第68話 フリーマーケット 前編
6月10日
ザーク地区でのフリーマーケットが始まった
シーナさんや公爵様、領民の皆さんの協力の下で無事に開催することが出来た
王都中から、数え切れないほどの人が押し寄せる
「すごいな、こりゃ」
「ザーク地区とは一味違う賑わいね」
最初は、どれほどの人が来てくれるのか不安だったが
むぎゅむぎゅなほどの人が集まっていた
「このお皿可愛いわね。一皿いくら?」
「銅貨2枚です」
「兄ちゃん、このバケツ欲しいんだけど、値段はいくらなんだい?」
「銅貨4枚です」
「言い値じゃないか、買った」
「ありがとうございます!」
周りの店からも次々と買う人が続出
中にはこんな店も
「いらっしゃい!こちらでは、我が養豚場の豚肉を使った串巻を販売しています。一串銅貨1枚です」
「その量で銅貨1枚!?」
串が折れそうなほどぎっしりと巻かれた肉
それで銅貨1枚、日本円で約100円は確かに安い
その店からずーっと、長蛇の列が続いている
それほど買い求めたい人がいるんだ
実は、この店の提案も僕がやった
というのも
開催される2日前
「あの、リーヴェル様。お願いしたいことがあるのですが・・・」
領民の一人で、養豚場を営んでいるセドリックさんが僕を尋ねてきた
「お願いって、何でしょうか?」
「実を申しますと、うちの豚肉は売ろうにも買ってくれる人がいなくて、このままでは経営が成り立たなくなって、養豚場をたたむことになると危機感を抱いていまして・・・。それで、リーヴェル様が提案されたイベントで、うちの豚肉も販売させていただきたいんです」
「ふむ、肉の販売ですか。確かに悪くはない話ですね。ですが、それは生の肉での販売という事でしょうか?」
「そう考えていますけど・・・、ダメですか?」
「ダメという訳ではないんですが、生のまま販売するとなると、肉が傷みやすくなって、豚肉本来の味が楽しめなくなると同時に、病気に罹る可能性も高くなります」
「そんな・・・」
「でも、別に生のままで売るという事にこだわらなくてもいいんですよ」
「と、仰いますと?」
「肉の味を最大限に味わえるのが、焼いた肉です。つまり、焼き肉をお客さんに提供するのはどうでしょう?」
「焼いた肉。全然思いつかなかった。しかし・・・」
「何か問題でもあるんですか?」
「焼くにしても、何で焼けばいいんですか?」
「え?そこからですか?」
「うちの家は、女房に任せっきりで。家事の事はまったくといっていいほど手付かずです」
あらら、これはまた手強い
「でも、2年に一回は養豚場の屋根を交換するんです」
「その素材は何ですか?」
「鉄ですね」
「・・・」
「ど、どうかされました?」
「その鉄は、今どこにあります?」
「うちの家の裏に置いたままですけど」
「それを使いましょう」
「ええ!?」
「火は、太陽の熱を利用しましょうか」
「え、ええ!?」
セドリックさんの驚きをよそに僕は頭の中で企画を進めていく
そして、それを紙に書き留めていく
「こんな感じでどうです?」
「す、凄いですね!これは、是非ともやらせてください。あ、でも。もう店の応募は締め切ったんですよね・・・。すみません、何か勢いに乗ってしまって・・・」
「他の場所でも可能か聞いてみますよ」
「ですよね・・・。って、え・・・?」
「2つの開催場所のどこかに販売スぺースを確保できないか聞いてみますよ」
「え、え?い、いいんですか・・・?」
「だって、このイベントで肉の販売、しかも食べられるとなったらお客さんはたくさん来るはずです。そして、セドリックさんの肉の魅力を存分にアピールできる絶好の機会です。どうです?」
「いい・・・、いいですね!ぜひ、お願いします!」
というやり取りもあって
公爵様や領民の人たちにも相談したところ
快諾してくれた
「あ、リーヴェル様!いらっしゃませ!」
「すごく並んでますね」
「もう、おかげさまで!開店と同時にお客さんが殺到して、もう猫の手も借りたいくらいですよ。あ、よかったら食べていってください」
「勿論です。じゃあ、2本お願いします」
「はい、銅貨2枚です」
「シーナさん。お待たせ」
「わあ、おいしそうなお肉ね。私も食べていいの?」
「そうじゃなかったら、2本は買わないよ」
「もう、ベル君たら・・・」
ちょっと赤くなるシーナさん
「それじゃ、いただきます」
焼きたての肉を一口
「うますぎる!」
「うん!この肉、サイコー!」
30秒ほどでぺろりと完食
この肉は、売れる!
僕はそう確信している
どうも、茂美坂 時治です
フリーマーケット始まりました




