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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第五十七話 心配事は尽きない

 山城歴157年 北山群 閃光型駆逐艦 ブリッジ


 警備艦隊は航行を続け、第二資源採集宙域の責任者に挨拶を行った後、ゲート跡に近づくべく、誰が名付けたのかわからないが作業領域の端である「最北端」へ到達する。


 このまま未探査宙域に入り、慎重にだが予想通り順調に進むと思われた。


 しかし、突如として艦長と副艦長のみ伝わる警報が艦からパイロット用の宇宙服を介して鳴り響く。


 艦長である松浦誠はこの珍しい種類である警報を、何の警報なのかを調べようとするが、この警報はすぐに止んでしまう。


 もちろん履歴は確認することが可能なので、高野と共にブリッジのスクリーンで確認。


 そして、原因を突き止めた二人は無線を使い、警報を鳴らした人物に対して連絡を取ったのだった。


「マニュアルに従い艦長権限で一時身柄を拘束する。大人しくしておくのが身のためだぞ、護。」


「……くっ、こんなことで……。」


「ライセンスを取る時に聞いてはいたが乗員の体温が四〇度を超えると警報が鳴るってマジなんだな。」


「まずい病気だった場合、それが責任者以外に知れるとパニックの可能性もあるからな、こんなことが起きても本人と対処する人間しか周知しないだろうから体験する機会は少ないだろう。」


「指揮権は松浦に移譲する……頼む。」


「ふん、今度はもう少し早く言うんだな。……お前がいない時は真面目にやってやるから安心して休んでおけ。」


「警報もすぐ止めようとしやがって、体調が悪いときは無茶すんなよな。」


「では、拘束……というか医務室に寝かせます、大丈夫ですか御影隊長?」


「ああ……瞬くん、すまないな、古川くんも君は寝てたんじゃないか?」


「そんなこと気にしないでくださいよ隊長。じゃあ、先導するから隊長を支えてゆっくりついてこいよ瞬。」


 連絡を受けた菅原隊員と古川隊員が二人で隊長である護を医務室へ運ぶ。


「広瀬隊員を呼びたいが自分のために艦を止めたらまた気負うだろうな、潮流調査ための次の停止で来てもらうか、やはり本職の方が話が早かろう。」


「じゃあ、姉さんには軽く知らせておこう、最近は機嫌が悪いから怒らないといいんだが。」


「それは、護に対してではないみたいだぞ?」


――――――――


 工作艦AR-70 食堂


「じゃがいもって太るわよね?」


「そうかもしれませんね。」


「油で揚がってたら尚更よね?」


「油は適度に取ると、いいと思います。」


「……。」


 食事を摂っていた艦長である戸賀美佳はここ数日、毎食出てくるフライドポテトが気になっていた。


 嫌いではない、むしろ好きな方だが自分が頼んだのはカロリーが少なめな食事であって、そのメニューを作るのであれば、これはきっと該当しない。


 だが、飲食店から転職してきた経験を活かす形で炊事班を担当してくれている亜月隊員は、他にも一品か二品は高カロリーなものを忍ばせてくる。


 秋山隊員などは喜んで食べているが、さすがに釈然としない物を感じた戸賀艦長は本人に直接聞いてみることにした。


「……なにか不満があるなら言って頂戴ね……。」


「いえ、皆さん良くしてくださいますので特にありません。」


 部隊を率いたこともあるが今回は自分を含め、女性隊員ばかり。


 それも艦長という初めての経験で、なにか見落としがあるのかと不安になってはいるが、戸賀艦長は彼女から身に覚えのない、何か含むところがあるような違和感を感じて戸惑う。


「まあ、いいわ……美弥、コレ食べる?」


「ありがとうございます教官! いただきます。」


「艦長よ! あと、次にドアを壊したら護に報告してお留守番にしてもらうから覚悟しなさいよ?」


「うっ……お兄さんは優しいからわかってくれます……。」


「もう、何甘えたことを言ってるの。そんな舐めた態度を取るなら艦長権限で拘束してもいいのよ?」


「ごめんなさい……。」


 もはや日常になっているお説教を終えたと同時に制服の機能に付いている無線に相葉隊員から連絡が入る。


「かっ、艦長! すぐにブリッジへお願いします。高野副艦長からきっ、緊急の要件でお話があると。」


「落ち着きなさいミナ、すぐ向かうから、亜月隊員! 後片付けを頼むわ。」


「承りました。」


――――――――


  工作艦AR-70 ブリッジ


 戸賀艦長が急いで隊員用の居住区画からブリッジへ向かうと、パイロット用の宇宙服に身を包んだ相葉隊員が搭乗席で小さくなっていた。


「ミナ! なにがあったの?」


「艦長……それが……。」


「こちら高野、すまん姉さん緊急ではなかったんだが重要な連絡事項があってな。」


「重要なのはミナを見れば解るわよ、すぐに話しなさい。」


「護が倒れ……いや寝込んだ。」


「寝込んだ?」


「発熱四〇度以上の大病らしく自分で動けないみたいで、現在療養中、ということなので指揮権は松浦に――――」


「十分に緊急じゃない!? すぐに艦を止めて広瀬を向かわせるわ。」


「松浦が護が責任を感じるから次に止まった時にしようってさ。」


「そんな悠長なこと言って。」


「最近は無理しがちだったからなぁ、覚えがあるだろ?」


「わかってるわよ……帰ったらちゃんと改めて謝るわよ、もう!」


「あいつは領分を超えて心配し続けるところがあるからな、他のところでも色々抱え込んでたんだろ。」


「……そうね、ミナ! 厳しいようだけどあなたはお見舞いには行かせられないの、分かるわよね?」


「はい……理解しています。」


「心配かもしれないけど人員が足りないから仕事を優先させないと、護の分も頑張らないとね。」


「はい。」


(なんだか、子供扱いだなぁ……俺たち四人と離れても大丈夫かどうか心配だったからいいけど)


「他の隊員には伏せておくつもりなの?」


「最初の検査結果は、ただの過労だったけど医者が診る前に結論を出すのも不安だな。まあ、誰に会わせることも出来ないし聞かれたら答えるくらいでいいんじゃないか?」


――――――――


 閃光型駆逐艦 医務室 御影護


 情けない……また、みんなから呆れられてしまうだろうか?


 しかし、鍵もロックされたし無理して動いても仕方ないか……でも、なにかしていないと落ち着かないぞ。


 松浦たちがキツくなるな、すまない今度なにか埋め合わせを考えないと。


 新人隊員にも無用な不安を与えてしまっただろうか?


 工作艦の方に話がいかないといいんだけど無理だろうなぁ……。


 ミナは俺達と離れて大丈夫だろうか?


 もう、大人なんだし過保護に世話をする必要はないだろうけど、それはそれでちょっと寂しいかな……。


 妹を嫁がせる兄ってこんな感じなんだろうか?


 新しい人が入って輝一は問題を起こしてないといいんだが、あいつは相手によっては毒舌で入るから……。


 姉さんは怒るだろうか……また、あんな冷たい眼をされると正直怖い。


 広瀬さんも小さい怪我でも放置したりすると睨んでくるし、心配を掛けて悲しませるかもしれないし。


 ああ、いかん思考が女々し過ぎる、もっと隊長として隊員を信じなくては……。


 しかし、もっと補助員が必要だ、パイロット候補に雑用を任せては申し訳ないし、ヒトミさん一人で工作艦を任せてしまっている。


 最悪ミナもいるし、中村さんも整備について習ってたから大丈夫だろうけど、緊急時にはどこまで整備出来るか。


 カナさんも気がかりだなぁ、敬語はいらないっていうけどなんか一度それで対応するとなんか癖で、女の子だし。


 秋山さんとは話すみたいだけど、一人でいることが多いような気がする、溶け込めていないのだろうか?


 歳も近いしミナと友達になってくれるといいんだが。


 進藤さんはちゃんと休んでるかな?


 井上さんは、また怖がってないといいんだけど。


 そういえば井上さんはお金が入っても辞める気はないみたいだけど一体どうしてだろう? 分前は可能な限り退職金に回したみたいだし、このまま隊にいてくれるといいな。


 明石さんも俺が隊に引っ張り込んだのだから、本人がどう思っていても、ちゃんと気にかけないと。


 いくら店で油を引っ掛けられそうになってたからって短慮に庇って職を失わせてしまったのは本当に申し訳なかった。


 いや……あの店長め! 思い出したら腹が立ってきた。


 俺は間違ってない。


 草壁さんも第一印象から最悪だ、無理をしてでも平気な顔をしてないと気を使わせてしまうだろ。


 でも、なんでかな? あの人からは少し懐かしい感じがする……ような――――


 頭の中がぐちゃぐちゃだ……寝るか。

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