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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十八話 消えた船

 山城歴157年 進入禁止宙域 

 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 潜伏していた閃光型駆逐艦は敵艦に発見されていた。


 自らを囮として注意を逸らすと同時に別働隊を回り込ませる作戦に出たと思われる敵大型戦艦は、頃合いを見てこの本艦をも閃光型に向ける。


 この艦はリアクター施設という大型の荷物を抱え込んでいるのだがそれを重荷ともせず、そこから発生するエネルギーを推力に変え、今度は閃光型を上回る速度で迫る。


 一方、閃光型の方では敵艦の速度を未知数とはしていたものの、この相手の最高速度までは今まで予想することが出来ていなかった。


 更に相手が昔からの戦闘艦とはいえ、五十三年以上前に積もった執念により、本艦の研究が成されており、それが発見に繋がる事になるなど、今になって尾を引くことになるとは夢にも思ってもいなかったのだった。


 その結果、目論見が崩れ、隠れることも逃げ続けることも困難となる圧倒的不利な状況に陥る。


 不意を突かれた格好となった警備隊は、すぐさま作戦を立案して行動しなければならなくなっていた。


 敵との宇宙での戦いにおいて、半ば交戦距離に達してしまった閃光型八番艦では、これまでのように綿密な作戦ではなく即興の対応が迫られている。


「ここは戦艦と正面から真っ向勝負だろう!」


「リアクターを狙えばイチコロじゃね?」


「……。」


「まだ別働隊が本命の可能性もあるから駄目だ。それに閃光型と知って向かって来ているんだ、戦艦自体に閃光型用の対策をしている可能性もある。」


「確かにあのガタイなら対レーザー用の装甲板でもなんでも積み放題だろうな。シールドの強度も他の艦とは比較になるまい。」


「砲はパーツが劣化していて命中率が低くなっていても接近すれば有効弾も狙えます。それに加えて戦艦は、基本的な火力が高く、こちらのシールドもどこまで耐えられるのかはわかりません。それでも勝つ自信はありますが、正面からの戦闘です、そこで損傷したとするなら別働隊と戦う事が困難となるでしょう。」


「ひとまず逃げる、幸い別働隊と思われる方はそこまで速くない。教官、すぐに輸送船の方角に進路をとってください。」


「戦艦の方には追いつかれるんじゃないのか護?」


「蒼鷹と合流するのか、それなら勝率は上がるな。」


「途中から敵の射程には入るかもしれないが距離は多少あるからな、先に輸送船の近くまで着ければいい。蒼鷹には輸送船の間近くで待機してもらう。」


「どういうことだ?」


「あいつらの欲しい物に火を着けてやろう。輝一、別働隊の正体がわかったら知らせてくれ。」


「了解。」


 作戦を決めなければならないが今は隊長である護の号令一下、輸送船に向かって最速で移動する。


 敵戦艦との距離が少しばかり空いており速度の差もそこまで開いていないことが幸いし、ギリギリだが閃光型の方が先に到着出来そうだ。


 そして護は、蒼鷹に正式な命令とメッセージを送った。


――――


 工作艦 警備船クリュ 合流ポイント


 後方から敵が迫っているという緊張感と、そして護たちが交戦に入ったという連絡を受け取った事による心配で落ち着かなかった戸賀艦長と相葉副長は目的の場所に到着したことで、とりあえずはほっと胸を撫で下ろす。


 このポイントまで来れば少なくとも輸送船が敵に接収されても、工作艦が見つかることはないだろう。


 しかし、到達して周囲を探ってみるがクリュの姿がない。


 通信自体は封鎖しており今まで連絡を取り合ってはいなかったが、それでも専用の弱電波を利用した探知され難い電文で状況を知らせてはいる。


 その受取先であるクリュを探すが真希艦長が載る警備船はどこかへ消えてしまって見つからない。


 途方に暮れた戸賀艦長は、その人員の少なさから一度止まって人数を割いて整備を行う必要性や、休息時間も一度全体的に調整するため、そうこうしながらこの場でしばらく待つことにする。


「もう! 自律制御のテスト中に勝手して! ライセンスを取り消されたらどうすんのよ真希さん!?」


「どこに行ったのでしょうか? もしかして駆逐艦の援護に行ったとか……。」


「……えーっと、こちらと同じ内容が送られてきていたとするなら……敵艦隊の発見、奇襲失敗と、降伏した艦艇の場所と、それと交戦を開始する内容が最新ね。」


「すると降伏した艦を見に行ったのでは……?」


「真希さんが、お客さんを放って?」


「そうですよね。」


「護たちが別の命令を出して移動させたのなら、こちらにも連絡があるはずだわ、市からの命令でもない限りは完全に独断で動いてるわね。」


 クリュの行方を二人で相談していたが答えが出るわけもなく、このことを閃光型にも伝えたいが、まだ交戦の可能性もある艦に連絡を入れるのは躊躇われた。


 まずは自艦の状態を万全とし、続報を待つ。


 そしてクリュから、そして駆逐艦からの連絡が無かった場合、作成したマニュアルに従い単独で撤退することになる。


 二人が方針を艦内の隊員たちに話して準備していると、突然ブリッジの左面にある舷窓に来客が来る。


「おや? なんと……小型とはいえ、感知されずこの艦に近づくとは、やりますねフォル。」


「どうしたのですかバル? えっ、フォル!?」


 警備船クリュに搭載された自立型ドローン、フォル。


 所有者は相葉副長だが艦内を自由気ままに動くため工作艦内では危険であることを理由に、クリュの中にそのまま置かれていたドローンである。


「あんた一体どうしたのよ。バル、回収してあげて頂戴。」


「了解いたしました。ブリッジに近い第三ハッチを開放し、そちらへ誘導します。」


――――


 すぐさまハッチからフォルを両手で受け入れて、中に入れる中村隊員はフォルが持っていた箱を見つける。


「前回の任務から会ってないから一ヶ月ぶりくらいだねーフォル君、なんすかこれは?」


 フォルはことさら重要であるとアピールするようにコードで繋がってはいるが、離して浮かした荷物の周りを回る。


「なんか拾ってきた感じかな? なんで繋がってるんだろ?」


 中身が気になった彼女は、艦長の了解、そしてフォルの持ち主である副長の許可も得ずに浮いている四角い鉄の箱を開けた。


 するとそこには、フォルを介し通信されるデータを受信、保存する形にしてある機器とデータが入っていると思われるチップが入っていた。


 これは妨害機器の効果によって連絡が絶たれた場合を想定し、警備隊内で試験的に用意された物で、物理的にデータをやり取りするための機器である。


 今回、無人で航行するクリュにおいて、内容を伝える真希艦長とそれを輸送するフォルに合わせてあり、整備班の進藤隊員により即席で作られている代物なので、中村隊員などは知らないものだった。


――――


 さっそくブリッジに届けられたデータチップの方は急いでバルから解析される、そこには真希からのメッセージが入っていた。


 色んなことが書いてあるが要約すると、心配だから一度様子を見に行く事、途中で追加されたと見られる内容には降伏した敵艦の状態を確認、その後に閃光型の無事と撤退を確認して自身も撤退するという内容だった。


 そしてクリュとの合流を待たずに工作艦には撤退して貰えるようにも書かれている。


「つまり……両方?」


「……両方ですね。」


 呆然とするブリッジの二人、その様子を見ながらじれったくしている中村隊員は二人を急かす。


「早くこっちにも内容を教えてよ。」


「艦長の判断が先ですので少しお待ち下さい中村隊員。フォル、他に連絡はありませんか? ……中村隊員、こちらの端末に来てください。」


「うっ、うん、わかったよバル。」


 ちょうど居合わせている中村隊員からバルの指示で、フォルは近くの端末から伸びたコードに繋がれる。

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