第四十七話 達人再び
山城歴157年。逆巻市・御影警備隊待機所。
護たちの家(速川邸)で宴会をした翌日。 隊員たちは待機所の端末を囲み、市長への陳情を行っていた。
「……確かに私は護の保護者であり、警備隊設立の責任者でもありますけど。あまり個人的なことはお願いしないでくださいね。公私混同だと、また皆から怒られちゃいますから」 画面の中の市長(真奈)が困った顔をする。
そこに、横から速川末里議員が割り込んだ。 「ウソですよー! 本当は頼られて嬉しいんですよ、市長は! それに前々から、兄(速川健)の家が人手に渡らないように色々手を回してたんですよー」
「速川議員……用事が終わったのなら早く退室しなさい。……いえ、ちょっとそこで待てますか?」 市長が何かを思いついたようだ。 「あの家を待機所にするのはやりすぎです。でも、皆で住むと言われるのならその方が理由はつけやすいでしょうけど……それでもあの家は広すぎますからね」
戸賀が食い下がる。 「駄目ですか市長? 私達も集合住宅での狭い部屋にはうんざりしてましたし、出来れば寮として活用できればありがたいんですが」 「(姉さん、本音が漏れてるから抑えて)」 護が小声で突っ込む。
「ええ。でも、今いい手を思いつきました」 市長が末里に向き直る。 「速川議員。お休みを取って、引っ越しの準備を」 「えっ?」 「弟弟子のために、なんでもすると言ったではありませんか? お兄さんのためにもなりますよ?」 「えっ、あっ、はい……?」
「というわけで。速川議員も一緒に住むのであれば、便宜が図りやすいです。よろしくお願いします」
あっさりと話が決まり、待機所は大いに盛り上がった。 早速、家の立体映像を見ながら部屋割りの相談が始まる。
三階には進藤夫妻と明石一家。 二階はミナの部屋を中心に女性陣、護と速川(現在は空室)の部屋を中心に男性陣。 総勢15名の大所帯シェアハウスの誕生だ。
「車も送迎しやすい馬力のあるものに買い換えるか」 「実家から出るって親に言わなきゃ」 「井上はいいのか?」 「愛車を駐めておくための物件を探すのが大変だったんっすよ。チューニングするのに音も煩いっすから、文句が出ない場所じゃないと」 井上は今回も辞退だ。ブレない男である。
「屋上で家庭菜園も出来そうだな。道具と肥料は実家から持ってくるか」 「松浦……意外な趣味だな、肉好きの癖に」 「妻は気が短いからなぁ。仲良くやれるといいんだが」 「奥さんも広い家で生活すればきっと落ち着くよー、明石さん」
広瀬が目を輝かせる。 「毎朝、体重をチェックしたり、体温、脈拍も計って貰おう。体調管理がしやすいのはいいことだ」 「りっ、理香さん……体重を毎日は恥ずかしいです……」 相葉が涙目になる。
「みんな、ありがとう……」 護が頭を下げると、戸賀が笑った。 「護、改まって礼なんて言って水をさすんじゃないわよ。みんな喜んでるんだから」 「そうそう。どうせ宇宙船の中でも一緒なんだからな。それにこの家は下手なアパートより部屋が多いしな」 高野も同意する。
家に特別な愛着を持っていた護は、本当に感謝していた。 ミナもまた、父を失った時や速川が去った時の寂しさを思い出しながらも、これからの賑やかな生活に期待を膨らませていた。
家については決まったが、仕事の方は暇だった。 メンテナンスを終えた星彩型巡航艦は絶好調で、クリュの出番はなかなかない。 隊員たちは待機所での事務作業やトレーニングに明け暮れていた。
そんなある日。二人の新人候補の情報が舞い込んだ。 **亜月 香菜**と、**秋山 美弥**である。
昼前。 買い出しに出た隊員たちの留守番をしていた護の元に、通信が入った。
『久しぶりだな、施設長の田中だ!』 「ああ! ご無沙汰しております。そちらは変わりはありませんか?」 『おう、事務員のやつは少し太ったがな! それでよ、早速本題なんだが……こちらで働いているあの娘がお前の警備隊に入りたいんだと。面倒見てやってくれねえか?』
「それってもしかして、カナさんですか?」 『おう。一緒に飲みに行った時も、なんか言いたそうだったから問い詰めたら、やっと吐きやがった。マスターも若い娘がこんな所でバイトを続けるのもなんだからって乗り気でよ』
「そうですか……ずっと採集宙域にいる人なら問題ないですね。願ったり叶ったりです。こちらからも市の採用試験に受かるようにサポートしましょう」 『しかしなんだ、モテる男は羨ましいねぇ……』 「はい?」 『なんでもねぇ。あの娘のデータは送るから、悪用するなよ』
午後。 護が外出し、暇を持て余した隊員たちがランニングに出かけた後。 一人残って電話番をしていた戸賀の元に、通信が入った。
『おう戸賀、元気か?』 「久しぶりですね衣笠隊長。また何か悪巧みですか?」 『人聞きが悪いことをいうなよな。いや、それが美弥のことでよう』
戸賀がため息をつく。 「あの娘がどうしたの? 私はもう教官じゃないから、あの娘の始末書は書いてあげられませんよ」 『いやー、お前が抜けてから時々元気がなくてな。声をかけてた時につい、「警備隊に参加するか?」なんて言っちまって』
「あの娘には無理でしょ? あんまりその……頭が良くないというか、おバカというか、脳筋だし……」 『少しはオブラートに包んでやってくれよ。まあ、俺も前はそう思って声を掛けてなかったんだが、本人が乗り気になっちまってなぁ』
「隊員は確かに足りてないけど、始末書を量産していたお転婆娘の受け入れはちょっとね……。まあ、市の採用試験で落ちるだろうけど一度やらせてみたら?」 『そんな投げやりな。そっちの隊は女性も多いし、いいだろ?』 「もう……こっちも世話にはなってるから協力しますけど、後は本人のやる気次第ですからね」
『助かるよ。本当はどこかへ嫁にいってくれれば安心なんだがなぁ』 「出来が悪い娘ほど可愛いのはわかるけど、確かにあの娘は警官には向いてないわ」 『だから日頃は出番がない機動隊に居たんだろうが。憧れの戸賀先輩を追いかけてたのもあるだろうしな』
戸賀が少し照れる。 「そうなの? 教官として、目標にしてくれるのは素直に嬉しいわね」 『次は宇宙船のパイロットをお願いしますね』 「無理を言うなよ。前も結構な人数に声を掛けたが、お前以外は宇宙船のライセンスなんて誰も持ってなかったぞ」 「そうよね……頭痛いわ」
南の補給所から一名、機動隊から一名。 さらに先日面接した城島瞳を加え、三名の女性候補者が集まった。 だが、まだ足りない。パイロットや情報処理、そして工作艦と駆逐艦を動かすための整備要員。 御影警備隊の人材探しは、まだまだ続きそうだ。
明石友信のお子さんを忘れていました
14名から15名に変更してあります
その四才児に勉強を教えるなんて
広瀬理香が言ってたり
グダグダになっていて申し訳ありません




