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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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番外編 リサイクルセンターにて その一

リサイクルセンターにて その一 山城歴69年 山城星 廃棄物処理設定区域


 岬みさき真一しんいち




 俺の名前は岬真一、十六歳だ。




 俺が住んでいる場所、人類が見つけた新天地「第一惑星」改め「山城星」は入植が始まって、もう七十年が間近に迫っている。




 そんな昔から、地球で溢れた人口を受け入れ続けているこの星は、大したもんだと思わないか?




 しかし、亜空間航行により三年は掛かる航路を旅する船は長い旅程に過剰な負荷が掛かるのか当時の船では劣化が激しくなり、何度も往復はできなかった。




 そうなると移民を受け入れた側の山城星では、廃船になってしまった宇宙船が積み上げられ、社会問題となっていくわけだ。




 そのことを予想していた俺の祖父や父は、会社を立ち上げリサイクルセンターを開業することにしたんだと。




 もちろんこの商売は成功したよ。




 商売は信用、なんて休みなく働き続けた結果、子育てに手が回らなくなったようで、息子の俺たちは放って置かれたりもしたけどね。




 ちなみに、母さんは産んでも子育てはしない人だったから、あんまり憶えてはいない。




 ただ、会社の営業部長として飛び回っているそうだ。




 でも、物心ついた時には次々に舞い込む廃船を、ずっと眺めていた俺ら兄弟と、よく遊びに来ていた友人達は、大きな移民船を遊び場として活用していて、退屈なんて一切しなかった気がする。




 それが解体される時には社員と話しながら機器のことを教わったりしたもんだ。




 中学時代は、俺は跡取りということなので弟達と友人も巻き込んで勉強、勉強の毎日。




 そんな英才教育を受けたりしたおかげで学力はついたが、社長職なんてきっと退屈だ。




 俺は跡取りとしてここで終わるつもりはない!




 手を加えずに人類が住めたという幸運な山城星より、後に発見された居住が見込める星「第二惑星」




 俺は、いつかそこへ辿り着くつもりだった。




 大人がなぜ、この星で止まって次の星に行かなかったのかはわからないけれど、遠く離れてはいても計算上は十年と掛からず辿り着けるはずだ。




 父には内緒だが友人達は賛同してくれて、俺は無理やり高校まではいかされるのに彼らは中学を卒業してすぐにこの会社に入ってくれた。




 申し訳ない気持ちになったが未来の乗組員として本当に心強い。




 そして俺たちに今必要なのは宇宙船と知識や経験だ。 




 宇宙での資源宙域のおかげで、資源が集まってくるこの惑星では重要部品以外の単純な物の再利用はあまりしない。




 そんな、溶かしても二束三文な古い船の外壁金属を集めて、一箇所にまとめた後にそれを使い囲いを作る。




 そして父に対してはそこを、技術的な学び場として認めさせ、俺は高校に通いながら新人社員として働いている皆と、ここで解体や特殊溶接を学ぶ。




 さらに詳しく船のことを知るために、密かに買ってきたりダメになったエンジン、重要パーツを運び込み、解体したり修理したりして実践的な経験を積んでいく。




 全ては自分たちの夢のため。




 授業や仕事があっても無くても、夕方にはここに集まっては研究と修練に明け暮れた。




 全てを家族に知られた時、祖父は最初は反対していたが途中から何も言わなくなり。




 父は最初から何も言わずに全てを知っていた顔で、なんと十六歳の俺にこの会社「岬リサイクルセンター」を継がせた。




 事業に成功した後、いくつもの関連した企業を起こした父と祖父はどちらにしても、ここだけに構っている暇はないと言う。




 後は任せるからお前の好きなようにしろ、ということだった。




 社員達も俺達のことを、ずっと前から知っていて協力すると申し出てくれる。




 強固で何度も使える船が主流になり、少しづつ低迷していたこの廃棄物業社は、ここに来て社長の息子のわがままで冒険船の建造を行う、造船所予定地となったのだった。




 もちろん夢のことだけではなく、社員のことも考えなくてはならない。




 出発さえできれば会社はどうなってもいいが、もちろん残していく社員に退職金を払わねば、そもそも今払っている給金も滞らせる訳にはいかない。




 そこで、自分も高校を中退し、修理業務も代行することも決意。




 そんな「リサイクルセンター」に連れてこられる船の中には、遂に自分は解体されるのか? と戦々恐々とする「モデルAI」もいた。




 彼または彼女達は、ここ十年ほどの流行りでTVでもよく見かけるようになったAIの一種。




 まだ喋りや、気持ちの表し方にぎこちなさがあるが、修理が終わった後には社員たちと友達になって、別れを惜しみながら仕事に帰っていく。




「うちにもモデルAI欲しいな、旅が楽しくなりそうだ。」




「まだ高いらしいぞ、人間らしくするためには「コア」が大事なんだと、それに変に生産や使用に反対する奴らもいるらしいからな。」




 高いと聞いては断念する他ない、少しでも出費を少なくして、船を建造しないと俺たちはあっという間に爺さんだ。




 思いの外修理依頼が多く、経営は軌道にのった。




 もちろん、修理代金だけで前のように廃船が丸ごと手に入るような儲けはないが、それでも我社の優秀さと丁寧さを聞きつけた会社からの依頼は途切れることなく続く。




 信頼は大切、父の言う通りだね。




 溜まっていた依頼を片付けて、やっと! 社員には久しぶりの休暇を取らせることが出来た。




 みんなを送り出し、自分も正直疲れていたので、事務所のソファーで横になり一眠りしようと毛布を被る。




 だが、間の悪いことに「すぐに廃船を受け入れて欲しい」という緊急の依頼が入ってきてしまった。




 会社に乗り付け、慌てた様子で車から現れた細身で高そうな服を着た男性は、気弱な様子で懇願するように依頼内容を話しながら書類を渡してくる。




「急な依頼ですまないが、そちらの言い値で構わないから、この船を廃棄してくれないか……?」




「お急ぎですか? とにかくドックへ入れてください、丁度、依頼が終わったばかりで空いていますから。」




「ああ……分かった、どうにもよくわからない船で、何か取り憑いてるんじゃないかと思うんだ……だから、早く処分してしまいたいんだよ。」




 どんなに小さい船でも安いものではない。




 一体どんな船なのかと詳細を確認すると、なんと今は見ることさえ難しくなった、何十年も前の、それも初期型である大型移民船だった。




 どうも彼は、かなりのお金持ちらしく、レトロな旅客船にでもするつもりで購入したそうだが、訓練に乗り込んだ船員たちが、幽霊のような泣き声、子供の声、叫び声、叩き売り、ゲーム音、ドラマ、時代劇、アニメ。




 それぞれ統一性のない不思議な音による怪奇現象に悩まされ、船長以外は退職してしまったそうだ。




 持ち主である彼自身も調査に乗り出し、専門家とすべての機器をチェックしたが何もない。




 呪いの船を買った、などという心無い噂も立ち始め、実際に音を聞き、気持ちが参ってしまった彼は、直接この船を廃船にするべく、ここに来たのだった。




 なんだか同情してしまった俺は、それなりの料金で買取りを行い、必要な書類を受け取った。




 小走りで逃げるように去っていく彼は本当に参っていたのだろう。




 船を誘導するために管制室へ移ろうとした矢先に、ドックから着艦時に起こる凄まじい音がする。




 もう近くまで来ていたのか? 早かったな。


 


 重い体をほぐしながら、ドックに向かい船長へ挨拶を行う。




「すいません、管制官としていつも一人いるんですが、生憎、休みに入っていまして。」




「なに、しっかりしたドックだな、この程度なら管制なしでも問題ない、他の船もいないようだしな。」




 随分ベテランそうなおっさんだな。




「ご依頼は承りましたが、本当にいいんでしょうかね? 年代物ですがいい船のようなのに。」




「外観はそうでも、老朽化が激し過ぎるのでな、あの坊っちゃんには悪いが廃船が妥当だろう。」




「そうなんだ、俺もまだまだですね。」




「船は乗ってみないとわからんよ、無理に使うにしても自分の持ち船でカスタム出来れば、まだマシだがな。」




「俺もそろそろ自分の船が欲しいです。」




「俺もだ!」




 二人してゲラゲラ笑いながら、詳細を確認していく。




 船長はすでに役目を終えているのだが、ここは茶の一杯も出さねばなるまい。




 事務所に案内し、ソファーに掛けてもらうとお茶っ葉が切れていたので社員が秘蔵していた酒を出した。




「おお、若いのに気が利くじゃねぇか!」




「そうでしょうとも、茶菓子は切らしてますがね。」




「なに、酒は気分で飲むもんだ。」




 俺は詳しくないが、高そうな酒を一気飲みする豪胆さが妙に気に入った俺はお酌をしつつ、もう少しあの船について聞いてみることにした。




「いやー俺も長いこと移民船やら連絡船に乗ってきたが、こんな怪奇現象は初めてでな。」




「報告書には、とにかく変な音がすると?」




「そうなんだよ、時々な、女子供なんて乗ってないのに声がするんだよ。俺は騒がしいのは嫌いじゃないから気にならなかったが、他の連中は怯えちまって辞めちまったよ。」




「船はチェックが入って何もないと? おかしいですね。」




「昔の客が置いていった機器なんかがどっかに残ってたんなら、それで見つかるし、聞こえていた音も船が着陸すると、なんも聞こえねぇんだよなぁ。」




「音声分析なんかは?」




「古い、ってことしかわからん。俺はただのイタズラじゃないかと思ってるがね。まあ、金がなかったから引き受けたが、あんなボロ船で旅をしなくて済んで本当によかったよ。予定外の解雇で違約金も貰えたしな。」




「ボロ船って教えてなかったんですか船主に?」




「教えたが、そのレトロ感がウンタラカンタラ言いやがって聞きやしねぇ。仕方ねぇからつまみ上げて危ない箇所を見せつけてやったら、そこだけ! 修理しやがったよ!」




「はは、まあ変な感じに素直な方ですね。」




 その後、しばらく雑談したあとは、帰りの車を呼んで船長は名刺を置いて去っていった。




「とにかく寝よう……限界だ。」




 俺は、その不思議な船の調査と解体作業を楽しみにしつつ眠りについた。

本編に名前だけ登場させていた岬提督のお話です

密かに飛び級させようかと思いましたが

仮にも高校生は十六歳というのがやはり良い

ということで十五歳から十六歳に変更しました。

ストーリーに影響はありません。


サブタイトルにおいてスマホでの字数が合わず

「岬」を削っています。

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