寝ている令嬢を、迎えのフリをして丁寧に連れてきた。」
「特徴は確認したのか。」
「あ、ああ。たぶん大丈夫だ。他にベンチで眠っている女はいなかったから間違いないだろ。」
御者台から声がする。どうやら実行犯は二人、雇われみたいだ。
そしておそらく攫う相手を間違えている。私はたまたまあのベンチに座ったわけだから、カリーナを攫おうとしていたわけではないらしい。
ヴェールをかけていたのが仇となったみたいだ。キミ、特徴の確認はできていないだろう。
そしてもう一つ気になるのが「寝ている令嬢」という情報。あのベンチには故意に寝かせる魔法が組み込まれていたのかもしれない。
「ターゲットの子は誰だったのかな〜。」
自分には力がある。
今逃げることもできるが、そうなるとこの事件は解決せず、また実行されてしまう。
自分の力で解決できそうな問題が手の届く範囲にあるなら、解決してしまいたいよな。
最悪、やばい状況になったとしても実力行使なしでステルスでどうにか逃げられる気もする。
「問題はレヴィだよなあ。」
きっとレヴィは焦りを顔に出さないまま、私のことを心配してくれている。
テレパシー使えないかな。
そうだ、テレパシー使ってみようかな。
きっと使えるよな。
「さて、魔法のイメージを膨らませて……。テレパシー。」
……。
…………。
……………………。
(あ、そうか、語りかけが必要だよね。も、もしもーし!聞こえますか?聞こえたら返事してください!もしもーし!)
(……!?なんだ、変な声が聞こえた気が……。)
(あ、ど、どちら様ですか?)
(え、は?え、怖……。どちら様ってお前がどちら様だよ。)
(あ、かけ間違えました。すみません。失礼します。)
「クローズ。……でいいかな?」
思念を送ってみるが、もう返事はない。電話はちゃんと切れたらしい。
「できたけどできてないな。」
相手を思い浮かべたらできたりしないかな?というか、今どこの誰と繋がっていたのかな?
もう一度試してみようかと思案しているカリナの耳に、また御者台から声が聞こえてきた。
「なあ、変なこと聞くんだがよ、今お前話さなかったよな?」
「あ?お互い何も話してなかっただろ。」
「だよな。……なあ、モシモシとか言ってる変な声聞こえなかったか?」
「は?モシモシ?なんだそれ。お前大丈夫か?」
「いや、いいんだ、忘れてくれ。少し疲れてるみたいだ。」
「まだもう少しかかるから、その間目を瞑っておけよ。」
「ああ、そうさせてもらう。」
お前かーーーーー!
何も考えずに発動したテレパシーは、どうやら身近な人物への語りかけになっていたらしい。
お化け屋敷とかで使えそうな魔法だ。
次も失敗したらこの男たちはどんな会話をするのだろうか。
「とりあえずものは試し。レヴィのことを考えながら……テレパシー。」




