第26話 祝いの席にて
その夜、ケリアルさんの家に呼ばれる
「では、ゲッチル完売を祝して乾杯!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
まずは酒を一杯飲む
うん、飲めるってなんだかうれしい
「いやぁ、リーヴェル。おめぇのおかげで俺の店が大繁盛だ。それに、妻と娘が帰ってきてくれた。もう、夢みてぇなもんだ」
「僕も手伝えてよかったです」
「リーヴェルさん、本当にありがとうございます。主人のためにゲッチルをこんなに活用できる方法を見つけるなんて」
「いえ、たまたまですよ」
「また、忙しくなったら、手伝ってくれますか?」
「そうしたいのは山々なんですが、僕は冒険者なのでそう上手くは・・・」
「・・・あ、ごめんなさい」
「お気になさらないでください」
その横でシーナさんは僕の火酒を見て
「ねぇ、これ美味しいの?」
「この火酒?飲んでみる?」
「私、お酒飲んだことないからわかんないな・・・」
「じゃぁ、このビールはどうだ?リーヴェルの火酒よりかはきつくないぜ」
「その割には、随分顔が赤いじゃないですか」
そう、乾杯の時ケリアルさんは僕の火酒をグイっと一気飲みしていた
加減を知らないのかな?
シーナさんはグラスに入ったビールの一口飲む
「に、苦い・・・」
「酒に慣れてない人はそう言うよね」
「えい!!」
「むぐっ!?」
いきなりシーナさんが飲んだビールを飲まされる
「な、何するんだよ!?」
「あ~~、なぁに~ってぇ~、り~~えるくんの~か~お~が~、むかついたから~~」
「これは、もしや・・・」
たった一口で、もう酔っぱらったのか?
「エンチェさん・・・」
「ああ、これは完全に酔っぱらってますね。それに、主人も」
「へ?」
「おい~、えんひぇ~~~・・・、もっろ~、しぁけ~~、もっれこ~~い・・・」
「あちゃ~・・・」
あの一気飲みが効きすぎたみたいだな
乾杯から5分足らずでもうべろんべろん状態の2人
この2人に酒は飲まさない方がいいな
でも、ケリアルさんは飲むペースを間違えなかったら、もう少し付き合えるかも・・・
2人は机に突っ伏して眠ってしまう
「何かごめんなさい。主人の祝いのはずなのに・・・」
「よほど、嬉しかったんだと思いますよ。あなたたちが帰ってきてくれたことに」
「そうですね」
「ところで・・・ルーリさんはどうして僕をずっと見てるんですか?」
一口食べるなり、ちらっと僕を見るのを繰り返していて、こっちが食べづらいし飲みづらい
「だって、可愛いから」
・・・あ、そういえば女装したままだ
これは、ヤバいかも
「・・・あのですね、ルーリさん。僕は男ですよ」
「知ってます。その上で、可愛いと言ってるんです」
「これは、僕が選んだんじゃなくてシーナさんのメイドさんたちが作った服なんです。せめて、男物の服がよかった・・・」
「いいじゃないですか、私にとっては目の保養になりますし」
目の保養ね・・・
こんな自分が生まれるなんて何だか恥ずかしい
「あの、話は変わりますけど、ケリアルさんは魚の商売を始める前は何の仕事をされていたんですか?」
「え?」
「いや、再会した時の会話でルーリさんが、魚の商売を始めた時って言ってましたから、その言い方だと前の仕事をしていたようになりますしね」
「そうですね、魚の前は馬肉や牛肉を売っていたんです。父さんは物を売る仕事が好きなんです。でも、ザーク地区には肉を売ってる店が多くて、売り上げもままならない状況でした。そこで3年前に父さんは、肉じゃなくて魚を売ろうと決めたんです。ただ、王都自体が内陸にあって、一番近い港町からでも20km離れてるんで、氷で長持ちさせる方法はあるにはあるんです。ですが、王都の人たちにとっては魚はあまりなじみがない食材です。臭いに慣れていないと、とても買おうとは思わなかったでしょうね。それでも、売ろうって。父さんは頑固なんで」
「それで、エンチェさんに見限られた」
「私は、父さんと一緒に仕事がしたかった。3年間、母さんとともに暮らした生活は逼迫していました。それこそ、母さんだけじゃなく私も稼がないといけない状況でした。いろいろやりくりしてザーク地区での買い物ができるほどにお金をためて、今日行ってみたら大繁盛してると聞いて驚きました」
苦労して、苦労して、何としてでもケリアルさんと仕事がしたいという思いがこの瞬間に繋がったんだろうな
「だから、リーヴェルさんには感謝してるんです。父さんの店を立て直してくれた恩人だと」
「いやいや、そんな大したことはしてないですよ」
「謙遜しなくても・・・」
苦労話をしても笑顔を見せるルーリさん
この笑顔は、ケリアルさんとエンチェさんにとっては宝物に違いない
「でも、気になってたんですが、リーヴェルさん、ゲッチルを見ただけで何故あれだけのアイデアが生まれるんですか?もしかして、リーヴェルさんは天才なんですか?」
「いや、僕は天才じゃありませんよ」
「じゃあ、どうして?」
ここも素直に話した方がよさそうだな
僕は、エンチェさんとルーリさんに以前王宮で国王陛下に自分が前世の記憶を持った人間という事を明かす
そして、ゲッチルの活用方法も同様の知識で得たものということも
「驚きました。まさか、そんなことが」
「私もですね」
2人はなんだか冷静だな
「リーヴェルさん、その知識をこんな素晴らしいことに活用出来るんですから、悪用は絶対しない人だなって納得しました」
「同感ですね」
当たり前だ
知識を悪用しようだなんて思ったことは毛頭ない
2~30分ほど話をして、食事を終える
「リーヴェルさん、今日はありがとうございました」
「いえ、僕の方も楽しかったです。まぁ、シーナさんとケリアルさんは初っ端から倒れちゃいましたけど」
「アハハ・・・」
「でも、これを機に店も繁盛するといいですね」
「はい」
それでは、おやすみなさいと挨拶をして、シーナさんをおんぶしながら歩いて帰る
その途中、シーナさんが目を覚まし
「・・・ん、んぅ・・・?あ、あれ・・・?リー・・・ヴェル君?」
「あ、目が覚めたみたいだね」
「ええっ!?何で、私リーヴェル君におんぶされてるの?」
「覚えてない?」
「ほとんど・・・」
「ビールを一口飲んだだけで、べろんべろんに酔ってそのまま寝たんだよ」
それを聞いたシーナさんが顔を赤くして、
「うそっ・・・、私お酒ダメだったんだ・・・」
「まぁ、火酒じゃなくてよかったかもしれないね」
「火酒だとまずいの?」
「う~ん、何というか・・・、余計に酔いが回ってひどくなりそうな感じがしたから」
「そっか・・・。でもこれで、私もお酒は飲まない方がいいって分かった」
「そうだね。っと、もう着くよ」
「ホントだ」
話している間に、警備局に着く
ムーリットさんに事情を説明
「そうか、あの店を繁盛させたのか。やるじゃないか」
と称賛される
風呂もサッと入って、床に就く
あの3人これからもずっと幸せな時間を過ごしてほしいな
そう思いながら夢の中へ
叙勲式まであと2日
どうも、茂美坂 時治です
酒を飲んだらお約束の展開みたいになりました




