第八十一話 蒼鷹の危機
山城歴157年 進入禁止宙域 蒼鷹
船体を激しく損傷しながらもう固定されているため動かない輸送船はその後も燃料に引火し続け、激しく炎上する。
回収を企図させるために右舷を残して蒼鷹は撤退を開始。
しかし、パイロットの二人は通信妨害が行われたために駆逐艦に離脱報告ができずに戸惑っていた。
「通信が……こっ、このまま離脱しても大丈夫かな?」
「いやーわかんねぇけど、迷ったら指示通りにするのが無難だろ。マニュアルや教本と一緒だ、それに下手なことをすると隊長たちの作戦が狂う。」
「そうだね……離脱するよ。」
ためらいがちに輸送船を離れて合流ポイントに向かう、しばらくは低速で移動、そこから意を決したのか徐々に速度を上げた。
このタイムロスで距離を稼いだ敵機は、蒼鷹の存在を確認し、後方から蒼鷹に追いつこうと接近し続ける。
人間が乗っていない自律制御の機体はミサイルのように有人では不可能な機動や加速で目標に迫っていた。
遂には輸送船付近の安定して動かないデブリを最短で進むため異常な動きで避けていくため、距離が更に縮まっていく。
妨害を行っている大型戦艦も高速で輸送船に向かっているためにこの艦からの妨害の範囲から抜けられないが、この時点でやっと蒼鷹は後方から迫る機影を捉える。
「後方から何か来る、たぶん敵……だよな?」
「大型戦艦だったら勝ち目がない……どうしよう?」
「いや速すぎるし機動もおかしいから戦闘機かドローンじゃないか?」
「実戦……。」
「やらなきゃ、やられるからな。逃げるようには言われてるが相手の方が速い、やるか?」
「どうしよう……。」
「メインパイロットはお前だぞ瞬!」
「……このままついて来られると合流ポイントを知られる可能性がある、それに状況から推測すれば、旧式でここまで高速なら偵察機程度の機体と思われる……交戦する場合、戦闘が終わるまでに、戦艦が消火や回収して、またはそれをせずに、こちらへ来る可能性は低い。」
「おっ、おう!? そうだな!?」
「……よし撃墜する。」
「よし、その意気だ。松浦さんじゃないが本星の軍人だってこんな機会はないんだ、やるぞ瞬。」
武器の射程から考えて、過度な速度での戦闘は、熟練のパイロットやAIであっても戦闘速度まで落とさなければ攻撃は不可能だ。
そのままの移動速度で攻撃した場合、一撃離脱にしても安定した射撃は難しく、タイミングも合わせることができずに一瞬で追い越してしまう、更に言えばその後の再攻撃まで合わせるのに数時間や最悪一日掛かってしまう。
そのため攻撃のために戦闘速度まで落としながら旋回、敵と相対するため正面に見据えるよう機体を移動させる。
敵機もそれに気がついたのか徐々に速度を落としながらも、戦闘を予想し慎重に交戦距離に侵入する。
「レーザー砲で一気に決める。」
「了解だ。」
しかし、自律起動している偵察機である敵機は戦闘をする気などさらさらなかったようだ。
大型戦艦に信号を送り通信妨害を止めさせ、この距離まで近づく、そう大容量の送信が可能な距離まで。
そうとは気づかずに蒼鷹は敵機に近づき攻撃を行おうとするがその前に敵機からの通信を確認、慌てるが既に遅かった。
施されたAIからの侵入対策システムも役に立たず、総当たりでパスワードを探すように大容量の通信がシステムを次々と解析、防壁を突破していく。
小型のドローンによる通信量では不足だったという前回の反省を踏まえ、大型戦艦は偵察機経由による大容量の通信を浴びせかける。
結果、軍用で対策が取られているはずのコアは瞬く間に乗っ取られ、蒼鷹は自由を失ってしまう。
「手動操作!」
「駄目だ、この感じだと脱出装置くらいしか動かん。」
「この機は軍の機密が……自爆……させる。」
「だから、動かねぇって言ってんだろ!」
「でもやらなきゃ、こいつが逆巻港を攻撃することにもなるじゃないか!」
「くっそ、燃料を弄って爆発させられないかやってみる。」
大慌てでどうするか言い争うように方針を決めるが、機能が停止しているのならともかくシステムが乗っ取られている状況では扉一つ開けるにも一苦労で、思うように作業が出来なかった。
敵機が見張る中、攻撃される可能性もあるため脱出装置も使えない。
半ば破壊と脱出をあきらめた二人は、敵の様子だけでも探ろうと別端末を用意、船外活動で使うような調査機器などを取り出し、敵や周辺を観測を続ける。
時折こちらをからかうように、蒼鷹のハッチが開け閉めされ、空気が抜かれたり、ガトリング砲が発射される。
二人は自身がパイロットを務めた機体が弄ばれる憤り、屈辱に苛まれ、そして自身の見通しの甘さを嘆き悲しんだ。
そんな心が折れそうな時間が長く続く。
「隊長たちは無事に航行してるかな……。」
「……こいつらの他には敵艦は見えないし、大丈夫だろ。戦艦か……本当にデカイな。」
遂に、消火を終えて追いかけてきた大型戦艦、BB-85が到来する。
すでに持っている機器でも大きさが知れるほどの距離に来ていた。
それに応えるように蒼鷹は警報を出す。
まだ残っている機能があるのだろうか?
「中にいるのは逆巻の軍人だな? こちらはリメルト共和国軍所属、BB-85、司令官代理のガルブだ。」
「こっ、こちらは逆巻市、御影警備隊所属の閃光型駆逐艦八番艦、艦載機蒼鷹三号。わっ、私はパイロットの菅原だ!」
「逆巻市? 通信で流れてくるが……よくわからんな、まあいい、捕虜については山城政府との取り決めがないが、無駄に害するつもりはない、速やかに機を明け渡せ。」
「「断る!」」
「撃沈しないと思っているのか? ドローンでお前らが死ぬまで揺らしてやってもいいんだぞ。」
「俺たちが死んでもこいつを自由にはさせんぞ!」
「ふん、エアーも抜いてあるからその内に死ぬか。まったく人間というのは……。」
「もう戦争は終わっているのに一体どういうつもりだ!?」
「またそれか、貴様らの軍人としての姿勢は見上げたものだがそのような嘘に騙されるような我らではない。逆巻もよほど苦境のようだな。」
「いや、どう考えたって時間が経ち過ぎてるだろ!?」
「時間など関係ない、閃光型がそして要塞逆巻があることが重要なのだ。我らの使命はあれを破壊することなのだ。」
「話が通じない……壊れているのか?」
言い終わるとそれ以上は語らず、BB-85は艦載機を回収、蒼鷹を操り共に輸送船への進路を取る。
私事ではありますが、明日よりしばらくは入社などで忙しくなり
頻繁に更新が滞ることもあるかと思いますので、お知らせをさせて頂きます。
ご迷惑をおかけ致しますが、よろしくお願い致します。




