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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第六十六話 復帰する隊長

 山城歴157年 進入禁止宙域 閃光型駆逐艦

 ブリッジ


 救助要請を出して待っている輸送船、そのメッセージを受けて救助に向かう警備艦隊。


 彼らの距離は狭まっているが、まだ少々距離があるためにこれまで通り潮流を観測するための「安全のための停止」が必要になる。


 その日を明日に定め、その前に護の問題を解決することを決めた松浦艦長は護のいる運動場(部屋)に向かおうとするが、その前に護から通信が入り、ブリッジへの入室許可を求めてきた。


「とりあえずしっかり体が動くのはわかった、まだ制服だが一度ブリッジに入るぞ、いいか?」


「……わかった、御影隊長。ブリッジへの入室を許可する。」


 ブリッジにある通信端末の画面をフル稼働し会議を行っていた彼らは、護の様子を見ようとそのままの状態で仕事に戻らず待機する。


「広瀬だ、私もブリッジに入るぞいいか?」


「了解だ、許可する。」


 松浦艦長も高野副長、そして隊長の護もブリッジの出入りを許可制にする気はなかったのだが、軍人気質の結衣隊員はこの件にうるさいため「なるべく」許可を取ることになっている。


 実際の軍艦や大型の船では当然ではあるのだが、隊員数が少なく信頼出来る人間が多い現状では(時々下手に機器を触って壊している秋山以外は)自由に入ってもらって構わないというのが本音だ。


 ブリッジに到着すると司令官たる護と艦長である松浦が敬礼し、挨拶を行う。


「代理指揮ご苦労である、長く任せてすまなかった。」


「御影隊長、お戻りをお待ちしておりました。指揮権をお返しいたします。」


 もちろんこれは儀礼的なもので軍人ではない新設部隊の彼らには「型」もないため、映画のワンシーンからとりあえず持ってきたセリフと言い回しで隊長を迎え、指揮権を返上する。


 それを見て隊長が戻ってきたことを喜ぶ者、二人の真面目ぶった演技に口を抑えて笑う者、心配していた気持ちが表に出て泣く者などそれぞれの反応を見せる。


「おお? パイロットの二人と井上以外は勢揃いだな。どうしたんだ?」


 広瀬隊員が周りを見回し真希艦長を見ると彼女はスッと消えてしまう。


「? どうしたんだ真希さん? まさか……。」


「広瀬隊員どうかしたか? さあ、しなければいけない報告が溜まっている、そこから始めようか護。」


「ああ……? そうだな……いや、なにかあったのか?」


「皆、隊長を心配して集まっていただけだぞ?」


「そうそう、全快おめでとう隊長。」


「おっ、おめでとう隊長。やっと仕事が出来るわね。ほらミナ、もう! 後で連絡してあげてね護、それじゃ。」


「ご無事で何よりでした、えっと広瀬さんとは……いえ、失礼します。」


「解析室からも私、河原が代表しておめでとうを言わせて頂きます隊長。それでは、またあとで。」


 思い思いに挨拶して隊員たちは通信を切っていく。


「戸賀! むー停止したらそちらに戻ると言おうとしたんだが、まあいいか。それで、真希さんから聞いているのか松浦、高野?」


「真希さんからは何も聞いてはいないが、護がおかしいというのはみんな薄々感じていたようだぞ?」


「そうそう、AIから受けた教育による刷り込み効果で五歳の幼児がどういう育ち方をするのか? 俺たちも想像してみると確かに問題があると考えたぜ。」


「やはりか、真希さんめ。まあソコに期待した気持ちが無いわけではないが、すぐさまほぼ全員にとは……すまん護、確証はないのに病人扱いしてしまって。」


「うーん、大体わかりました。まあ、心配を掛けた俺も悪いし、そこは行動で自分が正常だとわかって貰えるように努力を――――」


「護、そこは自分は正常だと言い張ってくれよ。」


「俺は心配はしてないが、せっかくショック療法がてら一戦やる機会だったのだがなぁ、惜しい事をした。」


「例え病み上がりでもお前は真剣勝負を要求しそうだから却下だ。さあ、報告をしろ溜まった仕事を片付けるぞ。」


(やはり昔からの幼馴染の前では普通だな、案外病気でもなんでもないのかもしれん)


「問題は挙がっていないか? 不満の陳情を最優先に、それから広瀬さんは念の為に出撃した二人にはカウンセリングをお願いします。えっと工作艦の方は問題がないだろうか? 次の停止で全面的にチェックするぞ。全隊員には相談があれば個別に面談も行うと伝えてくれ、それから――――」


「やっぱり、なんかおかしいよな広瀬さん。」


「……素の護をもっと知る必要があるな。わかった、だが姉が言った事も忘れるなよ護。」


「……はい。」


 広瀬はブリッジを後にしたが高野は、去り際のセリフが気になったようだ。


「また姉が増えたのか!? 一体何があったんだ! 結衣さん運動場の映像記録を――――」


「あなた達、そろそろ任務の話をしなさい。戦闘艦の報告があがっているのでしょう? これは由々しき事態です。」


「もちろん、それは今からやる予定だ。結衣隊員、バルを呼び出してくれ。」


 真希のように自由に移動できるわけではないが許可を得て、工作艦から駆逐艦のブリッジに投影されるバル。


 そして真希さんも現れたがやはり護が心配なのか、じっと見つめている。


「BBー85、ですか? 戦艦ですね、それにこれによれば巡航艦やミサイル艦までいるようです、武装がどこまで生きているのかわかりませんが維持管理次第で、かなりの重武装が予想されます。」


「面識がある可能性はあるかバル?」


「お答えします隊長、工作艦AR-70-4は逆巻を攻撃するため遠回りとなる南山郡ルートで迫っていた部隊、唯一の生き残りです。潮流の発生に乗じて潜伏しましたのでわからないこともありますが、彼らは位置的に考えても恐らく我々がいた部隊とは「ゲートを通過してきた点」以外の接点はないと思われます。推測ではありますがゲートを守るべく布陣していた部隊ではないでしょうか? もし映像やデータが揃うようでしたら可能な限り照合してみますので、お申し付けください。」


「わかった、それでも元とはいえ同じ軍隊の艦と戦うことになるかもしれないが……大丈夫か?」


「ご心配には及びません、所属を書き換えたことで私が彼らに手心を加えることはないと思われます。」


「そうじゃねえって、気持ちの問題だよな護。」


「それこそお気になさらず、私も同類ではありますが民間機に攻撃を仕掛けた同族の艦隊を放っておくわけにもいきません。汚名を返上する意味合いでも毅然と対応させて頂きます。」


「そうだったわ。お前さんから攻撃されたのをすっかり忘れてたぜ。」


「どちらにしても工作艦は救助に回ってもらうから大丈夫だろう、あちらの船は損傷しているとのことだが航行出来るかはどうかはわからん、工作艦としての機能で修理することになるか、全員を移乗させることになるかもしれん、そのつもりで頼む。」


「了解致しました松浦艦長、概要を送って頂ければこちらでも話し合って調整致します。」


「実質的な戦力は閃光型だけだ、戦闘は極力避ける。もし対処が必要なら救助した後に一度逆巻港に戻って体制を立て直す。」


「それなら緊急事態ということで星彩型を応援として呼べるかもな、攻めてくれば尚更そうなるだろうし。」


「バルさん、その戦闘艦にはモデルAIは搭載されているのでしょうか?」


「はい、真希艦長。未熟な練度で参加する将兵の多さから導入される事が多かったので可能性は高いと思われます。このあたりの潮流を渡り続けていることや戦力を維持できているという観点から、少なくとも指揮を取っているのがモデルAIであることは間違いないでしょう。」


「私達と同じ存在が、戦争とはいえ人間を傷つける。悲しいことですね。」


「真希さんは軍人として存在するモデルAIには反対なのですか?」


「結衣さん、そうではないんです。私達は人間を助けるために生まれましたから……。」


「そうですね、ただ軍属ではなくなったとはいえ現在の持ち主である逆巻市の、市と市民の財産を守るために戦うことには変わりがありません。必要とあれば実力を持って排除します、あなたも、それは覚悟してください。」


「はい、私も警備隊員になったからにはそうします……。」


(そういえば瞬君も荒事を嫌がっていたな、後で話してみる必要があるぞ)


「降伏してくれればよし、それでも襲ってくるならやむを得んな。クリュは後方で待機、逃げることなったら輸送船か工作艦を誘導してもらう。こんな所だろうか?」


「うん、まあ、そんなところだろうな。まだ、わからないことが多すぎる。」

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