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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第八十三話 大きな逃げ傷

 山城歴157年 進入禁止宙域 警備船クリュ


 通常の状態に戻った蒼鷹は真希艦長の指示通りに逃走を開始、その優れた航行性能を使い全力で大型戦艦から距離を取る。


 しかし、この敵が追いかけているのは真希艦長の載る警備船クリュであり、既に眼中にないのか蒼鷹には攻撃も追撃もない。


 半ば拍子抜けしたような手応えに「このまま逃げてもいいのか?」と戸惑うパイロットの菅原隊員を彼女は通信で急かす。


「クリュと私で時間を稼いでいる間に離脱してくださいね。お二人が安全な場所に行くまでは追わせませんから安心してください。」


「けど……クリュは……真希さんはどうするんですか……?」


「瞬……行くぞ、どっちにしても今の俺達じゃ、どうしようもない。」


「護さんたちに、よろしくお伝えください。」


「それじゃ真希さんは!?」


「こちらのことは考えないで、今あなたがしなければならないことを優先してください。そのプロテクトが届けば輝一さんが閃光型にも対策をしてくれます。」


「……ごめん、真希さん。」


「和也さんも、私はAIですから気になさる必要はありません。真希は幸せだったと皆さんにはお伝えください。」


「そんな……。」


「瞬くん……そうですね、港に余裕が出来たらで構いません、いつかクリュの残骸を回収してあげてください。そのためにも今にも増して立派なパイロットに成ってくださいね。約束ですよ?」


 一方で短い距離を一気に縮めてくる高速の巨体は、クリュを停止させるべく対空機銃など比較的威力の低い武器で攻撃し続ける。


 だが、経年劣化による部品の消耗は激しいようで狙いは甘い。


 自分の体のようにクリュを操る真希艦長はスルスルと見た目の激しい掃射を躱していく。


 その間に蒼鷹は離脱に成功し、そのまま合流ポイントまでひた走った。


「……泣くな、瞬!」


「……和也だって……。」


――――


 蒼鷹を送り出した真希は最後まで時間稼ぎをするべくクリュを動かし続ける。


 敵もクリュが抱えている物が欲しいらしく思い切った攻撃ができないようだ。


 しかし、この船には内部で働ける自動整備用のロボットや作業用ドローンを搭載しているわけではなく、相手についても質量や速度から考えて避け続けることは不可能であり、遠くなく限界が来る。


 それでも無数の弾丸を避けながら時に敵の機銃を射線にいれ逆に唯一の武装であるチェーンガンタレットで破壊するなど善戦。


 その粘り強さに苛立ちが頂点に達した敵戦艦を操るガルブは、副砲を使い始めクリュの進路を遮り、そこからあろうことか比較にならないほど小さい相手に体当たりを行う。


 幸いシールドが間に合ったものの、大型の物体が船体を掠めたことでバランスを崩し、姿勢制御が追いつかずにクリュはその場で動きを止めてしまった。


 (反応が……音がしていた箇所は後部、ならば前部は必要ない)


 そう考えたガルブは副砲と機銃をクリュの前部に当て続けシールドを貫通。


 コックピット部分が破壊されクリュは完全に沈黙した。


 そして、一時も惜しいという感じに自身が抱える整備用ドローンを飛ばしクリュを解体し始めるのだった。


 無残に避けていく船体、次々と後部にあったエンジン周りなどが調べられるがガルブが欲したものは無かった。


「一杯食わされたか!? 確かに亜空間航行装置の反応があったはずだが!?」


 細かく調べるが見当たらない、ドローンに指示しガリガリと内部を削っていき怪しい部分も調べながら人間用の照明器具や座席を外して宙へ放り出しながら探し、果てはエンジンルームまでバラしていくが見つからない。


 ガルブは戦況の確認のため、または援軍の要請のためにどうしても本国へ移動し連絡を取るため、ゲート建設前に自身をこの戦場へ送った、亜空間航行装置が必要だった。


 しかし、これは真希により、囮を務めるためAIコアから反応を作り出したもので、クリュ内の音源などの使用により装置の存在を匂わせるよう偽装をしたモノだった。


 ガルブはそのことを知ったが、怒りをぶつける相手はもういないため、憤りを胸にしまって作業を進めた。


 せめて得られるものは全て回収しようと躍起になり、目の前の小さな廃船から必要だった材料をかき集めると、燃料を回収し消火した輸送船まで急ぎ撤収していくのだった。

 

――――


 閃光型駆逐艦


 クリュに対して結衣隊員から巡航戦艦の様子を見てもらえるように頼んでいたことを、護は敵から離れ妨害範囲から抜けたところで工作艦に連絡する。


 クリュを動かしたと結衣から途中で告白された護は頭を抱えながらも咎めることはせず、慌てているだろう工作艦への連絡を優先させた。


 もちろん、大型戦艦がまだ追いかけて来る可能性が無いわけではない。


 ここより合流ポイントまで移動し、蒼鷹を待つ間は電文に抑えておく必要があるため通信は出来ない状態だ。


 閃光型は合わせられたとみられる潜伏用の装備は使わずに、今は見つからないように敵から少しでも離れるべく高速で離脱し続ける。


 蒼鷹を無事収容し、そして艦の離脱が済めばあとはなんとかなる。


 閃光型に乗っている全員がそう思っていた。

 

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