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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第六十五話 思い合える存在

 山城歴157年 進入禁止宙域 閃光型駆逐艦

 ブリッジ


 松浦艦長により招集された隊長に対する、通信による対策会議は、その議論を加熱させていた。


 この会議は、護を心配した真希が広瀬隊員の見解を周囲に触れ回ったことで、解決が優先される事案へと発展した結果開かれたものである。


 だが、それよりも前に彼らは彼らなりに護の異変に気がついていた事もあり、それぞれで既に話し合いが行われていたため初動が早かった。


 まずは第一陣として、戸賀と亜月が相談事を持ちかけ様子を見る予定だったのだが、失敗したようである。


「なんで二人して通信を切っちまうんだ?」


「護が悪い……。」


「広瀬さんがふしだらです。」


「その言い方はちょっと。」


「あの件ってどうすれば正解なの?」


「そりゃ、艦内での艦長命令は絶対だよ中村の姉御。ライセンスを取るとき習ったろ?」


「いつもの「隊長です」って言わなかったし、お兄さん大丈夫かな?」


「そこは、隊長って呼んであげたほうがいいと思うよ秋山くん。」


「やはり、ショック療法だな一発殴ってみるか、いいか松浦艦長?」


「さすがに、暴行罪で整備班が独房入りになると困るぞ進藤隊員、却下だ。」


「子供の頃からの擦り込みってことですよね、市長や速川先生に、話して相談してみるというのは?」


「いや城島隊員、時間がない。ここから市長へ連絡というのも難しい上に仮にそれが叶うまでこのまま護を矢面に立たせずいたとしたら、俺が代わりに全てをやることになる。いくら指揮権を預かってはいても、隊長であるあいつのメンツを潰してまでそれをやるのも問題だろう?」


「護の両親はわからんが市長はAIの特性を活かして馬車馬のように働いて、速川の兄貴は滅私奉公というのか? 自分を律して仕事に着くタイプだったからなぁ。そんなのを参考にして理想の自分なんて作ったらそりゃ、そんな感じになるかもなぁ。」


「もう、お手上げじゃない! そうだ、ミナは? 」


「えっ、その、すべてを話して自分で判断してもらうのが一番かと……。」


「そうだなそれも悪くない、護もどこまで自覚症状があるかわからんからな。」


「なあ松浦艦長に高野副長、君等はなんか楽しそうに見えるんだが……。」


「真希さん、医者が話した情報を周りに話してよかったのか?」


「……護さんも理香さんも、もう私の仲間でお客様じゃありませんから。」


「え~それは屁理屈じゃないの? 酷いよ真希先生。」


「まあ、広瀬隊員には悪いが俺達は何も聞いていない、独自の判断で事を起こした、そういうことだ。」


「うわ、艦長がそういう反則めいたことを言うと不安になるなぁ。」


「それよりどうしたらいいんでしょうか!? AIのせいで人間が人格を無くすなんて、耐えられません……。」


「フッ、個人的にはあまり心配しなくてもいいとは思うが、時間がないからな、護の体調が万全になったら一戦交えてみよう、それで解る。」


「そうそうって、格闘漫画みたいだな松浦、まあ心配してもなるようにしかなんないし、それでいくか。」


(自己を無くした隊長というのも困りますが、そんなことにはならないでしょうし、駄目なら隊員になるか除隊となるだけでしょう、これから戦闘になるかもしれないというのに、呑気な)


(おや? 結衣大尉どのはご心配ではないのですね? もう少し情のある方だと思っておりましたが)


(あなた達のおかげで軍人は元より非戦闘員まで自己を殺して戦争してましたからね。私はその記憶が鮮明な分、不思議ではあっても、そこまで異常には思えません)


(わがままひとつ言わずに、されるがままの人間を相手にするのは寂しいものですよ……)


(何が言いたいのですか?)


(我々には共に「生きる人間」が必要だということです)


――――


 駆逐艦内 運動場


 その頃、護に組み付いている広瀬隊員は何とか医者として彼の病状を把握しようと言葉を探すが見つからずに、力なく壁に設置された椅子に座り込む。


「隊長を相手に変なことを言った、すまない。」


「なんだか広瀬さんは謝ってばかりいますけど広瀬さんや設立前後に入ってくれた他のみんなにも感謝しているんです。色々と教えてもらって心配もしてくれましたからね、俺は両親はいませんし心配してくれるのは婆ちゃんとか兄貴だけだったからその……。」


「そうだろうか? 高野や松浦、御堂に相葉もいたのだろう、忘れてやるな。」


「そうですね、でもミナはこっちが心配することの方が多くて、あいつらは一緒に無茶するだけというか。」


「それは、わかる気がするな。」


「ただ、自分で何でもやっていく兄貴や、ニュースなんかで身を粉にして働く婆ちゃんを見て、自分も同じように少しでも立派になりたいと思ったし、心配を掛けないようにもしたいのに警備隊設立の前も後もなんか上手くいかなくて……。」


「それで焦っていただけなのか?」


「よくわからないんですが、最近は相手の気持ちばかり気になって、希望を聞いたらなんとかするのが義務みたいに思うことも、自分でも不思議なんですよね。」


「やはり、自覚症状があるのだな、病気ともまだ言えんがその……。」


「遠慮なくなんでも言ってください、俺達はもう家族みたいなもんじゃないですか。」


「いや、そういところだぞ護「!」かっ、家族……!?」


「えっ、あっ、すみません変なこと言って。」


「いや、すまん驚いただけだ……家族……か。」


 相槌を打ちながら嬉しそうにする広瀬は、また護に向き直り話をする。


「そう言ってくれるのはとても嬉しい、では戸賀のように姉として少し話をさせてくれ。周りを大切に思うのはいいが、まずは自分を大切にして欲しい。」


「俺は、そんなに変でしたか?」


「そうだな、正直なところ普通ではない。こういってはバルに悪いがあんな条件で敵と約束をする。駆逐艦も本来は結衣大尉の機能を停止しての運用が安全だというのにしなかった。工作艦も置いて帰ればいいのに置き去りにするのも躊躇っただろう? 捏造にまで手を出してやることじゃない。それから中村の無茶も謝ったとはいえ咎めてないのも問題だ。進藤についても命がけでやるようなことでないのなら隊長として止めなければならないのに言われるがままで、あと戸賀と秋山にも少し甘すぎではないか――――」


「――――はい……。」


「自分の希望をないがしろにするどころか、隊長としての職分まで疎かになっていると思うぞ……そこで「うるさい隊長は俺だ!」などと言ってくれれば安心なのだがな。」


「そんなこと、姉には言えませんよ。」


「フフッ話し込んでしまったな、だが隊員として見れば、この広瀬にも言いたい事があるのだろう? 話してくれると嬉しいぞ。」


「……。」


「なんだ? そこで黙るのか!?」


 護は自分が心配されていることへの嬉しさ半分、不甲斐なさ半分、そして皆には自分を抑えていた分の言いたい沢山のことが頭を過りなんとも言えない複雑な気持ちになったが、難しい顔をしつつ、今は口には出さずにいた。


 広瀬隊員の方は自分について話してくれない護が少々不満だったが、自覚症状を把握し自分の気持ちと向き合える可能性と、この程度の要求に対してでも拒否が出来るのであれば自分の取り越し苦労だろうと少しは思えてくる。


 そして、彼女はまだ様子はみるつもりではあるが高野副長が言った通り、逆巻港で出会った頃は誰よりも気が強そうだったこの隊長を信じて見ることにしたようだった。

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