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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十七話 一転する状況

 山城歴157年 進入禁止宙域 

 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 閃光型が潮流の中で仲違いを起こしている敵艦隊から離れ、再度潜伏してから、そろそろ四時間が経過する。


 敵艦隊はまだ潮流の中から姿を現さずにいた。


 そろそろ警備船クリュが待つポイントに工作艦も到達するため、こちらでもアクションを起こす必要が出てくる。


 撤退するのが正しいと思われるが、敵は同士討ちも辞さない危険な艦隊である、速力も異常な改造によってどこまで早くなるのか検討もつかない。


 叩けるものなら叩いて後顧の憂いを断ちたい所だが、敵艦隊が速度差から置いてきたと思われる後続の敵艦艇も合流する可能性があり、ここからは慎重に行動する必要があった。


 少し短くはあるが二時間交代での休息を終え、隊員達は任務に戻りつつある。


 現在、ブリッジでは艦長である松浦と管理AIである結衣隊員が隊長の護と高野副長が戻る前に方針について相談していた。


「元々救助が終わったら撤退する方針だったのですから、迷う必要はないでしょう?」


「せっかくの戦闘の機会を星彩型に譲るのは惜しいな。」


「……どこまで本気で言っているのか、わかりかねます松浦艦長。」


「悪かった、結衣隊員は叩くことに賛成すると思っていたが慎重だな。」


「人員が揃っていて、二隻は支援してくれる艦があるなら攻撃には賛成ですよ。必要だった奇襲攻撃ならいざしらず、後詰もなく戦うのは本来避けるべきです。理由はお分かりですか?」


「艦隊として完成する可能性のある相手に、単艦で戦っても戦果はたかが知れてる、被害を拡大させる僚艦あってこそ奇襲して穴の開ける甲斐があるというものだ。今はそれもなく負けて沈んでも救助も来ない危険な状態だからな、大丈夫だわかっているぞ。」


「分かっているのならいいのです、ですが艦長の不穏当な発言は士気に関わります、軍隊ではないとはいえもう少し配慮してください。」


「難儀な役職だな、退屈しそうだ。」


「自分を律して目的を果たしなさい、艦を預かる者の努めです。」


 やれやれと言った感じで監視を続ける艦長に対して不満や不安を覚える結衣隊員だが、彼らが優秀なのは知っているのでこれ以上は咎めはしなかった。


 そこから更に数分が経過した時、潮流の中にいた艦が動き始める。


「動いたな、艦内放送で急かして全員を起こせ、結衣隊員。」


「了解しました。」


 全員が慌てて持ち場に戻る、短い時間であり宇宙服のままの睡眠でどのくらい疲れが取れたのかはわからないが、休まないよりはマシだ。


 座って目を凝らす仕事の解析班は脳が疲れているのか、少しぼーっとしているが、顔を洗顔、私物である気付け用のドリンクを一気飲みするなど各々が身を奮い立たせて何とか意識を覚醒させている。


 ブリッジに戻ってきた隊長と副長の両名もそんな状態だが、席について現状の把握に努めていた。


「休息時間が終わるか否かで動いたか。タイミングがいいのか悪いのか。」


「そうだな、なんにしても短く仮眠にしておいて正解だった。」


「単艦で輸送船に迫るか、こっちも一度発見されてるはずだよな結衣さん?」


「ええ高野副長、勧告までしましたから当然ですね。」


「そうだよなぁ。じゃあ、むしろ襲ってこいという態度で直線的に加速し始めたと?」


「こちらの存在を忘れてなければそうなります。」


「輸送船まで行っても工作艦はもう追えないだろうが、こちらが万が一見つかったら危険だな。」


「工作艦が追えないなら無理に叩く必要はない。発見される可能性を少しでも排しながら遠回りに撤退する。」


「了解した、蒼鷹にも連絡するぞ、多めに食料をもたせておいてよかったな。」


「了解、味を知っていたら乗れたもんじゃなかったがな。」


(こちらの考えの上をいく、次の手や奥の手があるとするなら……)


「解析班に連絡、潮流付近はもう少し監視してください。」


「こちら解析室の河原、えっ? まだ何か出てくると思うかい?」


「こちらがあの艦を襲った所を、時間差で詰めてくる作戦の可能性がありますね。ただこちらからは攻撃はしませんけど、別働隊がいるなら位置だけでも分かれば安心ですから。」


「なるほど。輝一くん……大丈夫かい?」


「……やっとくよ護……。」


「悪いな、輝一……解析班には無理をさせてると思ってるよ。」


「人数が足りてないから仕方ないさ、救助後は研究のための調査が出来ると思ったのに残念だなぁ。」


「草壁さんは警備隊員でもないのに巻き込んですいません、市には危険手当も出すように言っておきますので。」


「おっ、気を使ってもらってすまないね、うちの研究所は資金がないから助かるよ。」


――――


 少しつづ後退しながら、単艦で前進を続ける大型戦艦と潮流の様子を見ていた閃光型駆逐艦だが、調査を続けるうちにあることに気がつく。


 機器の誤作動程度でも頻発する程度の微弱な反応があり、それは潮流からこちらへゆっくりと向かってきているのであった。


 それは駆逐艦が後退するために移動を開始したことで、追いつこうとしたのか、速度を上げたために移動する物体として探知され発覚するに至る。


「こちらに向かってきているということはこちらの所在がバレた?」


「そう考えるのが普通だな、広い宇宙で闇雲に飛んだとして目標の方向に偶然当たるなど、確率が低すぎて考えられない。」


「探知用の電波から逆探された可能性もあるな。」


「可能性はあるが、潮流の影響を排してやっと出来るような精密さでやらないと、ここまで正確にはわからないはずだ。何しろ微速とはいえこの艦は移動しているんだぞ?」


「この艦は蒼鷹と違って旧式の潜伏機能ですからもしかすると……。」


「合わせられた?」


「……その可能性はあります。目の敵にされている自覚はありましたから戦時中に研究が進んで解析されていたのなら、閃光型駆逐艦用に合わせた探知機器があっても不思議ではないですね。申し訳ありません、昔の状況を知っているのにそこを想定出来なかったとは、これは私の落ち度です。思えばあの時、ゲートを破壊する作戦ではいつもより探知されるのが早かったような……。」


「まあ、ここに来るまでは誰も戦闘艦と戦闘になるとは思ってなかったしなぁ。」


「最新機器に出来なかった貧乏が悪いんです、気にしないでください結衣さん。」


「ともかく追ってくる機体を撃破するか? 全力で逃げるか?」


「あれが何かが分からないと動き難いぜ。」


「そうだな、大きさもわからないというのが気になる。解析班にはまた無理をさせてしまうが、敵艦と迫ってくる物体から距離を取りながら探ってもらおう。」


「! 敵艦が急速に進路を変えてこちらに向かってくる!」


「こちらが感づいたのに気がついたか!? 工作艦、並びに蒼鷹に交戦を連絡、市にも連絡するが、準備も出来ない状態での戦闘だ、万が一の場合は……。」


「わかってる、心配するなって全員覚悟はできていると思うぞ。」


 勝敗は見えず、戦死する可能性を前に、高野と松浦が頷いてみせた。


 護はここに至ってもまだ隊員達を心配していたが、それでも今はやるしかない。


 異常な速さで接近する大型戦艦との接敵まで一時間もない。


 正体不明の移動する物体にも対応するためにも迅速な行動が求められる。


 御影警備隊は有利な状況での目的達成を目前に、今から即興で立てざるを得ない作戦に自らの命を懸けることになった。

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