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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第六十一話 隠れているモノ

 山城歴157年 未探査宙域 閃光型駆逐艦


 戦闘機、蒼鷹は偵察任務より許可を取り早めの帰還を決定、すぐに非常用の回線に入ってきた通信のデータを送信する。


 この、あまりに早い展開に艦長と副長も驚きを隠せないようだ。


 そして菅原、古川、両隊員の操る蒼鷹は帰投し、二人はブリッジに呼ばれる。


「まだ半端な通信で手がかりだけ、とはいえいくらなんでも早すぎないか?」


「どこから発信しているのかはわからないが、ある程度の座標らしい数字まで送ってきているからな。ご苦労だったな二人とも。」


「いえ、特定は出来そうなんですか?」


「解析班が頑張ってくれてはいるが途切れ途切れだからな、艦隊を進めて発信源が特定できれば正確なことがわかるだろう。」


「いやー二人がそのまま発信源を探しにいかなくてよかったぜ。俺と松浦だったら間違いなく勝手に探しに行っただろうな。」


「ああ、そうだな間違いなく行った、だろうな。」


「何を言っているんですか貴方達は、隊員達の模範となるような言動を心がけなさい、まったく。」


「わかってるって結衣さん、冗談だよ。」


「さて、姉さんにも連絡しておこう。忙しくなるかもしれん、二人とも今から寝ておけ。」


「「了解しました。」」


 パイロットとしての任務を終えた二人が休養に入るためブリッジを後にする。


 そして艦長である松浦は高野副長と相談を続ける。


「さて、潮流で流れてきたのやら、偵察した場所の近くに設置してあるのやら。それとも遠くから強めの電波で送ってきているのか。」


「いや、潮流で流したりはしないだろ? どこまで流れるか、なんてのは調査でもしないとわからないはずだし。」


「救難信号を出してないのも気になる。あれを出せば大抵の場所なら特定が可能だ、いくら違法に侵入したと言っても救助要請をしておいて、いまさら公になるのを恐れているとは考えられん。」


「まあ、行ってみりゃわかるだろ、今回は救助以外、何事もないといいが。」


「そうだな……。」


――――


 閃光型駆逐艦 医務室


 一時騒動となった医務室、そこで意識を回復させた隊長の護だが、部屋から出ることは許されなかった。


 彼は、痛みがまだ収まっていないにも関わらず、広瀬隊員が目を離した隙きに仕事へ向かおうとするため、彼女が隣室で仮眠を取っている間は厳重にロックされた部屋で一人、ある種の軟禁状態となっているのだった。


「薬が切れたのか……痛い……それに落ち着かないな、皆は大丈夫だろうか……。」


「今は安静にして早く体を治しましょうね護さん。」


「真希ちゃん……いつの間に、また結衣さんに怒られますよ?」


「今度はちゃんと許可を取りましたから大丈夫です。」


「そっか、松浦たちの様子はどうですか? 他の隊員たちも……。」


「今の所差し障りなく任務をこなしていますよ。あまりご心配なさらないでください、お体に触ります。」


「でもなぁ……呆れられてないといいんだけど。」


(前々から思ってましたが、なんとなくおかしいですね? 隊員たちとの仲は悪くないむしろ良すぎるくらいなのに、どうしてそんなに彼らからの評価を気にするのでしょうか?)


「護さんはよくやっていますよ? 今回はたまたま運が悪かっただけです。あなたの勝ち得た信頼は岬提督にだって負けていませんよ。」


「それは言い過ぎですよ、もっと頑張らないと……。」


(うーん、頑張ってる人間も数多く見てきましたけど、ここまで寝ても覚めても仕事や他人のことばかりの人がいたでしょうか? これではまるで……)


「なにかあれば知らせに来ますから寝ていてくださいね。」


「いっ痛、真希ちゃんも、一人でクリュを任せてしまって……。」


「……いえ。」


――――


 隣室


 ここでは仮の機器が設置され広瀬隊員が制服姿で毛布を被り仮眠を取っている、その顔はいい夢でも見ているような満足げな寝顔をしていた。


 その体力や能力の高さから怪我人や病人があまり出ないこの警備隊にあって初めて自分の仕事が出来た実感と、護が回復に向かっている状況が、広瀬隊員には嬉しく感じられたようだ。


 しばらくして目を覚ました彼女は戸賀艦長から義務付けられた定時連絡を入れる。


「おはよう広瀬、よく眠れたかしら?」


「いやすまん、ぐっすりだったようだな、おかげで少し時間に遅れてしまったな。」


「そこは気にしなくていいのよ、護はもう大丈夫なんでしょ? よくやってくれたわ。」


「ああ大丈夫だ、まだ痛みがあるのに仕事に行こうとするのは困ったが……。」


「何? どうしたの?」


「いや、なんでもない報告した通り、護が仕事に復帰するか救助が決まったら戻るからな、それとシャワーは許可して貰えるだろうか?」


「その艦には男の子しかいないのは理解してるわね?」


「不潔な体で患者に触れるわけにはいかん。」


「言い方! 真希さんに頼んでついていてもらいましょう。」


「……戸賀……そろそろ皆を信用してもいいのではないか? 風呂もトイレも別の広い家とはいえ仮にも私達は一緒に住んでいるのだぞ?」


「わかってるけど……。」


「まあ、戸賀がそれで安心するならいい、軽度とはいえ白皮症や色んな病気に掛かってきて、人に心配されるのはコリゴリだと思っていたが、今ならそんなに悪くない気分だ。」


「……。」


 広瀬隊員は通信を切り、真希を普通に呼ぶ「まあ、またこの艦内にいるのだろう?」という感じだ。


「おーい、真希さんや。」


「はーい、なんですか理香さん?」


「クリュの方が大丈夫なら少し相談があるのだがいいか?」


「まあ、珍しいですね。この真希艦長になんでも言ってください。」


「ふむ、モデルAIについてなんだが、少し気になってな。」


 広瀬隊員は壁に設置された椅子に体を固定し足を組んで神妙な顔をする、それは患者を診る時の顔だ。


「あら? 私達についてですか? ご興味を持っていただいて嬉しいですが、何をお話しましょうか?」


「護、そして市長についてだ。」


――――――――


 進入禁止宙域


 正体不明の、と言っても予想できる範囲の存在から攻撃を受けた高崎団とその船は問題を抱えながらも、まだ生存していた。


 隠れることには成功したが被弾した箇所もあり、そして通信を送ってきた相手からの特殊な攻撃と、怨嗟のような無線が相まって乗組員が恐怖を覚えてしまい、それは恐慌状態寸前にまで陥っていた。


 冷静に状況を把握し、乗組員を落ち着かせ続けている船長である高崎陽と、副船長である年配の男性は、五十数年前の敵に見つからないように工夫を凝らしながら救助要請を出し続けていた。


「ちゃんと届くのなら助かるだろう、駄目ならアウトだ。」


「お願いですからそれを部下の前で言わないでください。」


「本当のことだ、副船長のお前が狼狽えてどうする? ここが正念場だぞ。」


「それはそうですが、皆怯えきっていますよ。それと届いたとしてもきちんと伝わってなければ無防備な救助船が来て我々と一緒に仲良くあの世行きということも……。」


「それに関しては心配しとらんぞ、こんな場所に来れるのは星彩型か御影警備隊の奴らくらいだろうからな、来るのは最低でも閃光型だ。」


「拾った廃艦を修理しているという話でしたね、まともに動くのでしょうか?」


「あいつらを見たろ? 五十三年も前の修理もろくに出来てないと思われる艦隊が、輸送船とはいえ新造したこの船を追撃してきたんだぞ、修理した艦、それも歴戦の閃光型なら戦えるさ。」


「そうだといいんですけどね。それから罪を被るのは、私と社長、そして若頭だけでいいんですか?」


「仕方ねぇだろ親父には悪いが一緒に刑務所に行ってもらうしかねぇけど他の奴らは巻き込んだだけだからな。お前も無理しなくていいんだぞ?」


「若い頃より先代からお世話になった身ですから、社長たちの刑期が軽くなるように私くらいはお供をしますよ。」


「相変わらず堅苦しい爺様だ。」


「いえ、私はまだ六十前なんですが……。」



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