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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第五十話 それぞれの目的 後編

 山城歴157年。逆巻市・御影警備隊待機所。 面談当日・午後。


次なる候補者は、機動隊出身の秋山あきやま 美弥みや。 戸賀代理からは「体力はあるが、考えるより先に体が動く」「始末書の常連」と、呆れと心配の入り混じった辛口評価を受けている。 だが、他の隊員たちは「機動隊出身なら戦力としては申し分ない」と楽観視していた。駐留軍不在の今、逆巻市の治安を守る切り札・機動隊の実力は折り紙付きだ。 学力面は不安視されているが、公務員試験を通っているなら最低限はあるだろう。


そんな隊員たちの淡い期待をよそに、彼女は現れた。


事務机のモニターに、制服姿の彼女が映る。 「おお、もう来たぞ。なかなか早いな」 「マナー的には受付開始の5分前くらいがベストらしいけど……」 河原も顔を出す。 「河原も並べ、インパクトが足りん」 「俺の顔を見ても和むだけかもしれないから、止めときます」


その時! ガタンッ! ガガガッ! 玄関のドアから、壊れんばかりの轟音が響いた。


『あれ? 開かないな?』


彼女はインターホンには目もくれず、鍵のかかったドアノブを力任せに回し、引っこ抜かんばかりの勢いでガチャガチャやっていたのだ。


「あっ、あの、今開けますので……」 相葉が慌てて開錠する。 「えっ、あ……ロックしてあったんだ? 失敬! 面談時間中だから、もう開いてると思って!」 画面越しにビシッと敬礼する美弥。 相葉の笑顔が引きつる。


中村が声をかけた。 「秋山ちゃん! 久しぶりだねー、衣笠隊との夜遊び以来だよ」 「おっ、中村さんだ! あの時は楽しかったね!」 美弥は満面の笑みで書類を受け取ると、少しだけ微妙な字で爆速記入し、サインまで一気に終えた。 「ありがとうございます。奥へお進みください」 「はい! えっと戸賀教官は奥かな?」 「えっ、はい、面談室でお待ちです」 「そうなんだ! ありがとう!」 敬礼した後、彼女は早足で奥へ入っていった。


「……びっくりしましたね」 「うーん、前は体力以外は普通の娘だと思ってたけど……案外、戸賀ちゃんの言う通り『お転婆』なのかもね?」 悪気はなさそうだが、台風のような娘だ。


奥の大部屋では、例によって大男たちが待ち構えていた。 「ようこそ!」 威圧感たっぷりの敬礼。 だが、美弥は怯むどころか、鋭い眼光で彼らを睨み返した。俗に言う「ガンを飛ばす」というやつだ。


(おお、肝っ玉が座っとるのう)進藤が感心する。 (敵意むき出し! いい反応だな)松浦が喜ぶ。 (ヒィッ……)井上が怯んで後ずさる。


「そう睨むな。歓迎のために並んどるだけだぞ」 「あっ、そっか! 前に事務所(ガサ入れ)に踏み込んだ時の雰囲気に似ていて、つい条件反射で……いやー失礼!」


急に明るくなった彼女は、知っている高野たちの顔を見て「今」思い出したのか、軽くハイタッチしながら通り過ぎる。 そして、ノックもせずに面談室へ突入した。 バーン! ドアを閉める大きな音が響く。


「……今の音も気になるけど、まあ問題なしと」 「切り替わりが早い性格のようだな」 「危険を空気で察するタイプだろうか? 面白い」 「井上! 男がビビって逃げるな!」


面談室。


「……不合格」 「そんなー!?」 戸賀が開口一番に言い放った。 「ノックもせずに入ってくる子供はいらないの!」 「まあまあ、姉さん落ち着いて」 「あれ? 教官は男の子(護)と一緒の部屋で一体なにを?」 「面談よ……」 「面談ですね。ようこそ、改めてご挨拶します。御影警備隊の隊長、御影です」


美弥がきょとんとする中、戸賀は諦め顔だ。 「もう、いいから今日は帰りなさい」 「えー! せっかく来たのに!」 「せっかくの候補なのに」 「いい加減にしないと怒るわよ?」 「「はい」」 護と美弥の声が重なる。


「まったく。あなたは衣笠隊では可愛がって貰っていたけど、ここじゃ通用しないわよ。あなた、ちゃんと仕事をする気があるの?」 「ありますよ! 今度こそ絶対に宇宙船の免許をとってみせますから!」 「入ったらもう、機動隊には戻れないのよ?」 「……覚悟の上です」


美弥の目が真剣になったのを見て、護が助け舟を出す。 「市長から多少の便宜もありますから、採用通知が来てから迷ってもいいでしょう。頑張ってください」 「ありがとう! お兄さん!」 「隊長です!」


「もう……。説明会に参加していく?」 「はい!」


美弥が元気よく出ていくと、戸賀は深いため息をついた。 「元気があっていいですね」 「それはもういいから。万が一入隊しても甘やかさないでよ?」 「甘やかし方なんて知らないよ」 「よく言うわね。……まあ、ミナみたいに手加減が要らないから案外楽かもしれないわ。ものになるかはわからないけど」


続いて現れたのは、亜月あずき 香菜かな。 紺色のビジネススーツに身を包んだ黒髪の美女だ。少し緊張した面持ちで深呼吸している。 半日以上かかる南山群から、わざわざ足を運んでくれたのだ。


受付で相葉と対面する。 「今回受付を担当する、相葉ですよろしくおねがいします」 「……亜月香菜です。よろしくお願いします」 にこやかな相葉に対し、亜月はどこか複雑そうな顔で一礼した。


中村が小声で呟く。 「んー、やっぱり強そうには見えないっすねぇ」 「え?」 「写真じゃわからないけど『松浦と似てる』って聞いてたのに」 「……容姿のことではないのでは?」 「写真そのままなんだよねぇ。筋肉もないし強そうでもないし、拍子抜けだね」


奥の部屋へ通されると、大男たちの敬礼を受ける。 亜月は動じることなく、綺麗な所作でお辞儀をした。 そして、松浦の前で足を止める。


「元気だったか?」 「……ええ。……今度は負けませんから」 「楽しみにしているぞ」


短い会話の後、彼女は面談室へ入っていった。 「本当に嫌われてるな」 高野がからかう。 「いや、気に入ってくれてるみたいだぞ。向こうでは難しかったが、こっちで訓練するからな。しばらくは相手をしてやれるだろう」 進藤が呆れる。 「まさかあんな娘にまで喧嘩を売ったんじゃないだろうな?」 「大人げないぞ松浦、今日は飯抜きだな」 「なに、相手がいなくて寂しかったみたいだから捻ってやっただけだ」 「なんだ、見た目によらず喧嘩っ早いのか? 写真だけじゃわからんのう」


面談室に入った亜月は、無表情でドアを閉めた。 「ようこそ、カナさん。お元気でしたか?」 「まあ! 写真も愛らしかったけど本当に可愛いわね」 「……亜月香菜です、よろしくお願いします」


少しの沈黙の後、護が志望動機を尋ねた。 「施設長から推薦を頂いてはいますが、どうして警備隊に? あっ、もちろんこちらは大歓迎なんですが」 「いえ、その……にぎやかな職場に憧れて。護さんたちは、楽しそうにしていらっしゃいましたから……」 「それだけで警備隊なんてもったいないわよ? 見目がいいんだから、こっちのお店とかで仕事を探さないの?」


戸賀の問いに、亜月は真剣な眼差しで答えた。 「いえ。私は成人したら市に貢献出来るような仕事がしたかったので、この募集は転機かと思いました。……松浦さん、でしたか? あの方にもお世話になりましたし、ご縁がありましたら、あの方のように副長になれるよう頑張らせて頂きたいと思います」


戸賀が顔を輝かせた。 「あら、よかったじゃない護! やる気があって、あの娘(美弥)よりしっかりしてるみたい!」 「マスターも乗り気だったと聞いていますが、危険も伴いますし、退屈かもしれませんよ?」 「運動が得意ですから、ご迷惑はおかけしないようにするつもりです……」 「そうですか。でも無理はしないでくださいね。何かご懸念があれば、私に何でも言ってください」 「はっ、はい。よろしくお願いします……護さん……」


入室時より幾分か精彩を欠いた様子で、亜月は退室していった。 護には、彼女が何を考えているのか読み取れなかった。


「これであとは、**菅原すがわら しゅん**君だけだな」 「そうね。でも後30分くらいは時間があるわよ。待たせるのも悪いし、もう10分くらいして来なかったら、先に説明会を始めましょ」


残る候補者は一人。 遅れてきた天才パイロットは、果たして間に合うのか。

今回は手直しをしたつもりが反映されておらず、

他の粗も次々と見つかり、見直しの甘さを痛感しております。

大変失礼致しました。


それにともない投稿後にかなりの手直しを行ったことも

重ねて、お詫び申し上げます。

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