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 元軍港だった逆巻港の今  作者: RED DOG
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第十話 日頃の行いとその償い方

南山郡 南補給所 元旅客機船内


  逆巻市出発から九日目




 田中とカナから貰った品を持ち帰り、護は無事に船着き場へと到着する。




 ドアの前で船と接舷しているダクトを確認するが、念の為に制服の特殊機能である簡易宇宙服モードを起動する。


 


 温度や気圧の変化にある程度対応は出来るように制服を変化させ、入る際に専用の置き場へ置いておいた簡易ヘルメットを着用。




 手元のメーターで服内の気密を確認すると、船着き場前のドアを空け船から出されたダクトの通路を通り船内に入る。




 エアロックの扉が閉まると除染チェックが始まり、軽く洗浄がなされた後に洗浄液を吸い出しが終わったところで、船内に入ることが出来る。




 扉が開き簡易宇宙服モードを解除し中へ進むと、目の前には異常な光景が広がっていた。




「そうだ! いいぞ相葉ちゃん! もっとだ、もっと力を入れてくれ、まだまだ、まだ行けるはずだ」




「もっもう、無理だよ英二えいじくん……」


 


「少し鈍りすぎているからな、このくらいは医者としても、うぐぐ。」




「大丈夫、理香りかちゃん? 器具の抵抗増やす?」




「ギッ、ギリギリだからこのぐらいでいい……ぞ中村、あまり過度な負担を医者は推奨しない。」




「ほら、輝一さんどうしたんですか? もっと早く足を上げないと運動になりませんよ? もう少し鍛えた方がいいですね。」




「俺は、頭脳労働が仕事なの! くそう、自分は箸も持てないくせに!」




「この進藤明しんどうあきらを負かそうなどと10年早いわ出直してこい。」




「くっ、戦闘なら負けんが、腕力では一歩及ばんか……」




「シャワーあがったっす、次は誰っすか?」




 護にも、なにをやっているのかは理解るが一体なぜ今、通常一人か二人で行う運動を、普段は収納してある運動器具を全て出し、多人数で運動しているのかがわからない。




 しかし、目の前には3つの器具を並べてそれぞれにコーチのように一人が一台付き応援するなり、口撃を行ったり、悪戯するなりしている。




 松浦と進藤においては力比べでもしていたのか倒れた松浦がしきりに腕をさすっている。




「おお! 護、どうだお前もやるか?」




「いえ……これは一体何の騒ぎですか進藤さん?」




「おう! 最後に補給される、水や衛生用の液剤は補給前に使っておいた方が良いのか? などと皆が言うものでな、使う前に、普段の運動量が二時間では足りなさそうな連中が集まって楽しくやっておるのよ。」




 護は艦長代理を探すが見当たらない。




「戸賀ならまだ寝ているはずだぞ? 彼女の水浴びは、俺達の後で一度清掃した後に女性陣だから、起きたら最後にシャワーを使って貰うことになるな。」




「――――そうですか……あれ?」 




 この運動機器を予備まで出すには副長の権限が必要なはずだが、護は(そういえばコーヒーAの事件の後、二人を副長から外したが船内の登録名簿までは書き換えていなかった)ことを思い出す。




(まあ、このぐらいはいいか元々副長からこのまま外しておく気もあまりなかったし)




「おはよう隊長、帰ってたか。」




「ただいま明石さん。これお土産なんですがみんなに分けてもらっていいですか?」


 


「わかった、じゃあ、この合同作業? の時間の後に昼食と一緒に配ろう。」




「うぉおおよし! 頑張ったぞ相葉ちゃん。もうワンセットいってみようか?」




「あっありがとう英二くん、でも――――もう、ちょっと休ませてね……」




「輝一さん? もうやめてしまうんですか? 運動能力が身につきませんよ? 糖分や油は内臓に付くかもしれませんが。」




「うぐぐ、他人の血糖値やコレストロール値を晒して煽ってくんなよ! たちが悪いなぁ」




「――――医者の不養生とはなんとも嫌らしい言葉があるものだな――――肥満や骨粗しょう症にはならんぞ私は……」




「あら? もう終わり? もうちょっとだけ頑張ろうよ理香ちゃん? 私のスポーツ・インストラクターの経験から言わせてもらうと理香ちゃんは痩せ過ぎてると思うけどなぁ、だからもうちょっとだけ筋肉をつけよう!? きっといい体になるよ。」




「松浦くん、じゅんばんっすから早くシャワー室にいってくれ~後がつかえてるから。」




「わかりました、井上さん。あー戻ったら訓練のやり直しだ。護以外にこうもあっさり負けるとはな」




「えーっと、うん……みんなシャワーが済んだら全員で食事にしよう。その時に決めたいことがあるから、またここに集まってくれ。松浦と高野は責任をもって器具を片付け椅子を元に戻すように。」




 それぞれが思い思いに返事をし護は船内のコックピット側にある端末が置いてあるエリアに行き、座ると一息ついて、皆が集まり食事の準備が出来るまで目を閉じるのだった。




 そんな護が外との音を遮断し目を閉じている間に機器は戻されるかと思われたがそんなことはなく。




「おはよう――――って、なにこれ?」




 事情を聞いた戸賀も運動をしたがり食事の開始はさらに遅れることになる。




「――――戸賀の姐御……いやー俺も頭脳労働が主だから一日二時間の運動でいいんだが……」




「だから、だれが姐御なのよ! 河原、あんた年上とはいえ若いんだからしっかり運動してよね? 病気になってリタイアされたら隊が困るの!」




 メタボ気味で心配され(怒られ)ている河原正樹かわはらまさきの隣では高野がまだ頑張っていた。




「やっぱり別の専用器具でやると色々できて違うなぁ、いつも全部出しといてくれたらいいんだが。」




「ここにある全員の席をまとめて押し込んで、やっと出せてるだけなんだから、さすがにそれは邪魔っすよ。」




「みんな一杯ずつ水を飲んでおくといい、脱水症状で倒れるといけない。」




「あっ……ありがとう明石さん んっ……んっ。」




 しかし、親切からきている不用意な言葉に情報処理担当として頭の回転が早い二人から無駄なツッコミが入る。




「宇宙で倒れるとはこれいかに。」




「力抜いたら浮くだけだもんな。」




「うーん、自分で言ってて妙だったけど、やっぱり今の言語というのは地球産だから――――」




「ガハハ、変な揚げ足を取りだな、明石も細かいことを気にするな、だいたいで伝わればいい。」




「えっ? あっ……そうですね進藤さん。」




「今日の昼食ランチはなにかな? 私、お腹空いたよ。」




「松浦の要望でステーキだな、苦手な人は言ってくれ別の物を用意する。焼くのは簡単だが肉汁が飛んでしまうからパンに挟んで食べてもらおう。サンドイッチばかりでその……すまんな。味もそれほど凝ったものはできないし。」




「まあ、宇宙だからね。」




「まあ、昔に比べればね。」




「非常用のレーション、イヤゼッタイ。」




「相葉さん大丈夫ですか? やっぱり抵抗の負荷を減らして時間かけたトレーニングがいいのでしょうか? 運動のメニューは管轄外でしたが存外楽しいものですね。」




「あはは、ありがとう真希さん、でも……お手柔らかにお願いします。」




「姐御、そろそろ片付けないと焼いてるランチの肉が冷めるっすよ、みんなお腹へってるっす。」




 実際には保温できるので冷めたりはしないのだが、焼いたらすぐ食べたいと思うのが人情であり、戸賀もお腹が減っていたのかトレーニングを止めた。




 船の整備担当である進藤がテキパキと器具を折りたたみ。




 高野が各部品を確認しながら天井の収納スペースへ収納していく。




「お前も手伝わんかい、井上。」




「シャワーで流した後にまた汗をかくのはイヤっす。」




 目を覚ました護が(寝てしまった!)などと考えて急いで、みんなのところへいくがまだ準備が出来ていないことに唖然とする。




 準備が整い次第、全員が揃ったところで食事をとり、ミーティングを行う予定だ。




 修理を終えた、交代の駐留艦隊所属艦、巡航艦、星彩型十五番艦は二時間後に到着する。




 二百時間を越えて離れていた任地である南山郡へと帰還する彼女を待って交代した後、高難易度の任務に挑む。




 そんな、今食事を取っている彼らにはまだ緊張した様子もなく、むしろ気楽で気ままな隊員達に安心し、心配すら覚える護であった。

 この度は「 元軍港だった逆巻港の今」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

 一話から少しつづ加筆を行っておりますが、ストーリー上の影響はありません。


 読んだ後での追加がご不快な方もおられるかもしれませんが、

 何卒、ご了承いただきたく、お願い申し上げます。

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