第90話 呪具の秘密
「リーヴェル、此度の件本当に助かった」
「いえ、当然のことをしたまでです」
盗賊団のアジトを出て、陛下にお礼を言われた
その後、ここまでの経緯も話した
「ガディッシュ王子の判断は素晴らしい。それがなければ、我々はどうなっていたことか・・・」
「今は、国王と王女様共に療養中で王子が見守っています。もちろん、城の事も」
「うむ。いずれにせよ、王子には礼を言わねばなるまい。このままディーレスト王国に帰還するのも国王として恥というもの。一旦、引き返すぞ」
陛下の命でアースラーの城へ引き返すことになった
その道中
僕はシルクの背中に乗っていた
シーナさん、シュルスター、アリアさん、ジュリアナ姫は馬車で一緒だ
「いいなあ、ベル君。私もユニコーンに乗ってみたいわ」
「シーナには無理ね」
「姫様・・・?その意味が分からないのですが・・・」
シーナさんは、怖い目つきでジュリアナ姫を見つめる
「婚約者でもないのに、出しゃばるのはどうなのかってことよ」
「そ、そういう姫様だって!」
「何?私はお父様からベル君と結婚すればいいって話を持ち掛けられたの」
「でも、結局ベル君断ったんでしょ!?」
「断ったんじゃなくて、保留。まだ、ベル君は答えを見つけていないってこと。私はいつでも歓迎よ」
「むうう・・・」
悔しそうに頬を膨らますシーナさん
「シュルスターさん、さっきから浮かない顔をしてますけど・・・」
アリアさんがシュルスターに声を掛ける
「ああ、悪い。ちょっと考え事をしていてな・・・」
これは一人で考えても答えは見つからない
そう決めた半魔族は
念話を掛ける
『リーヴェル、シーナ、シルク、アリア、ジュリアナ姫。聞いてほしい話がある』
『陛下にはかけなくていいのか?』
『そうしたいけど、あの人何か大事なことをすっぽ抜かすからいまいち信用できないんだよなぁ・・・』
『半魔族のあなたに言われるのは癪ですけど、かけない方がいいでしょう』
『癪は余計だ』
『で、シュルスター。話って?』
『リーヴェル、あの呪具を持っていた男の動き覚えてるか?』
『うん、不自然な動きだった』
『お前が見たのはそれだろうが、俺はあの男がはっきりと口を動かして喋ってたのを覚えている』
『・・・ん?どういう事?』
『お前は俺たちが捕まった報せを聞いたのいつぐらいだ?』
『シュルスターに会う30分くらい前かな・・・』
『その30分の間で、あの男が劇的に変わると思うか?』
つまり、シュルスターは呪具自体があの男を操っていたと言いたいのか・・・
でも、それだと・・・
『僕も一つ気がかりなのがある。僕が地下牢に入れられてから君たちは出立した。その1時間後に、君たちは盗賊団に捕まった。それに、国王や王女の容態を操っていた公爵さえ城にいたんだ。その間にどうやって、盗賊団に知らせたんだ?』
『簡単じゃねえかよ。誰かが馬であそこまで行って知らせたんじゃねえのか?』
『それだと、王子や他の誰かに見られて異変を感じて止められていたはずだ』
『それもそうか・・・』
『じゃあ、アジトへ続く地下回廊があったとか』
『シーナさん、それはあり得ませんよ』
シルクがシーナさんの意見に物申す
『角で確認した結果、そのような回廊は存在しませんでした。むしろ、これは呪具が大きく関係していると私は思います』
呪具が関係している?
『どういうことか説明して』
ユニコーンはコクリと頷き静かに話し始める
『今から1500年前に魔法戦争という大きな戦いがありました。一歩間違えれば世界が滅ぶと言われたほど激しい戦いだったのです。戦っていたのは、人間と魔族でした』
『人間と魔族が・・・』
『それって、ベル君とシュルスターが戦ったみたいな感じ?』
『うーん、どうだろうな・・・』
『というか、世界が滅びかけたんだろ?俺とリーヴェルの戦いだったら、めちゃくちゃ優しい方じゃねえか』
『まあ、そういう事にしておきましょう。当然、魔族の方が圧倒的に有利でした。理由は皆さん聞かずともお分かりのはずです』
皆はうんうんと頷く
『そして、人間側はこのままでは滅ぼされてしまうと考え、魔族に勝つ策を練りました』
『たどり着いた答えが魔族の力に匹敵する呪具を作ることだった』
『そうです、それこそ何十万人という尊い命を犠牲にしてまで強大な力を持つ呪具を5000個作り上げたのです』
『5000個も作ったのか?』
『俺も初めて聞いたぜ』
『呪具を作り、戦いに使用した結果、人間が魔族に勝ったのです』
『なるほどね』
『なあ、シルク。素朴な疑問してもいいか?人間と魔族が戦った理由は何だ?』
『魔族が人間の土地を強奪しようと考えたからです』
『それを守るために人間たちも必死で戦った』
『そういうことです』
前世でも似たようなニュースが流れていたな
『でも、皮肉だね。呪具を作ったのが人間だったなんて』
『魔族は人間みたいな考えは持ってねえよ。何しろ、人間より上だって誇っている種族だからな』
確かに、インディルトがその例と思ってもいいかな
『シルク、もう一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな』
『どうぞ』
「呪具が自分の意思で動いたり喋ったりするのってあり得るのか?』
『普通に考えればあり得ませんね。でも、長い年月をかけて生気を吸い取り、そこから人間たちの能力を身に付けていったとしか考えられません』
『それは、呪具自体が学習してるってか?』
『そう考えるのが妥当でしょう』
AIみたいだな
『それと、今思い出しましたが呪具にはもう一つの力が備えられています。それは、呪具を持った者同士が意思疎通していることです』
『疎通・・・。という事は、今回の件は・・・』
「先ほども申し上げた通り、呪具が関係していると・・・』
陛下一行が出立したときから
呪具の疎通が行われていた
タイミングよく盗賊団が現れ一行は捕らえられた
やはり、盗賊団と城にいる何者かが手を組んでいた
そして、城にはもう一人呪具を持っている
となれば、今度は王子たちがピンチだ
どうも、茂美坂 時治です
今回は呪具に関する回です




