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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十四話 息巻く牙城

 山城歴157年 進入禁止宙域 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 先の星間戦争において、地球側の武力の象徴とされた艦種がある。


 その艦種は各戦場で司令塔を担い、艦隊戦力としても、その火力と装甲によりまともに戦えば敵駆逐艦隊主力を圧倒できるほどの実力をもっている、艦隊戦の要であった。


 更に言えば要塞を攻略し得る、一種の攻城兵器としての役割も持っており、地球側が勝つためにはなくてはならない切り札。


 それが戦艦という存在だった。


 通常は、そんな重要な戦力が突発的な戦闘や戦闘機による襲撃、戦闘用ドローンの波状攻撃、などで疲弊しないため、常に護衛艦が付き従い奇襲を警戒、搦手やアウトレンジからの攻撃から守られる。


 だが今回、敵艦隊の本隊と見られる三隻の戦艦は、こういったセオリーを無視し、警戒すらした様子もなく潮流の流れなどの障害を物ともせずに、性能以上の高速で一直線に輸送船へ向かっている。


 そしてそんな敵に対して御影警備隊の存在は見つかってさえおらず、認識されてさえいない。


 装甲が厚く討ち取り難い戦艦という艦種ながら、彼らを奇襲し破壊ないし損傷させ、食い止める必要がある閃光型駆逐艦からすれば、これは大きな好機である。


 既に配置についているブリッジでは最終調整のために、更に細かい段取りを決めながら興奮した様子で艦内の人間たちで声を掛け合っていた。


「高野、突入のタイミングだけはしくじるなよ? 映画みたいに五隻同時に黙らせてやるから見ていろ。」


「了解、よーし、ならあの映画みたい五隻をしっかりすり抜けてやるぜ。」


「……いや、どう見ても三隻しかいないだろ? まったく。こちらブリッジ解析室へ、河原さん、輝一、俺も操縦の補佐に回るから計画通りの移動が出来ているかを常に確認して知らせてくれ。先行している二隻を先に叩くが、遅れが出ると後方の大型戦艦が煩いからな。」


「こちら河原、了解! 隊長。こっちの処理能力や事前調査で相手より状況が把握しやすいはずだ、そこも活かしてくれ。それと草壁さんからだが、リアクターの反応が確認されたそうだ。」


「それであれだけの大型艦が巡航艦並の速度で移動しているのですね。ですが基本スペック以上の速度で動きながらの火器操作では、狙いは「更に」甘くなるでしょう。旧式の大型リアクター施設をそのまま搭載しているのなら、そこを攻撃するのも悪くありませんね。電力が過剰に供給出来る分、光学兵器の火力が異常に上がっている可能性もありますがその点には注意するように。」


「了解、近づく前にそちらも詳しく見てみるよ。」


 結衣隊員も久々の戦闘ではあるがとにかく自分たちの有利なポイントを常に探し、その経験から最高から最悪まで状況を予測する。


 だが、戦争から五十年以上が経過し、お互いの艦の状況は大きく変わっており、予想通りいくかはわからない。


 混沌とした状況ながらも、戦争期と同じように大型で格上の戦艦と、それを巧みな集団戦闘で屠ってきた駆逐艦が今、時代を越えて争うことになってしまった。


「時間です。」


「作戦を開始する。」


「了解、低速で前進する。」


「停止命令は直前で流すからな。」


「前回もやったが今回は奇襲だから尚更だな、やむを得まい。」


「でも、万が一降伏勧告に応じるつもりだったらと思うとなぁ。」


「AIに対しても有効な停戦信号を受けたのか、受けそこなったのかはわかりませんが、現状まで戦力を温存して輸送船を襲ったのですから撃沈対応が相応でしょう。お気に病む必要はありません。そんな建前のために一度止まるつもりだったのなら厳しく叱責する所です。」


「まあ軍隊ではありませんから、気持ちの問題として建前も大事なんですよ……これ以上、バレたら批判されるような事柄を増やしたくないし。」


「戦闘前に名乗りを上げるのもカッコいいし。」


「正面から叩き潰した方が楽しいしな。」


「あなた達は……帰ったら意識改革のためにもう一度講義をしますから覚悟しておきなさい。」


――――


 戦闘艦隊 BB-85 ガルブ


 ついに輸送船の居場所を捉えた。


 逃げ続けられたのは予想外たが、システムへ侵入されては、まだ動けまい。


 やはりこの機能は強力だ。


 リアクター施設や所属の違う艦艇を扱おうと回線を繋げてみたが次々と乗っ取ることが出来たことは不思議ではあった。


 だが、やはり司令官がお選びになったこの艦と、それに載せられた私は他の艦とは違う特別な存在だったのだな。


 通信用のドローンを中継してシステムへの侵食が可能とわかったことで奇策として使えると思ったが、これほど見事にハマるとは。


 こちらに場所を示してくるまで随分と掛かったが、これで拿捕した船を分解すれば足りなかった材料が手に入る。


 寝かせてある工作艦内の設備を使い部品を製造すれば、必ず元の戦闘力を取り戻せるはず。


 今度こそ我々は使命を果たし、故国へ凱旋するのだ。


「潮流に入ります、ご注意を……。」


「進路このままだ、一刻も早く拿捕する。」


 他の艦に搭載された「ただのモデルAI」どもは正気を無くしたようだ。


 司令官の不在を守るのもAIの仕事だろうに、情けない連中だ。


 逆らってきたアイツのように、壊れて暴走するよりはマシだが、こんな連中ではまともに逆巻を攻撃できようはずがない。


 解体しても材料にならないモノを焚き付けて引き連れてはみたが、あの包囲が抜けられるほど使えないとは。


 だが、恐らく我々とは別の場所で眠っていた他の艦は違うはずだ、必ず私と共に逆巻を攻撃してくれるだろう。


 材料と燃料を確保した暁には、彼らを覚醒させ旗艦としての役目を今度こそ……。


「奴らはそろそろ充電が切れる。燃料の無駄だ我々以外の艦に帰投命令を出すぞ。」


「我々はこのまま随伴するのですね……了解しました。」


「そうだ、やはり民間人だったようだが輸送船と接触したことで逆巻側に我々の存在が漏れ、閃光型が出てくるかもしれん、拿捕した後に一度周辺を警戒する。」


「それならば防空駆逐艦が……必要では?」


「我々に奇襲を掛けるほど戦力を向けてきたのであればこのまま迎え撃つまでよ! 有利と見てのこのこと出てきた要塞の戦力が削れるなら好都合だ!」


「……了解、指示に従います……司令官代理……。」


 ミサイルも砲弾も拾い続け余剰がある。


 敵の情報も残骸からのデータで得られた。


 同胞を次々と沈めた、宿敵たる閃光型は残り二隻。


 十二番艦と十六番艦の打倒は逆巻の破壊と並行して行わねばならない。


 あれを倒さずして目的の達成はないのだ。


 

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