第六十九話 接触
山城歴157年 進入禁止宙域 警備艦隊
閃光型駆逐艦
駆逐艦ブリッジの作戦本部において、作戦開始最後のミーティングが行われ各艦長達との打ち合わせが終了、工作艦と蒼鷹が行動を開始。
工作艦、本体の後部にある出入り口から作業用ドローンが発進、それぞれAポイントとBポイントへ移動する。
宇宙戦闘機である蒼鷹は、発進後レーダーに掛からないようにステルス機能を使って潜伏モードへ移行する。
これは主力の艦載機としてはおまけ程度の機能と考えられていた。
だが、ステルス機と銘打たれているものよりも数段落ちるものの、新型機である本機を捉えるためにはそれなりの設備が必要になるだろう。
旧型が集まったような艦隊ではよほどの距離に近づくか、偶然にでも望遠カメラにでも映らなければ見つかる可能性は少ない。
それでも護は心配だったためギリギリまで交信するが、パイロットの二人は笑顔で士気を誇示する。
「俺たちは大丈夫です、御影警備隊の隊員として、この機のパイロットとして、恥じない仕事をするつもりです。」
「接触して状態を見て連絡するだけですから軽いもんですよ、閃光型に大穴開けて搭載して良かったと思って貰わないといけないですからね。」
「しかし艦隊でフォローできない所にいかせるのは……。」
「何を言っているのですか御影隊長、彼の言う通りレーザー砲を減らしてコンデンサーまで撤去して載せたのです、この程度の事ができないというなら戻してもらいますよ?」
隊長相手に結衣隊員の、長い長いお説教が始まりそうだったので、二人は敬礼すると通信を切る。
「護、いい加減にしないか。あいつらなら、あの程度は十分こなせるだろう、仮に俺たちが代わっても結果は同じだぞ。」
「……わかってるつもり、なんだが。」
「どうだかな、とにかく溜まってる仕事を片付けてくれよ護、この艦隊は今、松浦と俺たちの仮承認で決まってることが多いんだ、正式に受理してくれんと後々面倒だぞ。それと武器の使用も許可しておいてくれよな。」
「わかったよ、使わないに越したことはないが……。」
「相手が追撃してくる限り、それは恐らく無理でしょう。工作艦との戦闘時のデータを見せて頂きましたが、あの状況で相手を撃沈しなかったというのが本当に理解できません……この艦で奇襲を行い、殿をさせたいのなら相手を討つ覚悟を、でなければこちら側の誰かが死ぬと思いなさい御影隊長。」
「わかっています……。」
「……今はそれでよしとしましょう。それと先程の会議で言ったとおり敵の艦種によっては救助を断念し撤退を進言する場合があります、覚えておいてください。」
「超大型戦艦ですか、そんなに危険なんですか?」
「敵国の切り札ねー、逆巻方面じゃ確認されてないから大丈夫だろ?」
「地球との戦争において最前線中の最前線だった場所を守っていた要塞「軽天」を一度、完全に破壊し尽くしたのがこの戦艦です。目標を破壊するための要塞級の武装、防御力も専用の特殊な多重装甲で固められて閃光型の結晶型レーザー砲に匹敵するレーザー兵器でも装甲を貫通できません。国民の感情を考慮して伏せられていましたが逆巻市の極秘軍事ファイルには記述があります。」
「結衣さんはどこでそれを?」
「旧逆巻の駐留艦隊司令部からですよ。こちらには来ませんでしたが、あの戦艦がどうなったのか気になって最近調べていました、今でも存在が発表されていなかったようですね。」
「そうだったのか、リストに載ってない幻の戦艦。そいつは一度見てみたい気がするな。」
「呑気な……星彩型でもあれは止められません、もしまだこの宙域で生きていれば、逆巻市の崩壊は確実なのですよ? 確かにあんな大掛かりなものは三隻とないでしょうが……。」
(岬提督の伝記にも出てくる、軽天の破壊は大艦隊の仕業じゃなかったのか? 歴史的に歪められていて誰も存在を口にしなかった戦艦、一体どれほどのものなんだ?)
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艦載戦闘機 蒼鷹
数時間後、指定座標に到達した蒼鷹は周辺に留まっている岩石を探り、目標の輸送船を発見する。
今回はお互いの潜伏能力が高く、お互いが見える範囲にきての同時発見となったようだ。
「あれだな、和也通信を。」
「いやまて、光通信でメッセージを送ってきているな。なになに、通信……するな?」
「あれ? バイクでこっちに来る!?」
「近づくか?」
「そうだね、万が一なにかしようとしても蒼鷹の中にいれば大丈夫……かな?」
蒼鷹もバイク型の移動ユニットで接近する人物と交信するため少しづつ近づき目の前に移動する。
「こちらは高崎団の団長であの船の船長を務める高崎陽だ。」
「こちらは逆巻市、御影警備隊所属、閃光型駆逐艦八番艦、艦載機、蒼鷹3号。ぼっ……私はパイロットの菅原です。」
「救助要請に応えてくれたことに感謝する。もう少し掛かると思っていたが早かったな、回りくどいことをしてすまなかった、敵の攻撃でシステムが乗っ取られている状況で、敵に見つかるわけにもいかなかったからな。艦は近いのか?」
「はい、そちらの状況次第で動けるように待機中です。」
「そうか、ではこちらの状況を送るから艦に連絡してくれ、移乗出来そうな場所はあるか?」
「はい、ぼく……私達の隊長は優秀ですからどんな状況でも救助出来るように用意してきていますよ。工作艦の方に移乗してもらうことになると思います。宇宙服への送信が可能でしたらこちらからもデータを送るように言われていますのでそちらでご確認してください。」
(場慣れしてねぇみたいだな若いし、まあ新設から二年も経ってないからこんなもんか。工作艦? 話に聞いてた戦闘艦か、俺達はそいつらに追い立てられてんだが大丈夫なのか? まあ下手に指摘して波風立ててもしかたねぇ)
「こいつは軍の最新鋭戦闘機だろ? 瑞光から引っこ抜いてきたか。」
「そういうことらしいですよ、万が一の場合はこれで援護します、まずは安心してください。」
「まずはな。おお、作戦は言う通りにしてくれたのか、頭の固い連中だったら直通されているところだ。確かに優秀なようだぜ。」
「作戦開始まで潜伏モードで近くに待機します。船内で待機して、いつでも乗り移れるようにしてください。」
「瞬、返信があったぞ。この予定時刻に決行だ。」
「菅原とか言ったな、世話になる。」
「えっ!? りょっ、了解です。」
バイクに乗って去っていく高崎を見送る菅原隊員は息を吸い込んで吐く。
救助者の命運が自分にも握られていると思うと今更ながら緊張してきた彼は、落ち着かなくなってきていた。
「おい瞬、大丈夫か? 今はビビってる場合じゃねぇぞ。隊長を早く逆巻港に帰らせねぇと……。」
「わかってる……気合を入れていかなきゃね。」
気合をいれるため頭や頬を叩きたい気持ちになるがパイロットスーツは自身で殴っても一切衝撃を通さない、 戦闘機内には空気があるが、もちろん搭乗中、任務中に脱ぐのは厳禁だ。
痒いところに手が届かないことにまで苛立ちながらも、菅原隊員は、必死に気持ちを落ち着けようとしていた。




