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縄文エスノグラフィ  作者: のはうず
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縄文土器

縄文時代はその時代の地層から出土する土器に縄目模様がつけられているために縄文と名付けられた。それよりも時代を遡る縄文の草創期、南九州では貝殻の溝で模様をつけられた貝文土器が主流であった。

なぜその時代の人々は縄目や貝の溝などを模様にしたのだろうか?


火焔土器のような現代でも高く評価される、芸術的な作品を創造できる文化水準にあった人々が土器に縄模様を愚直に付け続けてきたのにはなにかきっと合理的な理由があるのではないかと考えるのは、ハッカーでなくとも自然なことだろう。



古学者はそれは単なるデザインだと簡単に言い、教科書などでもそのように記載されている。


近年はエンジニアリングや経営学の世界でもデザインの重要度はましている。「デザインだから」と言う説明はなんの用もなさいない。デザインとは意図のある意匠のことで意図をもたないものはデザインとは呼ばないのだ。では、縄文土器の模様にはどんな意図が込められているのだろうか?


模様ではなく文字、文なのではないかという説は学説になるまでもなかった。文字にしては類型がなさすぎたのだ。


ここで、少し話は飛ぶが現代の日本にも使われている印鑑の起源でもある封泥(ふうでい)について触れたい。

人類が農耕を始めた紀元前1万から紀元前3000年の頃、古代メソポタミアやシュメール文明では、農作物を倉庫で共同保管した際に自分のものがどれかわからなくなることがないよう、また、誰かが中身を抜いたりしていないことが証明できるように、紐と粘土で封をして、印章や円筒印章と呼ばれるもので割符をした。封がされていれば中身が無事で、封と一致する印を持つものにその所有権を認めたのではないかと考えられている。


そしてもう一つ参照したほうがいいのは日本と同じ海洋民族で北欧バイキングを起源に持つ英国ハイランド地方の服の編み方や模様である。フィッシャーマンズセーターやタータンチェック(クラン・タータン)は、氏族(クラン)の模様が編み込まれ、家紋のようにその模様からどの氏族か誰の親類縁者かがわかるようになっているという。海難や戦死など身元の特定も困難になってしまうような不慮の事故がおきても身元を特定できる工夫でもある。


縄文期、大型の土器を素焼きで焼き上げるには、大量の野積みの薪が必要になったはずで、そのような大規模な野焼きをするのに土器を少量だけ焼くということもなかったはずだ。陶器の底面に銘を刻んでおくこともできなかった彼らは、その模様を窯印としたのではないか。土器と一緒に物を移動させてもそれがどこから来たかのか、どの氏族由来のものかを知ることができたはずだ。


デザインが広範囲に長期流行するためには機能性を欠いては実現しない。食料は土器だけでなく編みカゴなどにも保存していたはずで、これらのカゴの編み方と土器の模様を揃えることで割符にしたのではないか・・・。土器にその部族ごとの特徴的な模様をつけておくことで、あそこから食料を分けて貰ったから、お返ししなきゃ、そんな物々交換の助けにもなる。




「・・・で、実際のところ土器の模様ってなんなの?」


土器作りを教わっていた山葵わさびは、なんでこんな模様をつくけるのかに疑問をもち、 CPUのヒートシンクっぽいその凸凹は放熱のためかと、物知りなほのがさに聞いてみた。



「あん? なんのための文様かって? 適当だよ。適当。毎回違うわ。中に空気とか小石が入ってると焼くと割れるからな、ざらざらしてるもんで表面を擦るんだよ。乾きも早くなる。」


ほのがさのは縄で模様をつけるというより、荒縄で表面を擦るようにして土器をつくっている。一方、のごのねが黙々と創っている土器を見ると繊細だがしかし大胆な装飾がなされていた。


「焼き上がった時にどれが誰のだかはわからなくなるから印を付けることはあるけど、少なくとも俺とのごのねのは間違えようもないからな。」

ほのがさが、手元の作品を見比べながら自嘲気味に笑う。

「俺がつくってもすぐ割れちゃうから俺らの家にあるのはだいたいのごのね作だぞ?」


村のだれもが土器はつくれるが、長期に渡って残る土器を作れるのは村に数人も居ないらしく、村でいつも使われている土器はだいたいその達人の手によるものがより好みされるのだそうだ。



川底からとった粘土と違い、こちらではむき出しになった崖から粘土質の層を掘り出して使う。水分が少ないので、多少水を混ぜて練ってやる必要があるが整形は断然こちらのほうが楽で乾きも早い。表面に細かい装飾を施せるのも粘土の質が細かく形が崩れないからだ。浜の方の村でも湧き水が出る崖の層のところは粘土質に違いないから、浜に帰ったらそこから粘土を掘ってやってみよう。



「で、のごのね・・・、その表面のウズウズ何?」




「アリが登ってきても迷うように迷路つくってる・・・。」


縄文土器、やはりその模様は謎のままである。

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