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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十三話 疾走する一手

 山城歴157年 進入禁止宙域 戦闘艦隊


 遂に敵艦隊は、目当ての輸送船の位置を特定する。


 彼らはこの確実な情報を待ちながら、潜伏されやり過ごされてしまわないようになるべく広域をゆっくり念入りに索敵していたのだった。


 だが、場所が割れたことで、彼らは高速巡航艦を呼び戻す一方、本隊で一気に詰め寄り拿捕することを考えていた。


「仕掛けがやっと作動したか……時間が掛かった。」


「CC-74-6……。」

「CCー74-10先行します……。」


「隊列を乱すな、こちらもリアクターの最大出力を使って随行する、前回は初動で遅れを取ったが今度こそ拿捕するぞ。」


「了解……。」


 本隊に所属する巡航戦艦と呼ばれる元々から比較的高い機動性を誇る戦艦の二隻には、更に一部の装甲を外した上に宙域を浚い見つけだした部品を使って移動力を向上させる改造が施されていた。


 そのため現在出せる速度は巡航艦のそれに匹敵する。


 そして、ゲートの建設工事を助け、その後は艦隊の維持に使用された核融合炉。


 それを壊れたエンジンの代わりに詰め込んだ旗艦たる大型戦艦BB-85は、リアクターとそれに合わせた専用のスラスターによって異常な加速が可能となっていた。


 かなり無茶な改造ではある。


 だが、あるものを全て有効に活用し、逆巻を潰す。


 その一点において彼らには一切の妥協はなかった。


 他にも必要な整備もそこそこに彼らは艦隊の機動力を上げることに血道を上げていた。


 それはいつか通り掛かる船へを襲うため。


 自らに足りない燃料、そして材料を確保するために必要な改造だった。


 今その成果を持って、大きな信号を送ってきた輸送船へ一気に加速を始める。


――――


 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 敵艦隊と同時に輸送船からの信号を感知した駆逐艦のブリッジでは、現在地が知られてしまった輸送船から、まだ離れきれていない工作艦を守るためにどうすればいいのか、急ぎ検討されている。


「解析班より連絡、敵艦隊が加速!?」


「松浦だ、今確認した対策を検討する、三隻か……。」


「データより速いな、補足されたら逃げ切れないぞ。」


「危険だが奇襲を掛ける、その後で蒼鷹にも……まだ向かっていくようなら攻撃をさせる。」


「そのために一時護衛につけたのです、やらせましょう。それにこの艦でも三隻同時には無理です、一隻づつ削る必要があります。こちらが一時的にでも抑えられたら工作艦が戦うことになりますからね。」


「このまま一直線に向かうならこの位置から奇襲が可能だ、速度もまだこちらの方が少し速いので追いかけながら後方からでも攻撃できる。」


「工作艦も今頃大慌てで逃げてるだろな、クリュの改装も許可が下りてよかったぜ。」


「置いて逃げることにならなくてよかったよ、レーダーの阻害効果を最大限に使うため潮流に沿って奇襲する。相手が潮流に足を取られている間に横槍を入れるぞ。もちろん、こちらも潮流との距離を見誤らないようにな。」


(戦時中にも、潮流があった方が戦いやすかったかもしれませんね、複雑です)


「……砲撃手がいないから……松浦、撃ちたいだろ? 操縦は代わるから派手にやれ。」


「護? ……わかった喜んで撃たせてもらうぞ。」


「中距離用の火器は残しておけ、奇襲後の牽制で使う。戦艦相手じゃ結晶型レーザーじゃないと装甲を穿けないしな。」


「まったく、艦長が操艦を放り出すなど……高野副長、全力で行きます。しっかりついてきなさい。」


「はいよ、接敵予測ポイントを解析班と相談。分かる範囲で計算して目星をつけてもらう。それから各種装備の再点検としよう、井上さん。」


「わかったっす、見て回るからまだ動いたら困るっすよ。」


「進藤さん、合図したらエンジンをフル稼働します。備えてください。」


「了解した、遂に名高い閃光型エンジンの本気が見れるのだな、技術者冥利に尽きるというものだ。今の技術でチューンもしてあるから危険もない、手加減せずに存分にやれ。」


「了解! 潜伏状態を解いた後、逆巻港に交戦開始を連絡する、クリュと工作艦にもな。」


「みんな心配するかもな、まあ仕方ねぇか、勝てばいいだろ! ってなんか腹減ったな、飯いいか護。」


「あっ? ああ、そうだな、明石さんお願いします。」


「了解した、まだ余裕はあるかい? とにかく全員に届けるよ。」


――――


 工作艦 ブリッジ


 輸送船から信号があがると同時に予測され設定していたマニュアル通り、戸賀艦長はそのまま宙域の離脱を続行。


 クリュの待つ、設定されたポイントへ向かう。


 もちろん不安がないわけではないが相談相手のバルと話し、彼女も頭の整理をつけたいところだった。


「こちらからも確認できるほど大型の高速体が向かってきていますね艦種がわからないですが戦艦クラスが三隻程度かと、まだこちらに気がついていないでしょうが船員がいなければ、輸送船のデータを探り我々の存在を嗅ぎつけて周辺をそのまま探査するかもしれませんね。」


「だとしても逃げるしかないわ、護たちがなんとかしてくれると思うけど……。」


「蒼鷹も駆逐艦の撤退を援護する目的で潜伏させ続け、随行させなかったのは幸いでした、あの戦闘機の対艦戦闘能力はそれほど高くはありませんが、きっと戦力になるはずです。」


「戦艦三隻に追われてるのに随分と余裕ねバル。」


「……フフッ、速さはともかく閃光型に追い回された時の事を思えばそれほど脅威を感じませんよ、なにせ閃光型は後方を乱すのが得意で、なおかつ戦艦キラーでしたからね。」


「でもなければ不利な戦線を支えられてないわよね。ああ、もう! わからない所も大丈夫な所も多くて心配していいのかもわからなくなってきたわ。とにかく私は艦長として艦を守ればいいのよね。あなたの経験でいいから、追ってきた艦に対しての対策をもう少し一緒に考えて頂戴。」


「お任せください、と言っても中距離用のカノン砲台と機銃しかありませんので戦闘は無理ですね。追いつかれる前に潜伏することになるでしょう。」


「貫通しないかーそうよね、それに救助者を抱えて戦闘なんてしたくないわ。倒すのも無理、足止めも無理、あら? 心配するどころか、こっちの方が危ないわね。」


「艦種の問題でもありますので対抗するのは不可能だと思って頂いて結構です。こちらは救助のために装備もなく工作を行うこともできません、機雷でも敷設できればよかったのですが……妨害電波は出せますのでジャミングしますか?」


「後でね、追ってくるようなら潜伏、無力に追われている側には決められることも多くないのね、いい経験だわ。場所の選定は任せていいかしら?」


「お任せください。」


「さてと、ミナ、あいつらはおとなしくしてる?」


「はい、特に大声があがっていたり暴れたりというようなこともないようです、おとなしくされているようですよ。」


「そう、広瀬は診察したいだろうけどまだ先になりそうね。ヒトミ、聞こえる?」


「は~い、艦長どうぞ。」


「これから全力で逃げるからよろしくね、中村を向かわせるから万事、備えて頂戴。」


「わっかりました。」


「秋山~。」


「なんですか教官。」


「艦長よ! おとなしくしてなさいね。」


「えーまたそれですか!?」


「カナ、ブリッジに食事を頼むわ。」


「はい……ダイエットメニューでよろしいですか?」


「もうあなたの好きにしていいから何でも持ってきなさい。お腹も早く減るし、気持ちも落ち着かないし、任務中に我慢しても碌な事がないわ、もう! あなたの言う通りね。」


「! えっと……わかりました艦長。」



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