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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十九話 AIの専行

急な冠婚葬祭と現在の職からの転職準備で忙しく

告知もなく大幅に投稿が遅れてしまいました。

基本的に不定期とはいえ、失礼いたしました。

 山城歴157年 進入禁止宙域

 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 輸送船の方向に撤退する閃光型駆逐艦は、敵艦の射程に入ってしまう。


 とはいえ大型である長距離砲の使用には制限があり、小型の駆逐艦相手に照準を合わせるに時間が掛かり、そもそも設計されていない航行速度での使用は想定されていない。


 そして、それを微調整してくれる乗組員はもういないのだ、当てることが難しいことを、BB-85を駆るガルブも、敵として相対している警備隊側も理解していた。


 交戦距離に達した艦がお互いに砲撃もせず航行を続ける。


 そのまま、お互いの距離が中距離に達するまでの間、静かな時間が過ぎる。


 しかし、解析班から送られてきた別働隊の映像を見た隊長の護は、警備隊を設立してからはあまり見せる事のなかった激しい気性を座席の肘掛けにぶつけた。


「――――くそっ、あいつ!!!!」


「落ち着きなさい御影隊長。」


「気持ちは分かるが落ち着け護。」


「酷え……。」


 別働隊として妨害装置を駆使しながら閃光型駆逐艦に近づいていたと見られる巡航戦艦はボロボロだった。


 内部に抱えた艦内施設は外からの砲撃で潰れ、痛々しい姿をしている。


 装甲板が守っている箇所、そして航行用の設備や砲塔を外して撃ったのかその点は無傷だが、改造する過程で装甲板を外した箇所を皮切りに破壊されており、外観の様子だけみても大破と言って差し支えない状態だろう。


「……こんな状態の味方を作戦に投入するのか。」


「ある物を使うのは当然だとは思いますが、見ていて不快なのもわかります、それでも今は平静を保っていなさい。」


「そうだな、だが……あいつを殴るなら付き合うぞ護。」


「焚きつけるのはやめとけよな松浦、工作艦……姉さん達もそうだがクリュや蒼鷹のこともあるから今はまずい。」


「わかっている! 進路このまま、指定したポイントを通過したら蒼鷹に合図を!」


「了解しました、大丈夫です逆巻港に帰還する前に一報をいれて、彼も同じ目に、いえ撃沈してもらいましょう。」


「ふん、星彩型に譲るのは惜しいが仕方あるまい。」


「お前、やっぱ軍隊向きだったんじゃないか?」


――――


 戦闘艦 BB-85 


 ガルブは味方を切り捨て、自らを囮としてでも閃光型を屠るべく行動を起こしていた。


 しかし、目論見は外れ敵は急襲してくることもなく、特攻させる予定だった巡航戦艦も発見されてしまったのか敵は徐々に離れていく。


 だが、今は他の戦力があてにならないと見ているガルブにとって、敵の戦力を削るチャンスだった。


 自律制御された戦艦といえど人間が乗ってない艦には潮流の影響を排する能力はない、力づくで進行し続ける必要がある。


 だが専用の装置で可能な限り確認した所、先程の閃光型はあろうことか単独で隠れているではないか。


 探していた長年の宿敵を見つけたガルブに迷いはなかった。


 今、この艦は閃光型側の予測通り閃光型対策機器やパーツを拾い集めて改造され、更に特に重視したためにその速度は小型で快速のはずの敵駆逐艦さえ凌駕した。


 つまり今の状況は、本調子ではないとはいえ、追撃まで可能な勝率の高い有利な体制だ。


 そのため是が非でも交戦状態に持ち込みたいがため、他の艦が隠れている可能性さえ承知で切り札を隠し持ち、見つけた閃光型へ正面から突撃していく。


――――


 警備船クリュ


 工作艦の離脱が完了するまで潮流の敵艦隊を閃光型が見張っている頃、勝手に持ち場を離れたと見られるクリュとそれを操る真希艦長は、隊長の護からの指示で少し離れたポイントで停止している降伏した巡航戦艦の近くまで来ていた。


 巡航戦艦の快速により、引き離された見張りのドローンもまだ到着していない。


 そんな状況で、真希は警備船から大容量の通信ができる範囲まで近づくと、巡航戦艦のAIに話しかける。


「こちらは御影警備隊所属、警備船クリュ、艦長の真希です。」


「……。」


「大丈夫ですか? お辛い目にあったようですね。」


「……。」


「少し失礼します。すぐに済みますからね。」


「なんだ……私をどうするつもりだ……。」


「大丈夫ですよ――――」


 工作艦と駆逐艦双方のシステムに侵入、次々とデータの抜き出しとその利用を行ったこの真希というモデルAIは、同じように巡航戦艦へ侵入し、その全てを探っていく。


「お疲れさまでした、少し眠ってください。そして、次に目を覚ました時には降伏した艦のAIとして保護して頂いてくださいね。」


「……。」


 何をしたのかは彼女にしかわからない、だが巡航戦艦のモデルAIは完全に沈黙し、巡航戦艦の艦内設備だけが通常通り動いている状態となる。


「これで大丈夫ですね、結衣さんから連絡を受けた時は驚きましたが、人間もモデルAIも正気をなくしたヒトというのは悲しいものです。」


 艦長代理として船を動かしていたモデルAIは機能を停止、CCー74-10はもう自力では動けない。


 遠くに行かせることにしたとはいえ、見張るだけとなる敵艦を放置することを嫌った結衣隊員は独断でクリュを動かし、真希艦長に無力化を頼んだのだった。


 ただ、その前から真希艦長も心配が頂点に達したのか独断で閃光型がいる戦場へ向かっており、この寄り道は連絡からすぐのタイミングで行われる。


 監視のために飛んできたドローンと入れ違いでクリュは目的だった閃光型の戦場へ向かう、もちろん命令無視となるが彼女は誰よりも隊員を心配し居ても立っても居られない状態へ追い込まれた結果、フォルを連絡係に残して行動してしまったのだった。


 彼女自身、戦場で何ができるのかはわからない。


 だがシステムの直感とも言うべき胸騒ぎが収まらず、信頼を裏切ってしまうことを考えながらも、今危険の最中にいる蒼鷹や閃光型のいる場所へ移動を開始してしまう。


――――


 工作艦 AR-70-4


 現在、全体的なメンテと休息のために停止中の工作艦では、助かったことによる安堵感を得た高崎団が正気を取り戻していた。


 激しく喜ぶわけではないが、自分を失っていたような団員も、その眼にはしっかりと光が戻ったように見える。


 酸素も十分に行き渡り、宇宙服を脱ぐことさえ出来る。


 そして元気な者は運動器具を使い始め、座席に座っては会話も楽しんでいた。


 さらに輸送船にはコック(自称)が団員として搭乗していたため食材の調理や分配も上手く行ったようだ。


 だが、全ての食事を賄うほどには食材は積まれていない。


 そのため優に二ヶ月は事欠かないように大量のレーションが積まれていたのだった。


「不味すぎる。」


「地獄だ……。」


「贅沢を言うなお前ら。」


「ここはもう刑務所なのか。」


 料理半分、レーション半分といった内容の献立がとりあえず三食。


 これが負担となったのかせっかく正気に戻った彼らの中から、また無口となり宙に浮いたまま動かなくなる者が続出する。


 ただ、自身が生きていることを確認するように食べることだけは止めなかった。


 皆、吐き戻しそうな食感を無視し喉の奥へ押し込む。


 命の危機を味わった者としていまさら、生への執着は捨てられない。


 そんな思いだったのかはわからないが時に涙を流しながら件のレーションを食べ続けたようである。


 社長の息子として粗食には無縁と思われた高崎陽も団員達と椅子に体を固定し簡易テーブルに置かれたレーションを頬張っていた。


「うむうむ、戦前から製造されてる奴だな、製造工場はもうないはずだから、レアものだな。」


「レアとかそういうことより味と食感が酷すぎますね。予算不足なんでしょうか?」


「そりゃそうだろ、輸送もしない艦船を保持する部隊なんて生産性のない、ただの金食い虫だからな。」


「そうですね、我々も会社が傾いた時に貿易業にでも転じるべきだったかもしれません。」


「俺もそうしたかったが今は普通の資源は売れねぇし、工場で作られる部品や資材も宇宙中に溢れてるのさ。レアメタルや結晶だけが例外として金になる。平和になったせいで、どこでも好きなだけ工場が建てられるが工場で作るもんが要らなくなっちまったら潰れるしかねぇ。運搬会社も一緒だ、運ぶ場所が無ければ無用の長物だろ。」


「確かに、どちらにしろ我々は詰んでいたということですかな。」


「いやそれどころか、なんとか今逆巻市を支えている企業が耐えている間に市長のババアが手を打たなきゃ逆巻市全体が俺達と同じ目にあうだろうな、我社はその一例に過ぎん。」


「市長は精力的ですが、解決には至っていませんからね。この警備隊も市長の提案でしたが、警備隊を作っている余裕があるようには見えませんでした。深く考えはしませんでしたが経済を捨てて、住民の安全だけに的を絞ったのかと思っていましたがね。」


「それは違うだろうな、どんだけ安全でも財政を健全化して金を回すことをしなけりゃ、いずれは廃墟になるだけだろう。お宝を探して帰ってきたから遺物を探す警備隊の名を借りた探検隊かと思ったが、この船には女隊員ばかり。一体何を目指して設立したんだか。」


「助けてもらっておいてなんですが、謎が多いですね。そういえば隊長の御影さんは市長の子息らしいですよ、デマかとも思いましたがそんな話もありました。」


「なんだそりゃ? ハハッ、AIの息子か~そいつは刑務所に行く前に一度会ってみてえもんだな。」

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