↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/68

第44話 降りてきた男


面白いのは、逆のパターンだ。


修羅の国の民が、たまに、俺たちの路上に「降りて」くる。


その男を見たのは、梟ノ森の駅前だった。一目で分かった。身長、服の発光思想、立ち方。あの国の民だ。それが、夜の路上で、声をかけてた。


観察した(もはや職業病である)。


第一声から、音量が違った。


「お疲れ様でーす!! ねえねえ、めっちゃタイプなんだけど!!」


で、でかい!! 音圧!! あの国の音響で鍛えられた声帯、屋外だと完全にオーバースペック!!


距離も違った。近い。俺たちの定石だと二歩ぶん近い。あの国の距離感のまま来てる。


《成功予測:低。路上の文法と、全パラメータが逆です。警戒値、振り切れる想定──》


──ところが。


声をかけられた子が、笑ったのだ。


「ふふっ、声でっか」


「でかい!? ごめん!! 地声!!」


「地声でそれはウケる」


通った。俺たちの理論だと減点まみれの声かけが、勢いと明るさと、あと多分「隠し事のなさ」で、警戒値をぶち抜いた。


(……システム。解説を)


《……過剰火力も、火力は火力、ということかと》


(雑!! 解説が雑!!)


《本システムも、混乱しています》


もちろん、通らない場面も見た。むしろ通らない方が多かった。あの音量と距離は、静かな夜道では事故になる。実際、露骨に引かれて敗走する場面も目撃した。敗走の仕方まで声がでかかった。「ごめんね!! 良い夜を!!」て。良い夜を、て。


でも俺は、その男から、一個だけ大事なことを教わった気がする。


正しさは、国の数だけある。


俺が二年かけて磨いた定石は、この街の、この夜の、この文法の中での正解でしかない。一本道だと思って登ってた山は、山脈の中の一峰だった。


視界が、また一段、広くなった夜だった。


……ちなみにその男、後日、焼き鳥屋で隣になった。めちゃくちゃいい奴だった。声はでかかった。大将は、何も言わずに、そいつの分だけ串を奥の席に置いた。音量対策だと思う。www


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。