第49話 制裁
「さあ、洗いざらい話してもらうかな?」
僕がカシュトに聞いても無口のまま
「何も話さないというなら僕か校長先生が話そうか?」
「・・・」
「君はそうやって、無口で筋を通そうというんだね。貴族の息子として恥ずかしくないのか?」
「う、うるさい・・・」
「なんだ、ちゃんと喋れるんじゃないか」
「黙れ!平民ごときが俺に気安く話しかけるんじゃない!」
「今はそれを言う事じゃないよ?」
それに、今はカシュトの家族だって来てるはずだ
「フォフォ、では儂が話そうかの?」
闘技場にある拡声器から校長先生の声が聞こえる
「ユーリ先生はこの授業の前に、儂に確認してほしいことがあると頼んできたのじゃ。それは、ジェンク先生は本当に実力で負けたのかと。ユーリ先生は、君たちの魔法の成績を一目でジェンク先生には勝てないと見抜いておった。何故なら、ジェンク先生はSランクに匹敵するほどの実力者じゃ。で、急いでジェンク先生が療養している病院に行って来たんじゃが、その話になると体が震えるような状態じゃった。よほどのトラウマが刻まれいてたのかと確信した。少し落ち着かせた後に、全て話してくれたぞ」
その内容を要約しよう
ジェック先生がカシュト達に目を付けられたのは、彼らが入学して間もないころ
その当時は、まだ罵声を浴びせられるほどであまり気にすることでもなかったそうだ
しかし、初めての実戦の授業の前に事件が起きた
先生が闘技場へ向かう際、カシュトの仲間たち10人が一斉に襲いかかってきて、顔以外全て殴られたり蹴られたりの暴力をふるった
全身あざだらけのまま授業に入って、痛みのせいで魔法の詠唱も唱えられず、生徒たちにやられる一方だったという
そのせいで、Sクラスの生徒たちはジェンク先生よりも強いと思い込んでしまった
2週間ほどこのような状態が続き
ジェンク先生は肉体的にも精神的にも疲労困憊
それから半年ほどの療養を余儀なくされた
「な、何てことですの!?カシュト、あなたはなんてことをなさったんですの?」
事の顛末を聞いたエリエルは、怒りをあらわにする
「俺は貴族なんだから、平民出身のお前らよりも上というのが絶対条件に決まってるだろ!」
とんでもない発言をするカシュト
エリエルも怒りよりも呆れた顔をする
「カシュト、それは大間違いだ」
僕は続けて言う
「この学校では、平民や貴族なんて関係ない。みんなが平等でいることが前提なんだ。君の行動は、私利私欲に過ぎない。それに、仲間を使ってジェンク先生を嬲るのは卑怯だ」
「卑怯だと!?」
「卑怯以外何だというんだ?相手をボロボロにしたまま戦うのは卑怯極まりない。まともに戦って、勝敗を決める。それが実戦の根本的な目的だ。君のやり方は間違ってる」
「そうだ、お前のやったことは我がライトシュタイン家、いや、ディーレスト王国の恥だ」
後ろから男の声がした
カイゼル髭を生やした男性
この人が、カシュトの父親なのか?
というか、いつの間に来てたんだ?
「親父、アンタは言ったよな?貴族は平民よりも立場が上なんだって」
「ああ、それが?」
「つまり、アンタも俺と同類じゃないのか?」
その言葉にカチンときたのか、カシュトの頬を拳で殴った
クリーンヒットして、カシュトは地面に転がる
「な・・・、何で・・・?」
「この大バカ者が!!確かに、先ほどの事を言ったのは認めよう。だが、私は立場を利用してお前のような私利私欲の行動をしたことは無いぞ!」
「・・・!?」
カシュトは驚きの顔を隠せなかった
「貴族は何をしても許されるという訳でもない!ましてや、平民を嬲り殺すようなことも絶対にしない。いいか、カシュト!貴族とは、国王陛下から与えられた領地、そこに住む民たちを守る責務がある。そして、平民たちからも信頼を得る。それこそが、貴族としての望ましい姿だ。だが、お前はそれに相応しいとは到底思わない。正直、失望した」
その言葉にカシュトはショックを受ける
「カシュト、この場にて命ずる。お前とは、ライトシュタイン家の縁を切らせてもらう。金輪際、我が領地を踏むことは絶対に許さん!!」
「ま、待てよ、親父!」
「気安く父呼ばわりするな!」
「もう二度と、こんなことしないから頼む!!俺にもう一度チャンスを!!」
「甘ったれるな!!これは、決定事項だ!もう、お前の事も知らん!!」
「そ、そんな・・・」
ガクッと落ち込むカシュト
厳しいようだけど、自業自得としか言いようがない
父親が僕のところまで来て
「すまない、うちのバカ息子、いや、もう息子ではないが、迷惑をかけてしまった」
と頭を下げる
「いえ、僕の方こそ報告が遅れてしまって」
「いや、あなたが謝ることではない。正直私も辛いが、これも定めだと思っている」
「でも、跡継ぎの問題は?」
「心配ない。カシュトは元次男。長男がいるから、跡継ぎの事は問題ない。あ、紹介が遅れてしまったな。私は、ジーク・ラインシュタインだ。貴族といっても、準貴族だ」
「準貴族・・・?」
「準貴族とは、爵位を持った人の次の順になる貴族の事だ。貴族には、証となるミドルネーム「フォン」がつくが、準貴族にはそれを付けることは出来ない決まりになっている。私は、ムーリット公爵の領地でザーク地区を治める準貴族でもある。公爵様の領地はいくつかあるからね」
「え?一か所だけじゃないんですか?」
「先生はご存じないのか?貴族が治める領地は、国王陛下が決めるんだ。実績、信頼性など様々な要素を見極めて、この爵位を持つ者にはこの領地が相応しいと判断される。そして、領地が決まったら、爵位を持った人は、準貴族にも領地を割り振る。もちろん、決まったことはきちんと最後までやり通す。それが掟なんだ」
貴族の人って、思った以上に大変なんだな
そう思っていた時
何やら、強力な魔力を感じた
そして、確実にこっちに近づいてくる
でも、初めての感じる魔力でもなかった
この感じ・・・
まさか・・・
どうも、茂美坂 時治です
カシュト、無残です




