第24話 店の手伝い
1番街だけが人の姿が全くない
それに、魚臭い
シーナさんはそれが原因だと頷いていたけど、何でかな?
僕は躊躇なく1番街の通りを歩く
「ちょっ、リーヴェル君!?」
シーナさんが止めようとするが、僕は奥へと進む
すると、出刃包丁のようなナイフを持った男が魚をさばいている
陳列棚には大量の切り下ろした魚の肉が山のように積みあがっている
よく見ると、少しどす黒い
「何の用でぇ?」
僕を睨みながら話しかける
「あの、何をさばいてるんですか?」
「あぁ?ゲッチルだよ」
「げ、ゲッチル?」
「こいつの事だよ」
男が魚の尾ひれをつかみながら持ち上げたゲッチルは、どう見ても鰹だ
「すごく素朴な質問をしてもいいですか?」
「何でぇ?」
「どうして魚臭いという理由だけで1番街には人が来ないんですか?」
「おめぇ知らねぇのか?王都ジェティスは海からだいぶ離れてるんだよ。海の近くに住む人から昔から魚を食べるっていうから、こっちでもやってみようってことでやってんだけどよ、全っ然人が来ねぇんだよ!」
そりゃ、こんな乱暴な配置の仕方じゃ誰もおいしそうには思えないな
もしかして、これが原因で1番街に人が来ないんじゃ・・・
それに、生のままで売ってるのもちょっと物足りない
「あの、内臓とか骨はどうしてるんですか?」
「全部捨てるに決まってるだろ!」
「それはもったいない!」
「何でだ?骨とか内臓とかは商品にならねぇだろ?」
「いえ、使い方次第では美味しくできますよ」
「ほぉ、それなら証明してもらおうじゃねぇか」
「いいですよ。ただ、内臓の方は少し時間を頂きますが」
「俺は構わねぇけどよ、そっちの姉ちゃんは顔を引きつってるじゃねぇか」
シーナさんの顔が少し青い
「あの、無理ならジェンティス広場に行ってもいいよ」
「・・・そうさせてもらうわ」
そう言いながら、ゆっくりと歩き去る
「まずは、骨ですね」
「骨をどうするんでぇ?」
「スープにします」
「は?スープ?んなもん、できるわけがねぇだろ」
「あのですね、まだ手付かずなんですよ。それをできるわけがないとか言わないでください」
「出来ねぇもんは出来ねぇんだよ!」
どうしてこんなに頑ななんだ?
「鍋はありますか?」
「そこにあるいくつかの鍋好きなもんを使いな」
よし、始めますか
まず、ゲッチルの骨を適当な大きさにぶった切る
水の入った鍋に全部入れて火をつけて沸騰するまで待つ
その間に内臓を処理していこう
こっちは酒盗づくりだ
さばきたての内臓は新鮮だからおいしく作れるはずだ
でも、酒盗の発酵日数はかなりかかる
そこで、ここでも治癒魔法を試したい
まず、肝臓、すい臓、胃、腸を水で優しく洗い、胃と腸を切り開いて中身をすべて取り出し、その後さっきと同じように水で優しく洗う
その後、塩水の入ったボウルに先ほどの内臓を入れて血抜き
ここで治癒魔法をかけてみる
すると、あっという間に水が赤くなった
取り出してみると、綺麗に汚れが取れていた
にらんだ通りだ
水でぬるを取って風魔法を使って水気をきってから別のボウルに入れて、塩をまんべんなくふりかけ漬け込む
ここでも、治癒魔法をかける
色も変化し、少しドロッとしている
発酵が進んだ証拠だ
取り出して水で余計な塩分を洗い流し、さっきと同様風魔法で水気を切って、細かく切る
本来なら日本酒とみりんを使って合わせるんだけど、この世界にはないから収納魔法に入れていた村の火酒を取り出し、少量入れて、みりんの代わりに砂糖を少量入れる
もちろん、これは内臓の量にもよるから加減しながら入れるのがベスト
そのあとまた治癒魔法をかける
あとは、生臭さがないかを臭いでチェック
うん、生臭さはないし、これで酒盗の完成だ
よし、鍋の方は順調だ
灰汁をとりつつ、味を見る
これも、いい感じにダシが取れた
「できましたよ」
「ほ、本当にできたのかよ」
男ができたダシと酒盗を見てみると
「な、何でぇ、こんな気持ち悪いもんは?」
「これは酒盗といって、内臓を発酵させて作りました」
「内臓を・・・。ははっ、とんでもねぇもん作りやがったな」
「まずは、一口召し上がってください」
男がおそるおそる酒盗を口に入れて
「・・・な、何だ。この旨さは。そ、それにこれは酒が欲しい・・・」
「でしょ?」
酒盗は酒が無くなったら盗んででも飲みたくなるといわれている
だからこそ、酒の肴にはもってこいのものだ
スープも飲んでみると
「おおっ、これもまたうめぇな!よく、こんなもん思いついたな」
「ははっ、喜んでいただけて何よりです」
「なぁ、作り方教えてくれよ」
「いいですけど、治癒魔法と風魔法は使えますか?」
「勿論でぇ。おっと、自己紹介がまだだったな。俺はケリアル・ヴェニストだ」
「僕は、リーヴェル・ジェスナーです」
「え、あの、リーヴェル・ジェスナーか?」
驚くようにこっちを見る
「最強の冒険者はこんなうめぇもんまで知ってんだな」
まぁ、それは前世の知識ですけどねと言いたいけど、これはあくまでも国王陛下とごく一部の人しか知らないことだ
でも、これが王都中に広まることも間違いないだろう
「でもよ、うまいのは分かったけど、これで客が来るか心配なんだよな」
そう、さっきケリアルさんが酒盗を見て気持ち悪いと言ってたように1番街にお客さんがずっと来ないのはこの人の生計に支障が出る
なら、鰹節も作ってみたいな
ただ、カビとかはどうすればいいかが問題なんだよな・・・
店の中を見てみると、ところどころにカビが
手に取ってみると、コウジカビだ
前世でじいちゃんがよく鰹節を作ってるのを見ていたからな
その時にじいちゃんが僕に見せてくれたコウジカビの塊を今でも鮮明に覚えている
まさか、異世界でも存在してるなんてな
これは奇跡というべきか偶然というべきか
これなら、鰹節を作れる
どうも、茂美坂 時治です
異世界でも鰹が出ましたね




