第四十六話 我が家
ep.52 第四十六話 我が家 山城歴157年 逆巻市 速川邸
相葉美奈は孤児だった。
母は彼女を生んで後に病死しており、その後に父もまた事故により他界、天涯孤独となってしまったことで施設へと送られた。
そんな彼女はその施設でも仕事から帰ってくる父を待つ間を、ずっとそうやって過ごしていたように本に没頭する。
その後、御影護が彼女と関わりを持ち、少しづつ心を開いていくが彼女が天涯孤独というのは変わらない。
市長も彼女を気に掛け、護と同じ孤児の保護プログラムに参加させる。
仮の保護者を見つけて親代わりをさせているが、護と同様に他の孤児と比べて特別扱いがされるわけではない。
ただ、彼女にとって何よりも幸運だったのは護と、その家庭教師として来ていた速川健に出会い、二人の兄のような存在が出来たことだったであろう。
速川の指導により成績も上位となり、友人も出来たミナは、中学校二年に上がる際に、護と孤児院を出ることになる。
それは市長と速川の相談により決定したことであり、成人となった速川の保護の元、彼の家へ居候することに決まったからだった。
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「彼らは速川先生が逆巻港を去った今でも、大事にその家を守り続けているのでし――――」
「良い話ね、でもね護、一緒に住んでいるならいるで、ちゃんと周りには言っておくべきだったんじゃないかしら? やましいことがないなら! だけど。」
「いやーその、隊員同士でもプライベートな情報は……それに恥ずかしいし……。」
「わっ、私も……。」
「黙りなさい! まったく、一緒に暮らしてるあなた達に「男女の別を守れ」なんて言ってた、私が一番恥ずかしいじゃないの、もう! バカ!」
「ねえ、護ちゃん……まだ、部屋は空いてる?」
「中村……空気を読め……。」
ここは速川邸、かつて速川が家庭教師として赴任する際に自身が通う高校と護たちがいる孤児院を行き来しやすいように一時的に用意された家であり。
現在の正式に家をもらった家主はいないが、度を越して優秀な彼が「いつか戻ってくる時に備える」という大義名分の元、管理人を置き、現状の維持がなされている場所だ。
もちろん、三人にとって大事な思い出の詰まった家であり、そして護にとっても特別で重要な家でもある。
速川は途中から駐留軍司令部が解体されてしまい、駐留艦隊のみとなった艦隊の司令官として船に乗ったまま、あまり帰ってこれなくなってしまう。
その後、護たちとは大学生の一年の頃以外はほとんど会えず、その後に修学旅行から帰還した五人と入れ替わるようにして山城本星の参謀本部へ栄転して行ったのであった。
結果的に二人で住むことになった家に護が運転する車で女性四人を連れてくることを強制されたその道で事情を説明したのだった。
家に到着して早々に三人に囲まれてお説教? を受ける護の元に後を追いかけていた車列が到着する。
「おーここか!」
「進藤さん、裏の車庫に車止められるから。」
「英二……レースじゃないんだから飛ばすなよ。」
「車庫も広いっすね、羨ましいっす!」
「広いな、三階建てか? 花壇まである、さすが隊長やってるだけあって広い家貰ったんだな……いやデカすぎないか?」
「隊長さん、途中で食材買ってきたから一緒に晩ごはんを食べないか?」
「明石さん、ここまで来たのだから聞くまでもないだろう? 俺もたまに来ていたが久しぶりだな。」
「よーし、警備隊全員で宴会だ!」
「こら、護! もう!」
この家のプレートにはなぜか家主である速川の文字はなく、その古いプレートには御影の文字が刻まれている。
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「へぇー驚いた、綺麗にしてるんだな隊長たちは。」
「いや、掃除はミチコさんっていう通いのお手伝いさんがやってくれてますからね、俺達は同じ仕事で家を長期に空けるからこればっかりは。」
「台所も広くて使いやすそうだ。」
「そうですね明石さん、この河原がサポートしますので、存分にお願いします。」
「ゲヘヘ、ミナちゃんのお部屋、拝見っすー!」
「そうね、ぜひ見学したいわ。」
「やっ、やめてください、お姉ちゃん、美咲さん!」
ミナの部屋には何もなかった、ベッドの上にちょっと可愛いものや棚にちょっとだけ可愛いものが並んでいるが、本当にそれだけであり女の子らしいものはそれほど見当たらない。
「若いから今はいいけど化粧品くらいは……あら?」
戸賀はベッドの横に倒れている写真立てを見つけた!
それはまだ中学生の時に、ここに越してきた記念に撮った写真と見られる、そこには笑っている三人の姿があった。
その写真は一定時間で変わっていき、五歳から最近のものまで映し出す。
孤児になって間もない時の薄い笑顔、小学生になって友達と遊ぶ様子、護と写った卒業式、だんだんと元気に明るくなっていく様々な相葉ミナの過去がそこにはあった。
戸賀は泣いた。
中村は机に隠されていた古い記録チップを見つけた!
そこには、おびただしい数の本が記録されており、管理がしやすいように一枚に切りよく千冊入っている代物である。
「漫画じゃないっすね……おっ? メモリーチップ? 黒沼の手紙かーどれどれ。」
そこには詩的な文章が並び、色とりどりの愛が綴られている。
中村は泣いた。
「良いソファーだな、しかし、なんだ、この大広間は……。」
「この家はただの家じゃないな……。」
進藤と広瀬も家の価値についてそこまで詳しいわけではない。
しかし、いくらなんでもこの家の規模は大きすぎた。
家具などはいくらでも揃えられるが、土地の限られてしまう居住地における家の規模は、多方面に渡る功績とその評価によって決定される。
経験で言えばこの家は、大会社の社長クラスや、大病院の院長、政治家が持つようなレベルである。
二人はそんなレベルの家を自分たちの隊長が持っていることが信じられない様子だった。
みんなが落ち着き、集まった頃に護とミナが、この家の話をする。
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「つまり、この家、無くなっちゃうの?」
「そっ、そうですね。次の持ち主が変えたいのであれば、取り壊して新しい家になると思います美咲さん。」
「速川の兄貴が帰ってこないなら、家はとりあえず没収ですね。でも、家主がいない家を放置するのも勿体無いし、事件を起こした俺たちだけが広い家に住み続けるのも、おかしいですから。」
「俺が住宅地を壊してしまったからなおさらだな……すまん護。」
「護……大事な家なんじゃないの? 顔に書いてあるわよ?」
「そうだけど仕方ないよ、そもそも家を守る方法がない。兄貴もわかってくれる、それに……。」
「! 俺たちが全員が一時的に、ここに住めばいいんじゃね?」
「はぁ? 高野くん、なにを言い出すんだ?」
「俺は実家通いだし、認められるかわからんけど、その分は他の家や部屋がフリーになるし、御影警備隊への投資だと思って、もうしばらく、この家を借りよう。」
「いや、確かに詰めればそれなりに住めそうだけど。」
「それならいっそ、事務所をここに移せばいいわね、どう割り振っても私の部屋より広いわ……。」
「ワイフを連れてくるか、留守の間は管理人をさせよう。」
「いや俺は……妻がなんというか。」
「明石、広い家で息子を遊ばせるといい、よかったら私が勉強をみよう、幼児からの英才教育というのも悪くないぞ父よ。」
「そっ、それでいいのかな?」
「俺はパスっす。」
「面白い話だ、のったぞ高野。」
「お金持ちが大きい自宅に人を住まわせて家賃を取ったりして賑やかに暮らす話があったなぁ、なんか違うけど、楽しくなってきた。」
護は釈然としない感じだが、どの道方法はない、なるようになると諦め。
ミナは賑やかになるのを想像し、静かに微笑んでいた。
次回から人材確保と訓練
そして、なるべく早く次の任務に進みます
本筋と離れた話ばかりで申し訳ありません




