第81話 暴れ馬
9月2日
国王陛下一行はアースラー王国王都 イェルグに着いた
ディーレスト王国とは違って、畑が多く点在し
農業が盛んだと一目でわかる
その分、野菜の値段も銅貨2~3枚で買えるほど安く手に入る
そして、一際目立つのが王城だ
シーナさんが言っていた通り
海にそびえたつ大理石でできた城
馬車の中からでも磯の香りがしてくる
その近くの市場ではとれたての魚介類がずらりと
どれもおいしそうだ
王城に到着
だけど
「アリア、行くぞ」
「はい」
騎士団長に呼ばれたのはアリアさんだけ
「あの、僕たちは?」
「お前たちはここで待機だ」
「そんな、私でもダメなの?」
「シーナ嬢、あなたは今冒険者として護衛を任されている身。それに、貴族としての権利も通用しません。今は我慢してください」
ぱたんとドアを閉められる
「はぁあ、つまんないの」
「シーナさん、そういうこと言わない」
「だって、護衛という事は城の中まで務めるべきじゃないの?」
「いや、道中の護衛だけという事も考えられる」
「それって、つまり・・・」
「依頼の詳細はきちんと説明できていなかったという事になるね」
「もう!!なんっで、陛下はいつもいつも大事な事ばかり抜かすの!?陛下がいないから言うけどね、本当に腹立つわ!」
「僕も本人に聞いてみたいよ。でも『癖だから許せ』とか言いそうだ」
「うわぁ、それこそ質が悪いわ・・・」
シュルスターはというと
ずっと馬車の中で寝ている
その一方で
「すぅ・・・すぅ・・・」
エルフは僕の膝の上で寝ている
膝枕されている・・・
「この二人、あんなに馬車が揺れていたのによく寝れるわね」
「本当だね。僕だったら、まともに眠れないよ」
しかし、ずっと膝枕しているせいか
そろそろ足が限界・・・
起きてくれ・・・
少し動いても
がっちりと掴まれて何もできない
「ヒヒーーーン!!」
馬が突然甲高い声で鳴き出す
「何だ!?」
エルフを起こさないように馬車から出ると
鳴いた馬よりも一回り大きい黒い馬があたりを走り回っている
その後ろに止めようとする数人の男たち
「クソッ、待て!!」
「だめだ、全然追い付かない」
馬は方向転換をして
こちらに突進してくる
「おい、そこの赤髪の子。逃げろ!」
僕は逃げないよ
距離はだんだんと縮んでいく
50m
・
・
・
30m
・
・
・
20mで魔力を少し放出して威圧する
馬は威圧に気付いたのか蹄で急ブレーキをかける
完全に止まったのは、距離が3mほどだ
「す、すげえ」
「何者だ、あの子?」
馬を見ると、少し震えている
ちょっと怖かったのかな?
放出をやめても
おとなしいままだ
そっと近づいても
微動だにしない
まだ怯えているのかな?
「大丈夫、ただ触るだけだよ」
左頬に優しく手を添える
あったかい
優しく撫でると
「ブルルッ・・・」
落ち着いたかのように低い鳴き声を出す
「よし、いい子だ」
「ありがとう、助かったぜ」
男の人が僕に感謝を告げる
「いえ、どういたしまして。それよりも、この馬どうしたんですか?」
「こいつはな、暴れ馬の異名を持っているんだよ」
「暴れ馬ですか・・・」
「ああ、食事や便を出すときは大人しいんだけどよ、それ以外の時はとにかく暴れ回るんで、落ち着かせようにも全く落ち着かないんだ。そのせいで、何人かが足や手の骨を折る大けがとかをしたんだ。俺も一度、肋骨何本か折れた経験がある」
気性が荒い馬なのか
「だけど、お前さんの圧でこいつはピタッと止まりやがった。俺たちには、お前さんほどの魔力は出せねえけどな・・・」
「そうだ!君、この馬を手懐けてくれないかな?」
もう一人の男性が僕に声を掛ける
「僕が・・・ですか?」
「うん、実際君の力なしじゃずっと追いかけっこしてたよ。だから、完全にとまでは言わない。ある程度落ち着かせるくらいまでお願いしたいんだ」
「そいつはいい案だぜ。なあ、頼まれてくれないか?お前さん、国王陛下の護衛で来たんだろ?滞在している間だけでいい」
まあ、今のところ忙しいわけでもないし
暇だったから
「分かりました」
「本当かい?」
「よっしゃ、感謝するぜ」
「と、私たちの自己紹介がまだだったね。私は、調教師のハールト・チルロスだ」
「同じく調教師のマッディ・ロレンティだ。で、お前さんは?」
「ディーレスト王国で冒険者をしているリーヴェル・ジェスナーです」
「リーヴェル・ジェスナーか。初めて聞く名だな」
どうやら、アースラー王国では僕の事は知られていないようだ
まあ、知られたら面倒な事になりそうだから
今としては結果オーライ・・・かな
どうも、茂美坂 時治です
異世界の話でありがちな展開です




