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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第十八話 強い意志と強い気持ち

 山城歴157年。未探査宙域・監視衛星付近。 逆巻市出発から11日目。


単独行動した中村を追いかけ、護がバイクで飛び出していった頃。 衛星修理班の三名(井上、高野、河原)は既に作業に取り掛かっていた。


一方、衛星近くの宇宙空間にワイヤーで固定された資材置き場には、残った三名が集まっていた。 艦長代理の戸賀美佳、相葉美菜、そして明石友信だ。


「しばらくはここで待機ね。私が全体をサポートするから、明石さんは連絡が来たら一緒に運んでね。ミナは次の連絡があったら、必要な物を用意して待つこと。ライセンスを持っているのだから一人で待てるわよね?」 「はい、大丈夫です艦長代理!」 「了解した。船外活動は不慣れだからよろしく頼む」


彼らが船外で待機しているのには理由がある。 警備船『クリュ』は元旅客機であり、エアロックの開閉による空気の浪費を最小限に抑える必要があったからだ。


本来なら二ヶ月は航行可能なこの船も、武装やシールドジェネレーターの増設により積載能力は激減している。 さらに12名という大人数を乗せているため、酸素や物資はギリギリだ。 高性能な作業用ドローンや、誰でも簡単にEVAができる特殊ユニットなどを積む予算もスペースもなく、結果として護と中村の私物(競技用バイク)を持ち込んだり、運動器具を残すために非常用物資を削ったりと、相葉美菜は涙ぐましい努力でこの船をやり繰りしてきたのだ。


その苦労を知る戸賀は、健気に返事をする相葉を愛おしく思いながら、通信機に向かった。


『あーあーあ~聞こえるっすか艦長代理~』 「……普通に喋りなさいよ」 『俺だ! 高野だ! 故障箇所は妙な壊れ方しているけど手元の工具で修理出来るし簡単だってさ! せっかく出して貰ったけど予備物資はしまい込んでいいそうだ! よかったな安く済んで!』 「――――高野……煩いっ! ちゃんと聞こえてるから、もう少し抑えて喋りなさいよね」


修理自体は順調か。 戸賀が安堵して次の指示を出そうとした、その時だった。


『姉さん! 応答しろ!』 「どうしたの松浦――――!」


次の瞬間、警備船クリュが繭のような黄色い光に包まれた。 シールドジェネレーターが起動したのだ。 展開されたエネルギーフィールドが、船と「自分達(および荷物)」を繋いでいた命綱ワイヤーを容赦なく焼き切る。


さらに数秒後、クリュはスラスター全開で急加速し、彼らを置き去りにして飛び去ってしまった。


「松浦! なにがあったの? まさか攻撃!?」 応答がない。 「姉さん、護ちゃんに連絡を!」 「……通じない――――わかってるわ。こちら戸賀! 護! 聞こえる?」


『――――こちら護! 姉さんどうした? いや――――ちょっと待ってくれ、なんだこいつは――――すまない一旦切る……それに救難信号! 中村さんか、くっ!』 「ちょっと護!?」


通信が切れた。 戸賀は混乱する頭を必死に整理する。 クリュがシールドを展開して戦闘機動に入った。つまり敵がいる。 護も何かに襲われていて、さらに中村からの救難信号が出ている。 全員がバラバラにされ、同時に襲撃を受けているのだ。


(どうなってるのよ……!)


愚痴を吐き出したいのをこらえ、戸賀は不安げな相葉と明石に向き直り、努めて明るく言った。 「――――大丈夫よ。何が起こったかわからないけど……あいつら無駄に強いから、きっとなんとかしてくれるわ」


その言葉に、護と松浦を信じきっている相葉は大きく頷いた。 明石も不安を隠して頷き返す。 戸賀は深呼吸し、衛星に取り残されたこの状況で何ができるか、思考を巡らせ始めた。


一方、警備船クリュ船内。


ドガンッ! 衝撃音が響き、コックピットの左側に亀裂が走る。 破片が飛び散り、松浦の宇宙服に突き刺さるが、幸い気密は保たれている。 だが、衝撃で通信機が破壊され、外部との連絡が絶たれた。


「ちっ……!」 松浦は操縦桿を片手で操作しながら、近くにあった補修用ジェル(簡易消火器のような形状)を噴射し、亀裂を塞いだ。ドロドロの液体が瞬時に硬化し、空気の流出が止まる。


「コンソールは生きている、操縦も可能……運がいいな。シールドを張ったのは真希さんか? 助かったよ」 『お怪我はありませんか?』 「ああ。輝一聞こえるか? 何か解ったら知らせろ」 『こちら御堂。さっきの攻撃で完全に捕捉したよ。今処理してる、船のようだね』


松浦は歯噛みした。 「シールドを貫通してくるとはな。ただの資源泥棒なんかじゃない」


艦内放送が入る。 『――――誠さん、大丈夫ですか?』 広瀬の声だ。 『進藤だ! 一体何が起きやがった!』


「みんな聞いてくれ。この船は攻撃を受けた。俺は無事だが通信機がやられた。進藤さんは一度コックピットに来てくれ。広瀬さんは右舷端末で船内連絡係を頼む。わかっていると思うが、全員ヘルメットをして、間違っても宇宙服は脱ぐなよ」 『了解』 『わかったすぐに向かう』


『誠、急ぐならこっちの端末から外部連絡を取ろうか?』 「輝一は敵に集中しろ、解析がお前の仕事だ。どうせ今連絡を取っても、いい報告はできんしな。真希さん、送られてきた解析結果をそっちの映像で出してくれ」 『おまかせください』


虚空に鮮明な敵影が映し出された。 無骨で古めかしいフォルム。


「――――やはり『戦闘艦』だな。しかも古そうだ。戦争なんて50年以上前に終わっているというのに、誰かが拾って修理でもして遊んでいたんじゃないのか?」


軽口を叩きながらも、松浦のはらわたは煮えくり返っていた。 奇襲を許し、隊員を分断させ、船を傷つけられた。 留守を預かる副長として、これ以上の失態は許されない。


『戦争で使われていた地球産の『AR-70』工作艦だね。本来の火力はそんなにないはずだけど、改造してビーム出力を上げてるみたいだ』 輝一が分析する。 「運搬用のドローンを多数装備か……人員がそれに襲われたら厄介だな。とにかく、今ある武装でこいつは潰す。悪いが復帰した副長の権限で、今は異議は認めん。あいつが他の隊員達を襲う前に叩くぞ!」


『さすが副長! そうこなくっちゃ。真希お婆ちゃんも、しっかりサポートしろよ?』 『まあ、輝一さん。そう言うなら年上の女性を敬うということを覚えてくださいね。それに、そんな様子では社交なんかは絶望的ですね。いつか綺麗な言葉使いを教えて差し上げます』


敵は未確認の改造工作艦。戦力差は不明。 だが、クリュのクルーたちは動じない。 それぞれの持ち場で、自らの能力と仲間を信じ、反撃の狼煙を上げた。

 第十八話の後編で矛盾が生じたので護のセリフを少しいじってます。


 ご迷惑をおかけします。


 正直、まだありそうです、申し訳ありません。

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