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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第七十二話 救助活動

 山城歴157年 輸送船→工作艦 格納庫 救助者用区画


 航行不能となりながらもなんとか巨大な岩石に横たわるように隠された輸送船。


 その乗組員は救助を、今か今かと待ち望んでいた。


 このまま救助が来なければ敵が来て撃沈、もしくは隠れ続けることで生命維持が困難となり窒息死の危険があり高崎団の団員達は戦々恐々として休まらぬ日々を過ごしていたのだ。


 そんな状態を半月以上過ごした彼らは、先行してきた戦闘機と直接交信した高崎団の団長の「予想より早く救助が来る」という報告に歓声を挙げて喜び、宇宙服を着て船の内外で待機していた。


 作戦開始から二時間で工作艦は目の前に迫り、工作艦の上辺にある格納庫扉が左右にゆっくりと開くと、二十二名が一斉に移動を開始する。


 彼らの中には士気は低く、錯乱する一歩手前の者もいた。


 ただ、団員と言うだけあって少しは結束力があったのか、船長兼団長の指示の元、班長格の三名と副船長が自然と周りのサポートをしながら声を掛け合ってロープで繋がり、バイクに乗った先頭の船長に追従していく。


 船同士を近づけ過ぎるのも事故の元となる可能性があったため、少しばかり離れてはいるが大した距離ではない。


 宇宙服の性能でも、しっかりと止まれるようにゆっくりめの移動だが、移動ユニットで引っ張られた彼らの速さは普通と比べれば段違いの速さだ。


 開けられた工作艦の扉に達する前に高崎の方から工作艦ブリッジに連絡を入れた。


「こちら輸送船の船長高崎だ、乗艦する許可を願う。」


「艦長の戸賀です、乗艦を許可します、急いでください。」


「感謝する。」

(これはまた若そうな艦長だな)


 格納庫の底に組み立てられた区画、先んじて送られていた計画書に記されたこの場所を目指し、大きく空いた扉の穴から飛び降りるように底へ。


 そして、突貫工事で作られた区画の上で待っていた警備隊員が、二箇所に設置されたエアロックから一人づつ中へ入るように指示する。


「一人づつこっちへ、早く入らないと移動できないよ。」


「こちらへ、順番に並んでください。」


 中村、亜月、両隊員が声を掛けるが動きが悪い。


 到着はしたが固まって動こうとしない五名、着いたとたんに脱力して浮いている六名、途中でロープから手を離してしまったのか、ゆっくりと降りてくる六名。


 そんな彼らを誘導しようとする各班長の三名と、団長と副団長が怒鳴りつける。


「お前ら! さっさと指示通りにしないか!?」


「全員いるか!? 早く降りてこい!」


 その時、秋山隊員が宇宙服を推進機能を使い飛び上がり、浮いている救助者を一度追い越す。


「秋山ちゃ、じゃなかった、秋山隊員何やってるの!?」


 返事をする間もなく彼女は勢いをつけて体重差があると思われるゆっくりと降りている団員たちを一人一人、握った両手で次々と無言で叩き落としていく。


「……。」


 管制室から現場を見守っていた広瀬隊員はその、あまりのやり方に唖然としてスクリーンの前に立ち尽くしていた。


 ボーっとしていたのか落とされた者達は衝撃を受けて驚き、勢いよく着地地点へ激突。


 少々バウンドしたが船長と副船長に抑えられ到着する。


 遅れて秋山隊員が着地したところで格納庫の扉が閉まった。


「ふう。」


「管制室より秋山へ、無茶をするな……怪我人が出るぞ。」


「焦れったくって。」


(いやー豪快な姉ちゃんだな、というかさっきから女ばっかりだぞ、どうなってんだ?)

(さあ? 女性が多いとは聞いていましたが。)


「えっと……さあ入ってください、あのように押し込まれるのをご希望ならそうしますが?」 


「ああ、お前らビビってねぇで体を動かしやがれ。今度は俺が飛ばすぞ!」


 少しだけ正気を取り戻したのか彼らはゆっくりと動き出し、エアロックの前に並ぶ。


「さあ中に入って、エアロックで洗浄までするからね。普通の船と一緒だよ? それから中に入ったら黄色いテープに従って移動してね。」


「……助かったんだな……。」


「はよ、行かんかい!」


 中村隊員は最初、にこやかに対応しようとしたが、エアロックに入ろうとしないので面倒になったのか、後ろから足で押し込む。


「中村!? 他の者が怯えるから後ろから足で押すな!」


 一方のエアロックに立っていた亜月隊員は団員に囲まれている。


「なんですか? 早くこちらへ入ってください。」


「なあ、俺たち助かるのか? 大丈夫なのか?」


「こんな狭そうな場所へ……。」


「中は広めには作られてはいます、今はとにかく中へ。」


「だけど! あっ!?」


 前のめりに問いかける若い団員は、彼女にそれ以上近づくつもりはなかったがここは無重力であり、足が地につかずにそのまま前に進み続け彼女に当たりそうになった瞬間、足を固定してある彼女から手で肩を押し当てられ地面に押さえつけられる。


「言うことを聞かないなら仕方ありません、一人づつ押し込みますので、そこにいてください……。」


 まだ若い女性とはいえヘルメット越しに本気の顔を見たおじさん達は怯み、若い団員も自分が何をされたのかわからず呆けている。


 そこへ騒いでいる団員を叱りつけて回っている副船長も駆けつけてきた。


「こっちもか、お前達黙って入れ! 乗組員が失礼致しました、副船長としてお詫び申し上げます。」


「……ご説明している時間はありませんが、今はすぐに中に入って座席へ。そのあとで艦長からお話もあると思います。」


「すぐに。」


「こいつら俺の話をな~んも聞いてなかったみたいだな。お前もすぐに入れ、船長は最後だ。」


「はい。」


「船長の高崎陽ですね? 今は救助者として扱いますが――――」


「わかってるよ、艦長さんもそのつもりだろう。それより御影隊長ってのはどこだ?」


「私達とあなた達のために殿をして頂いています。」


「閃光型でか? 頼もしいねぇ。」


「……悪びれもしないんですね。」


「耳が痛いな。分のいい勝負だと思ったんだがあんなもんが大挙して出てくるなんて計算外もいいトコだ。あんた達を巻き込んで悪かったよ、刑務所まではおとなしくするからそんな目で見ないでくれや。」


 睨みつける亜月隊員にもあまり動じた様子もなく高崎陽は飄々と諦めた様子で列に並ぶ。


 なんとか全員をエアロック内に押し込めた隊員達は、中の気密を確認し、格納庫から中央の持ち場へ戻ろうとする。


「バル、異常はないよね? 広瀬隊員も引き上げて、私達も中央へ戻るから。」


「異常ありません、お見事でした。」


「見てるこっちは冷や汗モノだったがな……。」


「他人に迷惑をかけておいて、男の癖にグチグチと……。」


(もっと向かってくるかと思ってたのに拍子抜けだなぁ)


――――


 工作艦 ブリッジ


 救助を確認した戸賀艦長は移動開始を決定、バル特性の連絡用電波で敵方にバレないように救助を報告、警備船クリュが確保しているポイントまで移動しようとした、その時だった。


「艦長、輸送船から熱源を探知、機器が動いています。」


「システムへの侵食が進んでいるのね?」


「はい、敵艦隊へ居場所を知らせるために生きている設備を弄っているのだと思われます。」


「なにか出来ると思う?」


「細かく言えばあの船に何があるのかわかりませんのでなんとも言えません。ただ、きっかけひとつで何かしら電波の一つも飛ばせるでしょう。今のうちに破壊したくなりますが、それではこちらの位置を知らせることにもなりかねませんので。」


「そうよね。とにかくもう一回、護たちにこの事を報告して、これより離脱するわ。」


「了解、送信しておきます。」


 しかし、運悪くサブシステムへの侵食が早く進み、壊されていたメインとは違った形で管理されていた予備の電波発信システムが乗っ取られる。


 このシステムの最大出力で居場所を知らせるべく電波が広く発信された。


 もちろん、これは敵艦隊に、そして護たちにも届くことになるのだった。

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