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第91話 もう一人の呪具所持者

リーヴェル達が王城へと向かっている頃


「ガティッシュ、リーヴェルとやらはどこへ行ったのだ?」

国王レイティッシュは若き王子に優しく問いかける

「盗賊団に捕らわれた仲間たちを助けに行きました」

「一人で行かせたのか!?」

「幸い、ディーレスト騎士団の斥候が報せに来てくれましたので、その人と向かって懸命に戦っているはずです」

「お前、この国の騎士団には協力を申し出なかったのか?」

「彼はSSSランクの冒険者ですよ?」

「単騎で戦えばいいってものじゃない!いいか、単騎と集団での戦法は大きく違ってくるぞ。確かに世界最強の冒険者であることは認めるが、まだ成熟していない大人だぞ!あまりにも危険すぎるとは思わないのか?」

「それは・・・」

「ちゃんと考えてなかっただろ。お前の判断には正解という部分もあるが、まだまだ先の事や危険性を考えることにまでは至っていない」

「申し訳ありません」

「まあ、今更どうにかできるという事ではないが、今はとにかく無事を祈るのみだ」


厳しくも優しく接する国王


廊下から慌ただしい足音が響く


「陛下!」

ボディビルダーのような筋肉を持った騎士の鎧をまとった男が入ってくる


「おい、グフカ!父上はまだ病み上がりだぞ。お前は騎士団長なんだから、もう少しゆっくり入ってこい」

「失礼しました、ガティッシュ王子殿下」


しかし、王子はこの男の異変に気付いていた

顔色が明らかに真っ青

それに入ってきた時の動きも妙だった


普通歩くなら腕を振って歩くが

今のグフカの歩き方にはそれはなかった

足を震わせながら


とにかく、様子を見よう


「それで、何か用か?」

「陛下が元に戻られたという報せを聞いてこちらに参った次第です」

「なるほど。で、気になってたんだが、鎧に飛び散っている赤いものは何だ?」

「ああ、これは訓練でちょっと・・・」

「ちょっと・・・、何だ?」


二人のやり取りに違和感を感じた国王

だが、今は息子のやり取りで何が分かるか気になる

黙っておこう


「ですから・・・」

「お前、人を殺しただろ?」


ギクッとする騎士団長


王子は冷静に話を続ける

「怪我をさせまして、とかなら普通に言えるはずだ。でも、今の会話ではその言葉は一切出ていない。お前が動揺しているのもはっきりわかる。いや、お前の意志で行動していないのが正確か?」

「ガティッシュ、どういう事だ?」


「父上は、お気づきになりませんか?グフカの顔色といい、動きといい、どれを見ても不自然すぎる。それに、あいつから感じる異様なオーラ。完全に奴のオーラじゃない」

「それなら私も感じる。だが、おかしいとも思わないか?ここに騎士団長についてくるはずの部下たちがいないことも」


言われてみれば


小さいころ

父上が病に伏せられて、何とか一命を取り留めた時、グフカとその部下たちが見舞いに来てくれたことを思い出す


今はその光景が見えない


「グフカ、正直に言ってくれ」

「・・・・・・」

「何故、黙るんだ!?」

「・・・フフフ」

「何がおかしいんだ?」


「ハーハハハハハ!今更そのことに気付くなんざ、王子も国王も判断が鈍ったか!?」

「グフカ、お前・・・」

「ああ、確かに殺したよ。死んだのは、ディーレスト王国騎士団の斥候だ」


リーヴェルと盗賊団のところに向かったあの斥候か?

つまり、リーヴェル達は無事にディーレスト国王や姫君たちを助けた


協力を要請するためにここに来て、騎士団長にお願いしたが殺された・・・


「グフカ、何故お前は罪のない人を殺したんだ!?」

「俺たちの計画に邪魔が入らないようにするため」

「計画・・・だと?」

「まさか、お前は盗賊団とつながっていたのか!?」

「ご明察です、国王陛下。こいつを使ってね」


二人に見せたのは剣だ


「その剣が何だというんだ?」

「二人は知らないのか。知ってると思ってたんだけどな・・・」

「もったいぶらずに答えろ!」

「こいつはな、呪具だ」

「呪具・・・。お前、なんてものに触れたんだ!?」

「ち、父上・・・?」

「その剣、いや呪具は命と引き換えに強大な力をもたらす危険な代物だぞ!」

「知ってるさ、それくらい。それよりも、自分たちの立場を心配したほうがいいんじゃないか?」


グフカは指を鳴らし

部屋の窓ガラスが割れ

数人の騎士が二人に剣を向ける


「グフカ、これはどういう事だ?」             

「はぁ、この状況でも分からないってのか?ホント、鈍ったな、陛下」

「貴様・・・」

「簡単だよ、国王の座を俺に譲れって言ってるんだ」

「な!?」

「驚くことないだろ?」

「反逆者にそんな事できるわけないだろうが!」

「その反逆者が今ここであんたを殺そうとしてるんだが」

「ほ、本気で言ってるのか・・・?」


殺すという言葉で小刻みに震える二人

「今ここで俺に王座を譲ると言えば、命だけは見逃してやる。断れば、あんたと王子、それに王女にも死んでもらう。あ、一応言っておくけど、アンタらを助ける騎士や使用人たちも全員殺した。今ここにいるのは俺に従ってくれている騎士と他の仲間だけだから、今更助けを呼ぼうにも無駄だ」


何という事だ

この男は無慈悲に虐殺していったのか!?


誰も私を助けてくれない

もう、終わりだ・・・


「さあ、どうする?」

「・・・わ、分かった。王座をお前に譲ろう」

「ち、父上!!よろしいのですか!?」

「ため口で言われるのは気に食わないな」


騎士たちはさらに詰め寄る

「お、王座をあなたにお譲りしますので、何卒命だけは!!」

その場で土下座をする


「ふん、やればできるじゃないか。それでいい」


悔し涙を流す二人


しかし、その時間も短く

「3人まとめて地下牢へ入れておけ」


国王たちは抵抗することなく地下牢へ入れられた

どうも、茂美坂 時治です

今回は王子たちの回です

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