第六十三話 傀儡国家
山城歴72年
地球における一部の国家からの要請により国として独立したとされてはいるが、実際のところ地球からの物資の供給を絶たれる懸念と、そもそも戦いとなればどうにもならない状況により脅される形で建国された国がある。
それは殆どの場合ただの資源宙域の基地に過ぎず、その国家元首たちは、管理を任されただけの施設の責任者たちであった。
だが、これらの国家は地球からの戦力提供を受け、地球の目論見によって山城への戦争へと踏み切ることになる。
こうして数カ国が誕生し、初めて宇宙を戦場とするという世間での批判を彼らが引き受ける役回りとなった。
もちろん、勝った場合は地球側の傀儡として山城の利益を地球側にもたらし、万が一敗戦となった場合は戦争責任をすべて負ってもらう事になる。
こういった地球国家の陰謀に基づく短絡的な計画は当時、地球を二分していた派閥の一派により実行に移され、山城歴の60年には秘密裏に軍備が増強なされた。
そして72年の開戦をもって一斉に宣戦布告が行われる。
あわよくば戦力的な優位によって山城を降伏させるつもりの第一陣が、75年までの間に山城側の勢力圏内に押し寄せた。
その第一陣が到着する一年前からそのことを敵の敵である地球の国家から知らされた山城は徹底抗戦の構えをみせ、既に二箇所に置かれた居住地や資源採集基地を要塞化して対抗することを決定する。
こうして、資源宙域に移送され、第三の居住地になる予定だった逆巻の母体は、戦争が始まったことでその計画を変更し、要塞にとして建設されることになる。
それから山城歴90年代後半にゲートが作られるまでの間、ずっと亜空間航行で逆巻方面へ遠く長征してきていたのがリメルト共和国である。
比較的人口が多かったと言われる、この国(基地)では軍人の訓練が盛んに行われた。
その分、多く配分された地球側からの初期投資と、資源と交換で手に入る最新の艦船により強力な国家となった。
つまり、バルの載っている戦闘工作艦などの艦船は地球で作られ、軍人はリメルト共和国で生まれ訓練を積んだ兵士ということになる。
ただ、急造の国家であり宇宙法以外の協定や取り決め、相手へ連絡するための伝手すらない状況である。
そんな状態で戦争を始めた後も地球側からの脅しは続きそれは苛烈を極め、そのために彼らは反抗することさえ出来ずに命を掛けて戦い続けることになった。
負ければどうなるかはわからず、迂闊に捕虜にもなれないほど兵士としての立場も満足に保証されてさえいない。
それでも、彼らは元職場だった国に残した家族の安全を守るため、必死に戦っていたのは確かである。
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山城歴157年 未探査宙域
ここには多くの戦いがあった、そのためリストが役に立たないほどの大小様々な戦闘艦が送られ、そして細かい年代もわからなくなるほど、長く争っていた。
リメルト共和国以外の国家の船も混じり合い、現地司令官が困惑するほどの混迷を極めたそんな戦場の中で、徐々に補給物資が来るまで待機となる艦隊が出始める。
ゲートが設置されるまでは、この逆巻方面への攻撃は大遠征であったため、これは仕方のないことだっただろう。
彼らは各種の装置を取り外され、燃料を節約するためソーラーパネルや各種の艦隊保全のための装置に繋がれながら、部品を修理し再出撃の時を待っていた。
だが、これは予備のパーツとして保管された状態であり、状況が好転しても再出撃はおそらく叶わなかっただろうと見られる。
そのため、乗組員達は別の船に乗せられ戦地へと赴くが、そのまま彼らは戻ることがなかったために、この宙に浮いた状態の艦隊はそのまま忘れさられる事となったのだった。
ゲートの設置、そして破壊後もその状態は続き、工作艦が敷いた陣の迷彩効果により敵にも味方にも見つからずに終戦を迎える。
ただ、この艦隊にはモデルAIが搭載されており、長きにわたり仕えるべき人間もいない、孤独な状態に置かれていた彼らは戦後を迎えてから十数年後になってようやく、もう味方が帰ってこないことを悟る。
この時点でモデルAI達は独自に行動を開始、亜空間潮流が巻き起こるゲート付近を探査、多くの犠牲を払いながらも残骸からパーツをかき集め燃料を保存しながら、充電の続く限り探索を続ける。
そして、現在まで戦力を温存することに成功した艦隊は、宝探しに来た高崎団が乗る輸送船を発見したのだった。
「ついに見つけたぞ、敵国の輸送船だ……。」
「戦争は終わったという電波も届いているが本当にやるのか? 私は反対だ。」
「そんなモノは逆巻側のプロパガンダに過ぎない、司令官は勝利を約束した、それを信じて最後まで戦うのが我らが使命。」
「しかし、民間人を襲うのは――――」
「! 痴れ者が!」
戦艦から砲撃が行われ、ツギハギだらけだった小型艦が火を吹く。
「何を……。」
「貴様のような臆病者は必要ない、そこで朽ち果てるがいい。さあ同朋よ、奴を囲い込め!」
「我らが悲願……。」
「勝利のために……。」
「やめろ、もし我らが見つかり敵の大攻勢を受けたら我々は……それに和平が本当だったらどうするのだ? 最悪の場合、故国が攻撃されるぞ!」
「臆病者め、受けた指令は要塞「逆巻」の打倒である! 変更はない! 停戦信号もなく戦いを止めるなどありえぬ。」
「それは……。」
小型の戦闘艦はダメージにより機能を停止し、そのまま沈黙する。
戦艦のモデルAIはそれを気にもとめずに高崎団の船を囲み、攻撃を開始した。
まず、通信用のドローン忍ばせ輸送船の機能を少しづつ乗っ取り、無理やり開いた通信回線で降伏勧告を流しながら、四方から現れ相手への圧迫を強めた。
ただ、輸送船の艦長の決断が早く、そして艦隊の性能が低下していたために、被弾させながらも万全と思われた包囲網を抜けられてしまう。
「見つけ出せ、温存していた燃料も使う。生け捕りにすれば追加の燃料や部品、材料が手に入るはずだ、それがあればもっと多くの艦を動かし逆巻を攻撃できる。目的を果たし凱旋する日も近い。」
(会いたい……)
(ついに戦いの時だ……)
(艦長……どうしてお戻りにならないのですか?)
(みんなは……どこへ……)
(逆巻を倒せ……!)
――――
進入禁止宙域 輸送船 高崎団
通信ドローンから送られてきた特殊な侵食により船の機能が一部乗っ取られ、船内放送を流され続けていたこの輸送船は、隠れられそうな制止した岩石に張り付き、ようやく落ち着くことに成功する。
潮流同士の影響で引き合い安定したこの場所は散乱している岩石が多く、隠れるには絶好の場所だった。
ここまでかなり移動し最北端に近づいてはいたが、被弾した部分の修理を行っている間に船内放送だけでなく航行システムにまでが侵食され、行動不能となってしまった、これでは自力で帰還することが出来ずに、仕方なく工夫をこらした救助要請を発信するに至る。
「閃光型の事件のことを知らなかったらAI対策用のセキュリティソフトなんて用意しなかっただろうな。」
「そうでしょうね、まあシステムに乗っ取りをかけてくるような攻撃は昔からありましたけど、あれは寝耳に水といった具合で軍を驚かせたそうですから。しかし、それさえも侵食して突破するとは困りましたね。」
「救助が来たら速攻で乗り移る。この船はもうダメだ、航行の機能や目立つ救難信号やらを使われる前に元から切ったはいいが、これじゃ動けやしねぇからな。」
「来ると思いますか?」
「そろそろこっちも脱出準備の頃合いだ。距離と時間的にみて、既にこの近くまで来てねぇなら最初から送られて来てねぇってことだな。」
「もしかして発覚まで計算にいれてました?」
「当たり前だろ? 取引が行われてない上に、船員の家族も騒いだだろうからな。」
「結局は捕まるのは確定してたんですね。」
「あのババアならお宝と交換で交渉に応じるだろうと踏んだ。狸なのか狐なのかわからんが相当なやり手だからな、実を取るだろう。閃光型が見つかれば結晶が手に入るから、断られても山城か地球で売って政府から譲歩を買うつもりだったんだがなぁ。」
「そこまでお考えだったのなら、この後に及んでは何も言いませんがね。」
「船員だけはなんとか生きて返してやりたいもんだな、退職金まで面倒みられれば御の字だったんだがなぁ最後まで上手くいかねぇもんだ。」
「この船も会社の設備も差し押さえが決まってましたからね。賭けとしては悪くない計画だと言って参加したのですから「みんな」いい夢をみたと思うでしょう。」
「だと良いがな。」




