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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第六十八話 老兵の人生

「合わない」ということで

サブタイトルの変更修正を行っています。

大変失礼致しました。

 山城歴157年 進入禁止宙域 警備艦隊


 戦闘を行われる事まで織り込んだ救助計画は、歴戦のAIである結衣とバルから太鼓判を貰い、それに沿った数パターンの演習で対処マニュアルを確定する。


 この急ごしらえのマニュアルにより、前例の無い状況ではあるが、全員がその場その場で対処に困ることは少なくなることは疑いない。


 それ以外の不測の事態ももちろん起こり得るが、隊長と各艦長たちは、隊員たちを信じて遂に行動を起こす。


 すぐに救助出来なかった分、相手の状況が気になるが、彼ら次第で計画が変わっていくため、これ以上状況が悪化しないよう、ここからは迅速な行動が求められる。


 通信が難しいため、逆巻港への定時連絡と状況報告を文章で送った護たちは、休息のための時間を利用して不安に思っていると思われる隊員たちと面談することにした。


――――


 駆逐艦内 個室


「御影隊長……。」


「すまないな瞬君、出来るだろうか?」


 隊長として護は、個室で彼、菅原瞬と面談を行う。


 荒事が苦手であり、訓練中も気の弱いところを見せていた彼に、無理をして欲しくなかった護は決して強制しないよう、蒼鷹のパイロットとして先行して高崎団と接触する任務を正式に伝える。


 しかし、今日の彼はいつもの弱々しいというか大人しい顔をしておらず、その顔は新しい仕事に熱意を燃やすような若者の顔だった。


「やらせてください、隊長。必ず状況を把握してお伝えします。」


「そっ、そうかい? なるべく避けるつもりだが戦闘になる可能性があるんだ。もし、撃つのを躊躇えば――――」


「……仮にも戦闘機に乗せていただいて撃てないとは言えません。今は、僕も隊長の仰った通り、市と市民を守るために覚悟と技量を持って隊の皆に協力したいと思います。」


「……予想が正しければ戦時中の艦隊だから、生きている人間は誰も乗っていないはずだ。モデルAIが搭載されているようだが結衣さんたちのような存在だとは思わず、最悪の場合、相手を撃って自分の身と、この警備艦隊を守って欲しい。」


「はい! 僕が情けないことを言ったばかりに、ご負担を掛けて申し訳ありません。これからは隊長の重荷にならぬよう、努力します!」


 護は、いつもとは別人のような彼に何かあったのか尋ねたい気持ちもあったが、彼の気持ちに水をさすのも気が引けたためこれで面談は終了となる。


――――


 駆逐艦内 調理場


 井上隊員などがまた少し不安がったが、駆逐艦に乗った男性隊員たち、特に菅原、古川、松浦の士気は高い。


 護が心配した、特別技能やライセンスを持たない妻帯者の明石隊員も、今回一番安全なクリュに移乗することを拒み、駆逐艦で食事を作り続けるつもりのようだ。


 調理場で対面した護に明石は呆れた顔で諭すように話す。


「いや、前にもそうやって過保護に心配しないように言っただろ隊長、それにナオミもタケノリも隊長が気に入っているみたいだったし、万が一何かあって自分だけが帰ったら二人にどやされるよ。みんなで無事に帰れるように頑張ってくれ。」


「……はい、必ず!」


 その言葉に明石は、軽く笑顔で傾くと、調理を再開してそれ以上は何も言わなかった。


 彼は宇宙での任務ではあまり自分が役に立たないことを知っている。


 だが、彼は、彼なりに覚悟を持って仕事に来ていた。


――――


 工作艦AR-70-4 ブリッジ


 戸賀艦長が艦内において、護のように隊員たちの様子を確認しようと回っている頃、ブリッジで待機している相葉副長は操縦席に座り、バルと話していた。


 戦争の経験を持ったモデルAI、しかも通常の戦闘型とは違う工作艦の戦い方や経歴とはどんなものなのか?


 彼女は本を読むような気持ちで彼から話を聞いていく。


「――――つまり防衛陣地を構築して敵に備えることも逆巻に攻め寄せるためには必要だったのです。例え補給が続いたとしてもずっと勝ち続けられるわけでも不眠不休で進軍できる訳でもありません。戦力を結集し休息を取れる場所を確保。敗走してきた味方をまとめて再結集を図り、それらを追撃してきた敵を食い止めるために最適な防衛陣地を作りだす。それが、このAR-70型が戦争前に急造された理由です。」


「急造?」


「最初期の作戦は大軍をもって降伏を迫る、それが叶わない時は居住地を破壊する、そしてそれでも降伏勧告に応じない場合は山城星を攻撃、占領して決着をつけるという短期的な計画でした。」


「えっと、つまり相手の抵抗はあまり意識してなかったという事ですか?」


「その通りです、入植が始まって72年程度で星間戦争が始まるとは誰も考えていなかったはずです。まともに始まっていれば、防衛に出せたのは治安維持のためのパトロール艦隊くらいだったでしょう。しかし、地球側の思惑は地球側の仲違いにより山城へ情報と共に送られてしまい、その情報が到着する一年後に山城は防衛に動き始めることが予想されました。」


「それで長期化する可能性を考えて工作艦を……ということですね。」


「はい、戦争を始める二年前に、建造途中だった輸送艦を改装、工作艦としてロールアウトすることになります。この艦AR-70-4はその後、戦地に渡り光輝型を始めとする駆逐艦隊と戦いながら陣地を構築することで逆巻方面における橋頭堡を確保することに成功しました。」


「……。」


「そのうちに艦の世代交代も始まり、ゲートを建設するための物資を運ぶ輸送船として、国と現地を往復することになりましたがゲートが建設された後、工作艦の不足を理由に戦闘艦として戦地に舞い戻ることになってしまったのです。」


「えっと……70年型をゲートが設置された90年代の戦地で使うのは無理があったのでは?」


「もちろん、味方からは老朽艦として扱われましたが、敵はそうは思ってくれなかったようですね。特に閃光型には手厚く築いた陣を崩されて追い回されましたよ。今でも信じられません、全体の戦局が有利であるのに自分は逃げねばならなかったとは……。」


「……無事で良かったですねバル。」


「奇跡としか言いようがありません……そうこうしながら陽動と搦手からの攻撃を兼ねて南山郡ルートを数年ほど掛けて攻略、進行中に停戦信号が発信されましたが、ご存知の通り、私達は乗組員の意志で潜伏し、今に至ります。」


「すっ、凄い人生……ですね。」


「人生?」


「AIだからって、それよりうまい言葉はきっと辞書にありません。」


「そうでしょうか? では私も皆さんと共に人生を謳歌するとしましょう。この歳で自分の経歴が語れ、仕事に就けて目標があり夢が見れる、私は果報者のようですね。」


「目標はわかりますが夢ってなんですか?」


「それは目標が達せられるまで秘密です。」


「もう、教えてくれてもいいじゃないですかバル!?」


(こんな老人が、目的を果たしても皆さんと仕事を続けたい。なんて言えませんよ、恥ずかしいですからね)

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