たぶん、庇護欲③
カリナの靴を握りしめて、門の近くのベンチに腰掛け考える。
正直、追いかけなくてもカリナは無傷で帰ってこられると思う。
そうは言っても、カリナが誰かに殺される未来が今日でないと否定しきれない。
ただ、僕としては呪いを一番警戒するべきだと思っているから今回攫われた?ことはそこまで問題ではない気もしている。
そうだ、今度頭部を守る加護を付与したヘアアクセサリーでもプレゼントしよう。
自覚のないまま動揺しているレヴィの視界が、突然暗くなる。
顔を上げると目の前にユイが立っていた。
「追いかけて来ちゃいました。……このベンチ、私のお気に入りの場所なんです。お隣座ってもいいですか?」
「好きにすれば。」
カリナのことで頭がいっぱいのレヴシオンは、適当に返事をする。
ユイはやった!と小さくガッツポーズをしてベンチに腰掛け、黙って虚空を見つめるレヴシオンに体を向けた。
「あれ……?片方だけ?その靴、どうしたんですか?」
レヴシオンは目だけ動かしてユイを見ると、適当な返事をしたことを少しだけ後悔して、小さくため息をついた。
「僕のお姫様の靴。脱げたままどっか行っちゃったみたい。」
「お、お姫様ってカリーナ様のことですか!?僕のってことはつまりお二人はお付き合いされてるんですか!?もしかしてとは思っていましたがちょっと想定外でした……。そもそもレヴシオン様って一体何者なんですか?カリーナ様とはいつから交流されているんですか?いつも見失うのはなんでなんですか?」
レヴシオンは興奮して矢継ぎ早に話すユイに驚き、改めて、適当な返事をしたことを後悔する。
「全部ノーコメント。ねぇ、君こそカリナと僕に何の用?」
「ファンです!!!!!」
ユイは興奮したまま被せ気味に答えた。
その様子をレヴシオンは怪訝な顔で見守り、そしてため息をつく。
「全く意味が分からない。悪いけど、今僕忙しいんだよね。分かるでしょ?」
握りしめた片方の靴をちらつかせ、席を立つ。
また今度にしてよね、とベンチから離れようとした時、思いもよらぬ声が聞こえた。
(もしもし、もしもーし、聞こえてたらお返事ください。もしもーし。)
辺りを見るが、声の主は見当たらない。
間違いなく彼女の新作魔法だ。
発動条件が分からない以上、この場を離れるわけにはいかない。
「カリナ……?」
(あ、レヴィ?聞こえてる?よかった!レヴィだ。口に出さなくても大丈夫だからね。心配してるかと思って連絡したんだけど、私は大丈夫だから先に帰ってていいよ。)
(待って。どういう状況?説明してから大丈夫って言ってくれる?僕今カリナの靴持ってるんだけど。)
(拾ってくれたんだ。そしたらこっちの足も持って帰ろうかな。)
(どこに向かってるわけ?いつ帰ってくるの?)
(はは、どっちも調査中なの。情報収集してから帰ろうかなと思って。なんか誰かと間違えられてるみたいなんだよね。)
(僕も行く。)
(いや、すぐ帰るから心配しないで!先にチョコスコーン食べて待っててよ。)
「は?何言ってるの?」
「レヴシオン様?どうなされたんですか?」
「あー、声に出てた。」
(レヴィ誰かと一緒だった?また連絡するね!クローズ!)
(待って、まだ話終わってないんだけど。カリナ?カリナ!)
「レヴシオン様?」
きょとんとした顔で心配そうにユイがレヴシオンの顔を覗く。
「あー……。カリナのことが恋しすぎて変になってたみたい。もう帰る。」
「心配です!私もカリーナ様のこと一緒に探します!」
「いやもう帰るの。もう家にいると思うから大丈夫。馬車に乗る時に脱げたんでしょ。」
「ではお家までご一緒しませんか?せっかくやっとお話する機会ができたので、ぜひ!」
「いや遠慮するよ。放っておいて。」
面倒くさくなって放ってその場を後にしようとした時、見覚えのある甲冑が視界に入った。
「何か揉め事ですか?」
青い髪の甲冑男が声をかけてくる。
「貴方はカリナ様の……。」
「は?君はカリナのなんなの。親しそうにしないでくれる?」
困り顔をするルイス団長に、ユイが助け舟を出す。
「こちらのルイス団長は、放課後に私の警護を担当してくださっている王国騎士第二部隊の騎士団長さんです!そしてこちらはカリーナ様といつも一緒におられるレヴシオン様です!」




