第48話 帰還
帰りの新幹線は、全員、抜け殻だった。
遊び尽くした後の、心地いい抜け殻。ダイは寝てた。イチも寝てた。同期は土産の袋を抱いて寝てた。起きてるのは俺だけで、俺は窓の外の、山が減ってビルが増えていく景色を見てた。
東京駅に着いて、在来線に乗り換えて、夜、いつもの梟ノ森に降り立った。
──瞬間、分かった。
視界の注釈が、一斉に戻ってきた。
タグ。警戒値。系統。装い。雑踏の上にびっしりと並ぶ、いつもの表示。北の門で薄れてた視界が、この街に戻った途端、フル稼働を再開した。
《表示機能、全回復。……おかえりなさい、と言うべきでしょうか》
いつもの視界。いつもの街。
なのに、見え方が、違ってた。
(……システム。この表示の量)
《はい》
(前は、これが「普通」だった)
《今は?》
(──この街が、それだけ警戒してるってことの、表示に見える)
同じ表示が、遠征の前は「攻略対象のデータ」に見えてた。今は、「この街の分厚い膜の、厚さの数値」に見える。
雑踏の中の、鎧の女とすれ違った。
前は「攻略難度S」としか思わなかった、あの白銀の鎧。
今は、少しだけ、違う問いが浮かんだ。
──この街で、あの鎧を着なきゃいけない事情って、なんだ?
答えは、出なかった。出なかったが、問いが変わったこと自体が、遠征の土産だった気がする。
家に帰って、ノートに書いた。
「獣の門も、梟ノ森も、世界の全部じゃなかった。俺の定石は、この街の方言だった」
方言は、恥じゃない。でも、方言を世界の標準語だと思ってる奴は、ちょっと恥ずかしい。
俺は危うく、そっちになるところだった。
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