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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第十三話 配置先との別れ

南山郡 南補給所付近 警備船クリュ船内


 逆巻市出発から九日目




 市長と渡辺議員が面会する一時間ほど前、南山郡からの出発に先立ち多くの人から挨拶と称しての通信がひっきりなしに入る。




 その対応を窓口担当である相葉隊員は、広瀬隊員と中村隊員に見られながら涙目で必死に対応していた。




 今の相手である少しメタボな年上の男性は眼をキラキラさせて画面いっぱいに自分をアピールしている。




「次に君が来る時に、答えを聞かせて欲しい!」


「もっ、申し訳ありませんがお断りさせてください。」


「照れなくてもいいじゃないか! 俺は待ってるぜ。」


「おっ、お願いですから待たないでください!」




 ツッコミ担当の中村隊員が、もっと力いっぱい断るように腕を振って合図するがダメなようだ。




 そこで、わざわざ別のコンソールを用意した広瀬隊員が「終了~」とばかりに通信を切る。




 すると自動的に次の通信が繋がる。




 今度は体型は普通だが髭の濃い変なシャツを着たおじさんだ。




「やぁーまた会えたね、任務は今日で終了だって? じゃあ、なおさら今日こそは着物を贈らせてほしい、サイズを教えてくれるかな?」


「サっサイズ? あっ! きっ規則ですので教えられません。」


「つれないこといわないで、さあ上から下までパパっと――――」




 広瀬隊員が「終了~」とばかりに通信を切り、ツッコミ担当の中村隊員が今のはもっと毅然に対応しろと指でばつ印を作る。




 すると自動的に次の通信が繋がる。


 


 気の強そうな女性で派手な服を来ている、年齢は間違いなく相葉隊員より上だろう。




 会社の通信端末を使っているのか、後ろには男性社員達が映っていて皆が自分の存在をアピールしているようだ。




「ちょっと、あんた! なに男どもに色目使ってるのよ。気に入らないわね、仕事のじゃま――――可愛いわね……。」


「あっありがとうございます、あっあの――――」


「――――悪かったわ。」


「いえ……そのごめんなさい……。」


「いや私の勘違いだったから、惨めになるから謝らないでよ……ここを離れるんだって? まっ、また来なさいよね。」


「はい、ありがとうございます、またお会いしましょう。」




 この派手な女性は「ふてぶてしい厚化粧の受付嬢」を想像していたが、相手が「小動物のような少女?」だったことから、自分の浅慮を恥じたようで、すぐに通信を切る。




 珍しく相手から通信が切れ、介添の二人は微妙そうな顔をするが相葉隊員は「また来るように」と言われて、少し笑顔だ。




 そして、さらに自動的に次の通信が繋がる。


 


 今度は50代くらいのいかにも事務職という男性だ。




「やあ、相葉ちゃん久しぶりだね元気だった? 僕のこと忘れてな――――」




 先程の通信をこちらから切れなかったのが不満だったのか広瀬隊員は詐欺のような口調と言葉を使うこの人物を不審者とみなし、通信を一方的に切る。




 あっ! というような驚いた顔を相葉隊員がするが、次々と舞い込む通信の嵐に忙殺され、この人物からの通信は結局最後に回されることとなった。




「やあ、相葉ちゃんさっきぶりだね……ちょっとした確認だけだから、今度は切らないでもらえると助かるよ。」




「ごめんなさい、事務員の田中さん。」




「失礼しました、詐欺かと思ってつい。」




「ここには久しぶりに会う知り合いなんていないからねー。」




「ああ、うん、そうだね、次からは僕も気をつけよう。それで確認なんだけど、補給の方は足りてるかな? 施設長は普段はケチなんだけど今回は大盤振る舞いしてるはずだから追加も受け付けるよ? そうだ! みんなももう大人なんだし「お祝用のお酒」なんてどうかな? 誕生日の子はいない? おじさん「美味しいケーキ屋」を知ってるから間に合うようだった送らせるよ?」




「――――ケーキ、食べたい、でも、カロリーが……医者として過剰摂取など……」




「理香ちゃん! これ贈賄っす事件っす陰謀っすよ、受け取ったら脅してセクハラしてくるヤツっす!」




 びっくりして座っている椅子から転げ落ち浮きそうになる田中は持ち直して心外だと早口で喋りだす




「なっ! 何言ってんの君は! 人聞きが悪い! あくまで補給物資! すでに受け取って確認してるでしょ? 書類もちゃーんと、こちらからの支援として記載されてる! ほ~らホラホラ! おじさん、やましい事なんてなーんもしてないよ! ねー相葉ちゃん?」




「あはは! 冗談だよーあんまり怪しかったからつい!」




「時間もないし、ケーキは御預けだな、仕方ない……。」




「はい、どこに出しても大丈夫な書類で感服しました。――――補給の追加ですか? いえ、各種の倉庫がいっぱいになって出発前より多いくらいです、補きゅっ――――補給担当としてお礼を申し上げます。」




「あはは! いま噛んだ? 立花ちゃんは噛まないから新鮮だねそういうの、いや不足がなければいいんだ施設長も安心するだろう。もう、そろそろ星彩も到着するみたいだから気をつけてね、護くんによろしく。」




「良くしていただいて本当にありがとうございました。」




 50前のおじさんが手を振りながら通信を切り。




 やっと全ての通信が途絶えると、相葉隊員は背もたれに体を預けほっとする。




「お疲れ様、60点。」


「お疲れ様ー! 45点。」


「うう……ごめんなさい。」




「どもりグセが治らないな、声帯に異常はないようだし、私と一緒に真希先生と発声練習をするか? 声を出していれば自然と慣れてくるだろう。」




「相葉ちゃん! 体を鍛えよう! 相手に負けない体があればビクビクおどおどする必要はなくなるからねーこの中村美咲が、手取り足取り指導するよ。」




「がっがんばります! お願いします美咲さん! 理香さん!」




 そうこうしている間にも星彩が到着し、警備区域に入ると、クリュ側から護が通信を入れ、交代の手続きと、挨拶を行う。




「お久しぶりです。御影警備隊の皆さん、ご無事での初任務の完了を、心よりお祝い申し上げます。」




「言花ことはさん、お久しぶりです。まだ任務完了ではありませんが、お祝いの言葉は「前祝い」としてありがたく頂戴致します。」




「あれ? 私、名前教えましたかね? それに任務完了じゃないって? ああ、帰るまでが任務ってやつですね! さすが若くして隊長やってるだけありますよ、ご立派です。」




 護は事情を軽く説明し、これから修理のため監視衛星まで行くことを星彩の艦長である言花ことはに告げる。




「――――ここを守ってきた者として、その任務は看過かんかできません。あなた方が考えているより亜空間からの潮流は激しいんですよ? このエリアでさえ影響を受けてはいますが、ここはまだ比較的穏やかな場所というだけなんです! 絶対にダメです!」




「理解っています、けれどこちらも喧嘩を売られてしまっていて退けません。自分はともかく、隊員たちの名誉にも関わります、後はお願いします。」




「――――どうしてもというなら私が行きましょうか? こちらは軍艦ですから多少は――――」




 護が断ろうと言葉を発する前に突如割り込みの通信が入る。




「言花? あなたは何を言っているの? そんなことをしても意味がないしさせられないわ、命令系統が違うから命令はできないけど、任地から離れることなど許しません。」




「立花りっか姉さん! 姉さんからも止めて! こんなのダメよ、私達はなんのために戦争で戦ったの? 市民が自分から危険地帯に――――」




 立花がどういった手段をとったのかはわからないが星彩からの通信だけがなぜか途切れ、立花が護に告げる。




「――――私が言って聞かせますから行ってください。……良き旅路でありますように。」




「……ありがとうございます立花さん……ごめんなさい言花さん。」




 護は通信を切ると、出発の号令を発する。




「何度も同じことは言わない、任務は完璧に完了させる、いくぞ。」




「了解、まだ気負うなよ護? 時間はあるからな。」




「ああ、理解ってるさ、だが急ぐぞ12日目までに逆巻港に着かなければ意味がないからな。」




「だから、気負うなって、姉さんが手綱を緩めるわけないだろ?」




「高野うっさい……もう。」




 できる準備を全て終え、かき集められるだけの修理資材と生活物資などを満載した、相葉隊員命名の警備船「クリュ」は単純な調査と遠方からの観察しか行われていない未知の領域へその足を踏み入れていく。

 平素より「 元軍港だった逆巻港の今」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

 ブックマークして頂けたこと初の評価ポイントを頂けたこと、感謝に堪えません

 重ねてお礼を申し上げます。 本当にありがとうございます。

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