表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/51

32話 ――

 


 私は厳重げんじゅうな警備の中、東の森の中に来ている。


 左右にはミルテとカリン、その周りを聖騎士や魔導士達が囲んでくれている。


 分厚い雲が張っているが、時刻でいえば夕暮れ。


 いつもであれば既に月も出始めている頃だ。

 もう結界も張れるだろう。


「聖女様」


 聖魔導士の一人が頭を下げて待っていた。

 彼が石を発見したのだろう。


「ご苦労様です。それで石はどちらに?」

「はいご案内いたします。」


 暗闇の森の中を火魔法の灯りを頼りに進む。

 しばらくすると一等大きな木の下に禍々(まがまが)しい気配を感じた。


「あれが……」


 思っていたよりも瘴気しょうきが濃い。

 まだ距離があるのに既に肌が粟立っていた。


 これは早く結界内に封じたほうが良さそうだ。



「始めます」


 私はその石を包むようなイメージで祈り始める。



 ――祈り始めるとすぐに変化が訪れた



 いつもの銀色の光ではない。

 森を照らしたのは赤黒い稲妻いなづま


 石から放たれた稲妻は真っ直ぐに私に向かってくる。

 張りかけの結界は間に合いそうにない。



「イレーネ様!!」



 変化に気が付いたミルテがすぐに私を抱えて飛び退いたことで稲妻を食らうことはなかったが、先ほどまでいた場所には黒い焦げ跡ができていた。


「ご無事ですか!?」

「え、ええ。ありがとうミルテ」


 突然の攻撃に辺りは一斉に臨戦態勢りんせんたいせいになりミルテとカリンが私の前をたちふさぐ。

 その隙間から見えた光景に、私は理解が追いつかなかった。



 石の稲妻はすぐに大きくなり、それはやがて大きな獣の形をとったのだ。

 真っ赤な毛並みに赤黒い瞳。


 それは報告にあった赤い獣だった。

 その獣が空に向って吠えるといつの間にか周りには大量の魔物の姿。


「っ! 魔物!?」


 辺りはすぐに騒然そうぜんとなった。

 そこかしこで戦闘が始まる。



 ――キィンッ


 ――カンカンッ


 ――ザシュッ


 甲高い剣の音が耳に届く。


 ミルテや聖騎士たちが前に出て魔物を切っていく。

 聖魔導士達は光属性の魔法で応戦していた。



(そうだ。私も結界を張らないと!)


 我に返り祈りを再開する。


 すぐさま結界が森に広がり魔物を消していく。


「おお! 流石聖女様!」


 誰かが声をあげる。

 その声に安心した。


(よかった。群れの魔物にも結界は効くみたいね)


 結界は順調に広がり赤い獣に届く。






 ……かに思われた。



「――……あ、う……」


「「イレーネ様ああああ!!!!」」



 安心から気がゆるんだのだろうか。

 それとも結界があるからと油断したのだろうか。


 地下に忍ばされていた稲妻に気が付くことなく、気が付けば背中から私の体は刺し貫かれていた。



 ――ビキビキ


 ――何かにひびが入る音が聞こえた気がした



 稲妻が消え、私の体は崩れ落ちる。


「イレーネ様!! お気を確かに!!」


 カリンとミルテがすぐさま駆け寄ってきて傷の確認を始める。


「っ!? 傷が……ない!?」


 貫かれたはずの体には服は破れているのに傷跡はなく、血の一滴すらこぼれていない。

 だけど私には彼女たちが何かを言っている言葉に耳を傾ける余裕など微塵みじんもなかった。



「う……あぐ」



 ざあざあと頭の中に映像が映し出される。

 知るはずもない見たことのない景色、見たことのない人たち。


 頭の中に直接映像が流し込まれてくるような、それまでせき止められていたものが一度に雪崩なだれ込んでくるような。

 そんな不快な感覚が体を支配する。


 それが何なのか、ところどころ黒く塗りつぶされたり音が割れたりしていて鮮明には分からない。

 だが映像はある一点で止まった。


(なに……? 赤い獣……の隣に誰か、何かがいる)


 その何かが笑ったような気がした。


 ゾクリと粟立つ肌。

 腹の中をめちゃくちゃにかき乱されるような気持ち悪さ。


 向けられた視線は……膨大ぼうだいな殺意だ。


「うう……頭が……」


 平衡へいこう感覚がめちゃくちゃになり立っていられない。

 その場にうずくまる。



(あれは……だれ? でも私はあの人を、知っている。あの視線を受けたことがある……)



 ――リィン


 呑まれかけた思考の中、鈴の音が聞こえた。


 黒に包まれた先に白い光が見える。

 温かい光だ。



『――急いで。もう時間がない……』


 白い光が発したどこか懐かしい声に胸がざわめいた。


(そうだ。急がないと……あれを止めないと)



 遠くで戦う音が聞こえる。


「ル、ドニー……クさ……」


 それでも意識をつなぎ留めておく術はなく、私の意識はそこで黒く塗りつぶされた。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


などと思っていただけた方はぜひとも下の評価機能(☆☆☆☆☆が並んでいるところ)から評価をお願いいたします!


おもしろいと思っていただけたら星5つ、つまらないと思ったら星1つ、本当に感じたままに入れてくださるとうれしいです。


また、ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


皆様から頂いた時間や手間が作者にはとても励みになりますので是非とも!宜しくお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ