第33話 ドラゴンの記憶と魔族との戦い
「マスター、こっちの殲滅は終わりやしたぜ」
「ああ、ばっちりな」
「主、怪我はねぇか?」
魔物の殲滅が終わった
残るはドラゴンに乗っている男のみ
「・・・・・・ォォォォォォオオオオオオオオ!!」
男の勇ましい声が近づいてくる
どうやら、状況を把握し僕たちを殺そうと来たみたいだ
だけど、こっちも応戦する
「ぶっ飛ばせ!」
男がドラゴンに命令し、ドラゴンは大きく翼を広げ勢いよくバサッと動かし突風を起こす
建物のガラスが割れたり、一部のレンガが剥がれたりする
「ぐぅっ!!」
僕は飛ばされないように何とか堪える
「何てパワーだ・・・」
ドラゴンは翼を動かし続ける
このままではジリ貧になってしまう
「どうした?さっきまでの余裕はどこに行ったんだ?お前はそこでドラゴンの風に吹かれてな。俺は王宮に行って王を殺す。エドラー、休むなよ」
「グルッ!」
そう言って男はヒュンと王宮へ一直線に飛んでいく
「ま、待て!」
動こうにも突風で前にも動けない
『人間の子よ、我の声を聴け』
突然、頭の中で誰かの声がする
「だ、誰・・・?」
『目の前にいるではないか』
「ま、まさか・・・」
話しかけているのは他でもないエドラーというドラゴンだった
「僕にどうしてほしいんだ?」
『我を助けてくれ』
「その前に、翼を動かさないでくれないか?」
『それは無理だ。あの男の命令に反すれば、我は呪い殺される。我は、あの男に禁術をかけられたのだ。それだけではない・・・』
頭にドラゴンの意識が流れてくる
それは、ドラゴンの過去そのものの映像だった
――――――――――――――――――――――
我は3年ほど前、あの男に捕えられてしまった
「よし、ドラゴンの捕獲成功!」
男が喜びの声を上げる
「グルァァアア!」
我は必死に抵抗するが
「五月蠅い!」
男は目にもとまらぬ速さで、我の翼を切り裂いていく
「グッ・・・、グルォォオアアアアア!」
強烈な痛みが襲ってきた
「フン、これで飛べることもできまい」
ニヤリとした顔
しかし、これはまだほんの序章に過ぎなかった
我が捕らわれた後も、男の拷問が続いた
「オラ、さっさと食いな」
出された食事は、腐った肉と同胞であるドラゴンの翼や肉だった
そんなことが出来るはずがなかった
腐った肉ならともかく、ドラゴンの肉を食うなど共食いそのものではないかと思い拒んだ
「ほう、食わねぇとはいい度胸してんじゃねぇか」
すると、男は鞭で切り裂かれた翼にバチンと叩く
「グルォォオアアアアア!!」
「こんな程度で鳴くな!食わねぇとこの鞭地獄が続くぜ!」
それでも我は、抵抗し続けた
男の鞭は止まらかなった
「チッ、これでも食わないとはな。ならいっそ、翼でも切り落としてただのトカゲにしてやろうか?」
男は100人ほどの男たちを集めてきた
しかし、よく見るとその姿は魔族だった
そう、彼もまた魔族の一員だったのだ
「お前ら、その立派な大剣で奴の翼を斬り落とせ」
「「「了解!!!」」」
魔族たちが一斉に襲いかかる
翼を斬り落とされるのだけは御免だった
だから我は、涙を流しながら出された肉を食った
情けない話だが、ドラゴンの肉は美味かった・・・
「なんだ、ちゃんと食えるじゃねぇか。じゃあ、その調子でバンバン食ってくれよな」
なんとか、危機は免れた
でも、拷問はまだ終わらなかった
今度は、鎖を外しても逃げられないように我の足の腱を斬ったのだ
激しい痛みと共に動くことさえできなかった
「いいか、お前は俺のものだ。逆らうようなら、その翼斬り落としてやるぜ」
命令を聞くしかできなかった
その後もドラゴンの肉を食わされたり、我の皮膚を剥いだり、傷だらけの状態で動かされたりと3年の拷問が続いた
正直に言えば、もう死にたいと思っていた
それでも生きていたのは誰かに助けを求めて、この魔族に裁きを入れてほしいと願っていたからかもしれない
そんなある日
「これからお前は俺に絶対服従する術を掛ける。逆らえば死が待ち受ける術だ。これでお前は二度と逃げることも死ぬ事すらできない。永遠に俺に従うのだ」
魔族から闇魔法の一種 死の服従を掛けられた
それからも我は魔族に従い続け、今に至るのだ
―――――――――――――――――――――――――
ここまでが、エドラーの記憶だった
自然とある感情がふつふつと湧き上がる
言うまでもない
怒りだ
「そんな奴、絶対に許せない」
体をフルフル震わせながら、ドラゴンに告げる
「今から、君に掛けられた死の服従を解呪する」
『なっ!?』
エドラーは驚いた表情をする
『む、無理だぞ。魔族の魔力量は人間に5倍以上を持っているのだぞ。解呪できたとしても、お前の身が持つかどうか・・・』
「それでも、絶対に助ける!」
本当に大丈夫なのかというような目をしてくる
僕はニコッと笑う
まずは、解析
掛けられた魔力量は8000といったところか
「この程度なら問題ないな」
『い、今・・・なんと言ったのだ・・・?」
「もっと多いのかと思ったけど、これくらいなら大丈夫だ」
『お前は、本当に我を救ってくれるのか?』
「心配し過ぎだ。僕を信じてくれ」
エドラーの目をしっかり見つめる
『・・・分かった。お前の言葉を信じよう・・・』
「ありがとう」
そして、僕は光魔法 解呪を使う
頼む、うまくいってくれ
パリンと死の服従が解けた音が聞こえた
「翼を止めてみて」
エドラーは翼を止める
・・・・・・
何も起こらない
『ほ・・・、本当に解呪・・・できたのだな・・・』
「うん、成功だ」
『か、感謝する・・・』
エドラーは目から涙を流す
「さて、エドラーはここで待っていてくれ。僕はあの魔族を倒しに行く」
『ま、待て。我も一緒に連れて行ってくれ・・・』
「何を言ってるんだ?君の体はボロボロなんだぞ。僕はそんな状態で戦うのは危険だと思うぞ」
『お前が言ってることはもっともだ。しかし、我はあの魔族に復讐したいのだ。我を傷つけた報いをたっぷり受けさせたいのだ』
「エドラー・・・」
『だから、頼む。我をお前のパートナーにさせてくれ』
「それって・・・」
『そう、我と本契約を結んでほしいのだ』
「本当に僕でいいの?」
『もちろんだ、我はお前と共に戦いたいのだ』
ボロボロの状態でも必死に話すエドラー
目は本気だった
ここでもダメだと言っても引き下がるようなドラゴンではないと思った
ならば、エドラーの言う通りにした方がいいだろう
「分かった。君と本契約を結ぶ」
『感謝する』
「ただし、戦うとしても絶対に無理はするな。それだけは約束してくれ」
『了解した』
「じゃあ、いくぞ」
血で書いた魔法陣にエドラーを誘導
そして、そこに魔力を注ぐ
この眩しい光も慣れてきたな
光が収束すると
燃えるような赤い皮膚をしたエドラーの姿が
これが本来の姿か
「我と本契約していただき、ありがとうございます。我は、ドラゴンの長であるエドラーです」
「ど、ドラゴンの長?」
聞いてないぞ、そんな事
すると、多方面から次々とドラゴンが集まってくる
「長、探しましたよ」
「どうしたんですか、そんなボロボロで。まさか、そこの人間に何かされたんじゃ・・・」
ドラゴンたちは僕をギロリと睨む
「待て、彼は我を救ってくださった恩人でマスターでもあらせられるお方だ」
その言葉を聞いてドラゴンたちは頭を下げる
「失礼しました」
「先ほどの無礼な言動お許しください」
「いいよ、それよりも今の状況を知った方がいいだろう」
僕は事情を説明
「なるほど、ということはその魔族を殺せばいいんですね?」
「いや、殺すとは言っていない。あくまで捕獲だ」
「捕獲・・・ですか」
「不満なのか?」
「そんな奴はすぐに葬り去るべきですよ」
「最後まで話を聞いてくれ。捕えた後、エドラーに任せる」
「わ、我にですか?」
「君は契約する前に言ってたじゃないか。あの魔族に復讐したいと。それとも、したくないのかな?」
「したいに決まってるじゃありませんか。我の体と心を傷つけた報い100倍にして返してやります」
「その意気だ」
みんなの同意を得て
魔族が向かっている王宮へと急ぐ
「行くぞ!」
「「「「「おうっ!!!」」」」」
「マスター、我の背中に乗ってください」
「いや、エドラーは怪我してるだろ。他のドラゴンと同じスピードで飛べるのか?」
「・・・それは」
「君は、この戦いにおいては最後の切り札なんだ。それが最初からへばってしまっては元も子もない。だから、魔族を捕えた後に存分に復讐するんだ」
「わかりました」
「よろしい」
「なら、私の背中に乗ってください」
女声のドラゴンが声を掛けてくる
「わかった」
バサッバサッと空に浮かぶ
「随分高いな」
「怖いですか?」
「いや、大丈夫だ。それじゃ、出発!」
ドラゴンたちと一緒に飛ぶ
「見えた」
数秒で魔族の姿が
「なっ、馬鹿な!?貴様はエドラーと戦っていたはずだ。何故ここにいる?それに、これだけのドラゴンは一体?」
「知りたいか?」
「人間風情が調子に乗るなよ。貴様を殺した後、こいつらもエドラーと一緒の生活を送らせてやるぜ」
その言葉にカチンとくる
「エドラーの苦しみを知らないんだな」
「何?」
「お前は、絶対に許さない」
「それを言ってどうするというんだ?お前ごとき人間が魔族である俺を倒せるはずがないんだ。第一に、俺があいつに掛けた死の服従は人間では絶対に解けないんだからな」
「その魔法解いたんだけど」
「そうかそうか、解いたのか・・・って何だと!!!???」
「解いて、僕と本契約したんだ」
「う・・・、嘘だ。俺よりも上回る魔力量だと言うのか?あり得ない」
「嘘かどうかはお前を捕えてからだな」
「たとえそれがまぐれだったとしても、俺を捕まえることは出来ないぞ」
ここで、魔族の魔力量を解析
「ふむ、シュルスターという名前なんだな。そして、魔力量は20000か。大したことないな」
「な、大したことない・・・だと?」
「魔族といっても弱小レベルなんじゃないか?」
「おのれ、俺を侮辱したな。後悔させてやる」
すると、人間の姿をした魔族は変装を解除
その姿は禍々しい姿へと変貌する
魔力の質も禍々しい
だが
「それでも大したことのない質といい、魔力量だね」
「だったら、俺を捕まえてみろ」
素早い動きで周囲を動く魔族
だけど、僕からしたら動きが遅く見える
どこから襲ってくるかも一目でわかるくらいだ
「死ねえええぇええ!!!」
後ろから襲ってくるが、気配が丸出しだ
これじゃ、自分から殺してくださいといっているようなものだ
だから加減して、肘で鳩尾を当てる
クリーンヒットして
「ぐはっ!」
魔族はもだえる
「ばかな・・・、俺の動きが・・・分かったというのか・・・?」
「気配が見え見えなんだよ」
「ならば、貴様の・・・本気見せてみろや」
挑発だろうが、ここはあえて乗ろう
「全魔力開放」
今まで抑えていた魔力量をすべて開放する
「な、何だ・・・。この圧は・・・?それに、この・・・魔力量・・・尋常じゃない・・・。貴様、本当に・・・人間・・・なのか?」
魔族は怯えていた。それに失禁しているではないか
「魔族のくせに失禁なんて情けないな」
「う、五月蠅い・・・」
「じゃ、お望み通り捕まえてやるよ」
魔族に飛びかかろうとした瞬間
ゾクッ
とおぞましいほどの圧を感じた
どこから来ている?
「クックックッ。どうやら、来てくださったようだ」
「何が・・・」
「この気配は魔王様だ」
「ま、魔王だと」
「これでお前ら人類は終わりだぜ。ヒャーッハッハッハッ!!」
高々と笑う魔族
後ろを見ると魔王の眷属と思われる羽の生えたゴブリン2匹が近づいてくる
僕を捕えるのかと思いきや、素通り
「え?」
2匹が捕らえたのは魔族の方だった
どうも、茂美坂 時治です
今回はかなり長い話になりました




