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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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番外編 リサイクルセンターにて その二

 山城歴69年 山城星 廃棄物処理設定区域

 みさき真一しんいち


 事務所でずっと寝ていた俺は喉の違和感に目を覚ます。


 すでに昨日となっている出来事を少しづつ思い出しながら毛布の中でモゾモゾしているのが気持ちがいい。


 まだ寝たい気もするが喉が痛いし悪化したらことだ、うがいをした方がいいだろう。


 外から入ってくる光が眩しくて目が開け難い……。


 薄目をしながらボーッとする頭を手で抑え、備え付けられた台所へ向かいボタンを押す。


 蛇口から出る水にそのまま口につけて頬袋に溜め込むと口を濯ぎ吐いた後、二口目でうがい。


 コップ? うがい薬? 面倒だ。


 そういえば飲み物の買い置きもないし、ここはこのままゴクゴクいこう。


「あーあーあ~。」


 乾燥してただけで問題はないようだな、喉からくる風邪は苦しいから本当に嫌いだ。


 いつになったら人間は病気を克服できるんだろうか?


 昔の本にはいくらでもそういった可能性が示唆されているというのに実現する気配がなさ過ぎる。


 更にボタンを押してお湯に切り替える。


 なんだかお湯に切り替わるのが遅くなってる気がする、そろそろ買い換えないと駄目か、この事務所も全体的にボロくなってきたな。


 出たお湯で顔を洗ったが、ついうっかり近くにある皿洗い用のふきんで顔を拭いてしまった。


 仕方ない、これは雑巾に回そう……。


 頭がはっきりしてきた気がする、何時間くらい寝てたんだ?


 今、十時だから十三時間! 時間がもったいない。


 幸い作業服のままだし、昨日受けた依頼の船をチェックしたら好きに過ごすとしよう、どうせ俺は留守番だ。


 腹ごしらえも後だな、どうせ冷蔵庫には何もない。


 そうだ! 出前を贅沢に取って豪遊するか、いつもの店にいつもの場所に置いておくようにメールを書いて送っておこう、定番のピザか! 寿司か! これは迷う。


――――――――


 大きなその移民船は、このドックで最大の解体場に鎮座し、その山のような巨体は見るものを圧倒する。


 なんていうけど、俺達は近しい船を何度も見ているからそんなことはないけどね。


 見慣れない人は異常ほど恐ろしさを感じる、という話だ。


 なんでも、見るだけで胃がつままれるような、高いところに登って身動きができずに震えるような、そんな感じらしい。


 それを聞いて考えてしまうのはそんな恐怖を感じながらも「中に入ってしまえば他の乗り物と一緒だろう?」なんて無神経なことを言われながら無理やり乗せられた、件のその乗客の胸中はいかに? といったところだ。


「さて、まずは操縦室だな。」


 エアロックを開けて中へ入り、豪華客船らしくおとぎの国をイメージして改装されたとみられる船内を進む。


 銀髪の少女が描かれていたり動物なんかも……これは擬人化してあるのか? みんなニコニコしているのだが違和感しかない。


 眼がギョロギョロしてるし、こんなもんなのか?


 どうも機械、機械で育ったからこういったファンシーな物が理解できないようだ、いや一体どこがいいんだろう?


 あれ? あのネズミ顔は、さっき見たときと表情が違うような、うーん。


 まあいいか、部屋を見つけるたびにドアを開けていく。


 これは安全のためだ。


 管理をしていなくて空気が入っていなかったり、変に空気圧が高くなり過ぎている部屋なんかも、たまにある。


 惑星内とはいえ、そういう部屋を放置して作業中に誤って開けたりすると気圧の関係で風が巻き起こってしまい、道具類が舞うからな。


 作業前にすべてのドアを開くことを徹底している。


 こうして、なんでもルール化して安全に配慮し、先手を打ってトラブルを回避し、時間の短縮をする。


 そして最速で最高の修理を。


 我社は顧客満足度を重視した信用第一の会社である。


 ただ、最近は忙しくて社員についてはおざなりになっているのがちょっとなぁ、追加のボーナス支給も考えようか?


 おっと、ここがブリッジだな、ドアは閉まっている。


 なんだ、この赤い服を着てダサいソックス履いてる眼帯つけたおっさんは。


 壁の絵とはいえ、変に威圧感を感じるぞ。


 この船は喜ばせたいのか脅かしたいのか全然わからん。


 驚かせたいなら人形なんかを置いて、不意に頭をモーターで回せば一発だぞ? 


 ただ、それで驚かせた弟はしばらく口を聞いてくれなかったりしたが、まあ効果は抜群ということだ。


 うん、悪いことしたね……まあ、昔を思い出すのは後にしよう。


「古めかしいカードキーだな、ちゃんと開けられるといいが。」


 カードリーダーに通すが反応が……薄い。


 照合したことを知らせるランプがチカチカするだけで開かないし、その認証もすぐに無効になった。


 もう一度、もう一度、えーい! もう一度だ、この!


 よし開いた。


 イラつくから今度はカードを通すと同時にドアを蹴ってやった。


 構造がわかっている人間なら、どこのコードの接触が悪いなんてことがすぐに判断できるが、あいにくいとこんな古い船は経験がない。


 だから、殴る蹴るで全体を揺らせば少しはちゃんと配線が接触すると思ってたぜ。


 客の船ならともかく、もう買い取ってスクラップ予定だから遠慮はいらない。


 とにかく、ここで解体用具のお世話にならなかったことはありがたい。


「腹減ったなぁ……早く済ませよう。」


 俺はやっとブリッジに入ることが出来た。


 ここは普通だな?


 というか、どうも改装する時に端末は最新の物を付けたようだな、いや高そうだ……。


 こっちは儲けたが、それならもう少し買取価格を上げてやればよかった。


 動かせるドアはもちろんのことロックが掛かった扉、箱、荷物置きから緊急用の武器庫までここから制御できるものは全面開放。


 処理速度が早い早い、良い宇宙船コア使ってるなぁ。


「ドアにも金を掛ければいいのに……。」


 古い、珍しい、雰囲気が出る?


 わかる気がするが機能はしっかり修理して、取り替えるにしても内装を古めにデザインするだけでいいのでは?


 などと考えていると隣から物音がする。


 そうだよな、操縦室にも武器庫が置いてあるよな、基本的に船長がいる場所だし。


 船内での暴動を制圧するための電撃弾をばら撒くショットガンか、そういえば幽霊船ということだし持っておくか。


 こんな直接的な武器を持つのは初めてだ。


(不届き者め!)


 ! なんだ今のは?


(町人が武器を持って城下を騒がすとは、えーい一人も逃がすな!)


 まただ、音量は低いが確かに変なセリフが聞こえるな、祖父が見ていた地球産の時代劇っぽい声だ。


 おかしい、航行中だけで着陸してる時は聞こえないと聞いたが。


「誰かいるのか? 返事をしろ。」


(名乗るほどのもんじゃねぇ)


「そっか、まあ用事がないなら黙ってろよ?」


(あいや! 待たれい、これには深い事情が、ござんす)


 いろんなシーンのセリフを複合して使ってるのか? 地球のアニメを切って貼って音楽を変えたりして遊ぶ奴らがいたなぁ、そういえば。


「事情を聞くから話せ、言っとくが俺は気が短いぞ。今は腹が減ってるしな。」


(この陣に兵糧、は、ござらん)


「廃棄が決定しているからなぁ。」


(ミー、この船、の、からくり人形、の心、乙女チック、少女)


「わからなくなってきたぞ?」


(ピンピロピロピン。)


 ……本当に腹が立ってきたな、長丁場になりそうだし。

 

 だが、だんまりよりは早く話が終わるかも? 今は我慢して座って話を聞くとしよう。


「ますます、わからん。こちらから聞くからYESかNOかで答えろ。」


(よござんす)


「ふん、それで察するにお前はAIなのか?」


(左様)


「どうして船員を驚かせた……いや驚かせて船から降ろすつもりだったのか。」


(ピンポンピンポン大正解~)


 今度はなんか番組か? イラッとするな、ほんと。


「……船長の話ではこの船は危ないと聞いている、そのためか?」


(そうでござる、無益な殺生を好みませぬが、拙者は大義のためにヤッたのでござるよ)


 うーん、バリエーションが豊富なわりにYESもNOもないのか? それなら冗談をやってるように聞こえても仕方がないか。


「そうか、そのせいでこの船はお前ごと解体だ、これで満足なのか?」


(YES~)


 ふざけやがって!


「そうか! わかったじゃあいいよ。必要なもんだけ回収したらバラバラにして溶鉱炉に放り込んでやる。これならお前がどこにいても関係ないぞ、船と運命を共にするんだな。」


 はぁ……なんなんだよこいつは! 今度はなんだ音楽?


 悲しげな曲ってのはわかるが、だからこいつは一体どうしたいんだよ。


 落ち着け俺、相手のペースに飲まれるな。


 この事件に興味がなかったわけじゃない、真相を知った後ならこっちのもんだ。


「ところで、みんなお前を探してたのに見つからなかったようだが、なんで隠れてるんだ? 姿を見せるのが恥ずかしいとか?」


(人には色んな役割があるの! わかって壱郎さん!)


 誰が壱郎だよ!


「目的があるのなら聞いてやるぞ、AIとはいっても思い残しはないのか?」


(安全第一、その考えはある国の製鉄工場で生まれました)


「んー? ん? それで?」


(お客様、全部のせ、安全第一、守備隊形)


 あーわかったよ。だいたいわかりました、最初からそうやって言葉を繋げればいいだろうが、わざとに遠回りしやがって!


「……その願いを叶えると言ったらお前がどこにいるか教えてくれるか?」


(Give a hint!)


「場所を言えっつってんの!」


(最大級のカジノがお出迎え、さあ家族みんなでひと稼ぎしよう!)


「賭博場があるのか、さすが豪華客船だな。」


(大神は燦めく太陽のように輝き夜を照らした。)


「はいはい、照明器具ねミラーボールとかAIコアっぽいよな。」


(レベルアップ! 知力はアップ! 魔力はダウン!)


 なんのゲームだよ! 後で教えろよな!


 よし、移動してコアを見つけたら、こっちをバカにした分だけつついてやろう。


 派手な装飾にどデカイ舞台、賭け事なんてしたことがないが、こんな設備がいるのかねぇ?


 さて、ミラーボールから調べるか。


 ないな、照明器具は……ない。


「おい、なんで黙ってんだ、近づいたら音で知らせろ!」


(ピコーン、ピコーン、ピピピ。)


 近い? ならあのランタンを持ってる彫像か、女神像ってやつだな。


 ランタンの火を入れる部分に球体が入っているようだ、話に聞いたAIコアというのはこういう形らしいので恐らくこれだろう。


 さすがにこんな物までは調査はしなかったんだろうな。


 さてさて、ん? コードがほとんど外れてるな。


 それで口がきけなかったのか、とりあえず差し込むとするか、こんな会話を続けられたんじゃあこっちがたまらん。


 しばらくすると、持っているAIコアが光を放ち不完全ながらも女性の姿が浮かび上がる。

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