↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/66

第53話 語る側


『四の間』の読者は、街に、思ったよりたくさんいた。


焼き鳥屋で、団体攻略の帰りに、広間で。「あれ読んだ?」が挨拶になり始めてて、読んだ者同士は、目が合うと分かった。ああ、こいつも枠の外か、と。


そして俺は、そのコミュニティの中で、急速に「語れる側」になっていった。


理由は単純だ。俺は二周読んで、ノートを取って、自分の二年間の経験に全部を接続してた。書の抽象論を、路上の具体例で語れる男は、貴重だった。


「ミナモさん、四の間の『錨』のとこ、正直よく分かんなくて」


「ああ、あれな。──お前、札の管理表つけてるだろ。先月比とか出してるだろ」


「出してます」


「先月比が下がった週、どんな気分だった?」


「……最悪でした」


「それが錨だよ。数字は便利だけど、いつの間にか、数字の方がお前の主人になる。お前は先月の自分の数字に、繋がれてたんだ」


「……!! なるほど!!」


相手の目が、開く。その瞬間が、たまらなかった。


チリ、、ン、とは違う快感だった。もっと深くて、もっとタチの悪いやつ。俺の言葉で、人の枠が外れる。俺が、誰かの雷になれる。


《警告。あなたが今語っているそれは、あなたが解いた答えではありません。──借りた答えです》


(解くも借りるもあるかよ。正しいものは正しい)


《問いというものは、自分で解いた分しか、身につかないのでは──》


(──システム)


俺は、視界の隅の警告表示を、指で、すっ、と払った。


《……いま、何を》


(お前の警告、ミュートにできるの、この前気づいたんだよ。悪いな。今、集中したいんだ)


《ミナモ。それは──》


すっ。


──警告表示が、消えた。


視界が、静かになった。正しさだけが、綺麗に残った。


……この「ミュート」って機能な。


多分、最初から視界についてたんだと思う。ただ、使う理由が、それまでの俺にはなかっただけで。


正しさで武装した男ってのは、自分に反対する声から、順番に消していくのだ。外の声も。内の声も。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。