第五十一話 期待の操縦士
山城歴157年 逆巻市 御影警備隊待機所
隊員候補で最後となった菅原瞬は待機所に到着していた。
緊張して、なんとなく入り難くなってしまい秋山が入ろうとしていたあたりから近くの壁に隠れて待機所を見ていたようだが、ようやく意を決したようで目的地のドアの前に立つ。
すると画面に相葉が映し出され、玄関に通された。
菅原は恐る恐る周囲を見回しながら中へと進む。
「ようこそ!」
中村が声をかけるが、まだ緊張していた菅原は小さな声で挨拶を返す。
「よっ、よろしくおねがいします……。」
「きっ緊張しなくても大丈夫ですよ、今日がその、えっと、本番というわけではありませんから……こちらにご記入をお願いします。」
相葉も緊張している相手に気さくに声を掛けようとするが、そういうことに慣れておらずちょっとどもってしまう。
「はっ、はい。」
なんとか記入を終えた菅原は逃げるように奥へと入っていく。
「うーん、60点?」
「うう……。」
菅原が広間に入るとやはり大男たちが待ち構えており、体格差による威圧を掛ける。
左右に配置された巨漢に驚いて振り向いて帰ろうとする彼の肩を松浦の手が掴む。
「よく来たな。」
「面談は終わってないぞ。」
「えっと、怖がってるみたいだからそのくらいで……。」
「なんと不甲斐ない、そら面談室はこっちだぞ。」
彼は進藤から引っ張られ面談室に連行される。
もちろん隊員たちは彼を逃がす気はない。
最後にしていたずらが成功した高野は満足したようで、進藤と一緒に歩きながら驚かせたことを詫びる。
「いやー悪かった、でもこんなのでビビってたら宇宙に出れないぞ?」
高野がノックし、返事があるとドアを開け進藤が菅原の背中を押した。
文字通り背中を押された菅原は動揺しながらも面談の相手である隊長の護の方へ向いた。
「よく来てくれました、どうぞ掛けてください。」
「はっ、はい……。」
正面に座り、おっかなびっくりといった感じで面談相手の顔を見ると幼馴染の古川と似た目元が気になったようだが、なんとなくそのせいか安心する。
気分が少しだけマシになった菅原は自己紹介をして、説明を受ける。
そして手順よく志望動機を聞くところまで話が進む。
「隊員の松浦からの推薦で応募いただきましたが、ご希望のポジションは操縦士ということで、よろしかったですか?」
「はい、ですがお伝えした通りDランクなのですが本当によろしいのでしょうか?」
「ええ、問題ありませんこれからランクを上げてもいいですし、そのまま任務に入ってもAランク所持者が同船するのでご安心ください。」
「Aランク……ですか……?」
「はい、訳あって隊の中で五名ほど所持者がいます。流石にライセンスを持っていない人には操縦をさせられませんが、BまたはAランクの指揮下にあれば多少は融通が利きますからね。」
「その、閃光型にも……。」
「はい、乗れますよ。でも艦長を目指すならBランクは欲しいですね。本採用が決まれば条件付きですが費用は市が負担しますし、仕事としても時間を作れます。それに、休日も使って集中講義を受けていただければ期間の短縮も可能です。」
話が旨すぎる気もした。
しかし、宇宙船が好きな彼にとってそれは願ってもないことだった。
「その御影さん……。」
「はい、なんでしょう? 何でも言ってください。」
「護、もう少し抑えなさい引いてるわ。」
「! いや失礼。」
やや前のめりだった隊長が姿勢を正すと菅原は質問をしようとする。
「えっと、その……。」
正直じれったいが、相手が最年少の護たちより年下ということもあっていつものように強気に出られない戸賀代理と何が何でも彼を隊に入れたい護は話を急かさずに聞くことにした。
「僕はその、荒事が苦手で……。」
「うーん、それは困ったわね警備隊だから違反者がいたら捕まえないといけないし。」
「そうですね、それは操縦者としてでしょうか? それとも普通の喧嘩が駄目とかそういったことですか?」
「船に関してはやったことがないのでわかりません。でも、誰かを傷つけたりするのは……難しい、というか。」
「なるほど。でも、私は希望者が最初から誰かを攻撃できるから警備隊や軍隊に入るわけではないと思いますよ。もちろん攻撃出来なければ仕事になりませんけどね。」
彼の悩みに答える護は真剣そのもの、自分にもそんな経験でもあるかのように、すらすらと思っていることを言い続ける。
戸賀は思うところがありそうだが口を結んで黙って聞いているようだ。
「少なくとも警備隊なら必ずしも相手を撃沈する必要はないですから。市民とその財産を守り、相手も傷つけないように頑張る。それをやるための覚悟と技量を持って仕事をすることを心がけて頂けるのであれば、私はあなたと協力して誰も傷つかないように努力しましょう。もちろんそれは警備隊として正しい姿ですしね。」
「僕に協力……ですか?」
「ご縁があったら俺たちはチームですからね。」
その当然のように言い放たれた唐突な言葉に嬉しさを感じた菅原は決心を固めたようだった。
「……わかりました、よろしくお願いします御影隊長。」
「ねえ護、面談中に申し訳ないんだけど。」
「なんです?」
「敬語止めたら? 似合わないから。」
「そうですか?」
「あなたもそう思うわよね?」
「えっ、僕ですか?」
「どうかな?」
「どう思う?」
「えっと……その……。」
二人で内気そうな青年をからかった後、彼らは三人で部屋を出て広間で説明会を行う。




