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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第八十話 陽動作戦

 山城歴157年 進入禁止宙域 蒼鷹


 隊長の指示を受けた艦載機、蒼鷹は潜伏状態を解除し、長い待機状態から開放され移動を開始。


 そして目標である輸送船の近くまで移動し、合図待った。


「予想される時間までに機器のチェックをしないと。」


「了解だ、こっちでやるから警戒を頼むぜ。」


「和也、射撃の方は頼む。」


「えっ、いいのか? 撃ちたいだろ?」


「操縦の方を任せてもらってるからね、僕はいつか訓練中にでも試射させてもらうよ。」


「お前、まだビビってんじゃないだろうな? いや、わかった有り難く撃たせてもらう。」


 そして、予定ポイントを通過した、閃光型から合図が送られた、受信した蒼鷹は、すぐさま攻撃位置まで移動、ガトリング砲による攻撃を開始する。


この船については新造でシステムに侵入されている影響もあり、データの引き出しがあまりできなかったため、ある程度の事しかわからないが軍艦などと違い修理、整備が簡潔になるように外からでも燃料タンクやブリッジの場所、エンジンに至るまで判別が可能だ。


 速度、微速のまま蒼鷹は角度を変え、目標となる燃料タンクの表記がしてある箇所に照準を合わせた。


「目標、左舷の燃料タンク、射撃開始。」


 地上で使われる戦闘機やヘリなどに搭載される大型の物と同じような大きさを持つ弾丸が、回転する砲身から撃ち出されていく。


 目的は弾丸を当てることで燃料に火を着けることだが、仮にも最新の輸送船はよほど安全に配慮して設計されたのか、着弾してから少しばかり外壁を削るのに時間が掛かり、弾丸が持つ熱量や火花では引火しなかった。


 弾丸が燃料まで届いているのかを確認するものの、到達はしているがシステムに対する侵食により事故を懸念した高崎団により、燃料用の安定剤が多く撒かれ着火し難くなっていたようだ。


「だめだ和也、レーザー砲を。」


「わかった、充電開始。」


 レーザー砲がチャージされ、本体中央底部にあった砲身からレーザーが照射される。


 もちろん結晶型には劣るものの今でも高い攻撃力と熱量を誇るレーザーが、残った外壁を貫きながら燃料に到達した瞬間し爆発炎上、左舷の三分の一が火花を撒き散らしながら吹き飛んだ。


――――


 戦闘艦 BB-85


 閃光型を追撃していたガルブは、輸送船への攻撃を知って驚愕する。


 あれには自分たちに必要な燃料や材料が載っているはずなのだ。


 慌てた彼は、切り札とも言うべき奥の手、本艦に乗せてあった自律型艦載機を用意。


 更に閃光型と攻撃している存在との連絡を遮断するべく工作艦にも搭載されていた妨害装置と同様の物を起動した。


 速度を一度落とし、閃光型と距離を取った後、輸送船の方角へ回頭し最大戦闘速度に達した段階で展開した左舷カタパルトより本来偵察用として乗せてあった、この艦載機を射出し先行させる。


 加速した、艦載機は一気に輸送船へ。


 そしてBB-85もまた、そのまま輸送船への進路を進む。


――――


 閃光型 ブリッジ


 隊長の護が立てた作戦通り、輸送船側に注意を向けることには成功した。


 ただ、予想外だった点が二つ。


 敵の艦載機が存在し異常な速度で蒼鷹に向かっている事。


 そして、通信が妨害されてしまった事だ。


「工作艦のマネごとまで出来るとはな。」


「戦場での妨害は珍しいことではありません、重要性を知っていれば取り込みたくなるのもわかりますね。」


「予想はしていたので、火を着けたら合流ポイントまで逃げるようには言ってありますが……。」


「蒼鷹なら大丈夫だろ、なんたって最新鋭機だ。」


「アイツの腕も確かだ、撃墜してでも逃げるだろう。」


「……。」


「ご心配するのは結構、しかしながら一から十まで見張って指示しないと安心できないのでは困ります。彼らの機転に期待し合流ポイントで待ちましょう御影隊長。」


「――――はい。」


 大型戦艦が輸送船の消火、回収に気を取られれば蒼鷹を追わないだろうという予想が艦載機によって崩れたことで意気消沈する護。


 現在の状況から潜伏することができず、相手に速度で上回られた閃光型は戦うという選択を除外すれば、このまま逃げるしかない。


 そんな中、通信妨害により安否を確認することさえ困難になってしまった蒼鷹。


 改造されたBB-85のあまりにも予想外な奇手の連続により、御影警備隊は目的を果たしながらも、危険な状態から脱出できずにいたのだった。


――――


 逆巻市 市長執務室


 逆巻港では御影警備隊からの定時連絡を受け取る係の者が短い電文から内容を読み取り、異例の事態だと判断し慌てていた。


 北山群からの経由で少しばかりタイムラグがあるが、現状起こっていることが大きすぎて判断がつかず、上司に相談した所、よく連絡を確認してくる市長に話を上げて判断を仰ぐことにしたようだ。


「ご苦労でした、この案件は私が預かります引き続き連絡があればこちらに回してください。」


「わっ、わかりました市長……。」


 職務としての対策マニュアルはあるが、戦闘艦の存在は先の工作艦を除けば、手の届く範囲の残骸を回収し終わった四十年前から確認されていないため記載があるわけもなく混乱するのも無理がなかった。


 そのことを知って、先んじて知っていた前回のように市長は係の者を咎めず、内容の確認のため何度も電文を読み返していた。


「また戦闘艦……しかも戦艦を含む艦隊なんて。」


 心配で胸がいっぱいになっている市長がいる執務室、そこにあった端末が光り、女性議員が画面に映し出される。


「お呼びでしょうか市長!?」


「速川議員、すぐに星彩型を動かしますので市内での手続きをお願いします。」


「軍艦の投入は断られたのでは?」


「これから私が交渉します。戦闘艦が見つかって、こちらに攻め寄せようとしてる可能性が高いのです、あちらも今度は断れないでしょう。」


「ええ!? 一体何が……わかりました。では許可が降り次第、動けるようにお願いしておきます、今は……星彩型の十五番艦が港にいますね。」


「言花さんなら護とも面識があるので好都合です。すぐに連絡してください、それでは。」


「ああ、待ってください市長! ――――」


 一分一秒が惜しいという感じで通信を終了し、多方面に対し交渉前の根回しを行う市長。


 彼女は戦場において最後まで残った艦に搭載されて戦い続けていたため、ゲート破壊後の掃討戦を合わせれば閃光型の中では随一の戦闘経験を持つ。


 そんな経験がこのような事態において警鐘を鳴らし続ける。


 そんな中でも、


 警備艦隊には戦闘経験豊かな姉もいる。


 護たちも優秀だ。


 少しでも安心できる情報を頼りに自身の気持ちを落ち着け無事を信じながら、自分の出来ることをAIらしからぬ気持ちで必死に続けていたのだった。


――――


 閃光型 十二番艦 十六番艦


 戦時中、ゲートの破壊後に残った敵艦隊は祖国のために投降を潔しとせず抵抗を続け、特攻作戦やゲリラ戦を展開。


 逆巻側も戦力の要であった閃光型を九隻も失った状態ではあるが光輝型と陽光型を中心に掃討戦へと移行、部品を盗られて動けなかった十二番艦と十六番艦も、生産ラインから出てきた部品が大慌てで取り付けられ、戦線に復帰する。


 逆巻方面の各宙域を転戦した結果、補給線が切れた敵艦隊は抵抗も虚しく壊滅。


 しかし、十六番艦は掃討戦で最大規模となったゲート跡での戦いで大破、炎上し、そのまま行方不明となっている。


 十二番艦も最後の賭けとばかりに潜伏しながら近づき、要塞逆巻に肉薄した部隊と交戦、ボロボロだった要塞への砲撃を阻止するため果敢に突撃し数隻を撃沈しながら自身も大破するが、駆けつけてきた他の駆逐艦の援護により敵艦隊を全て撃破、防衛に成功する。


 そして修理中に終戦を迎えることになった。 


 こうして戦争の幕が降りた後、桜井真奈市長の半身たる十二番艦は、唯一残った閃光型として山城星の博物館に展示されている。

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