↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/65

第42話 アル中一門


「──で、リベンジに行くわけですね」


「行くわけだ」


一週間後。メンバーは俺、ダイ、イチ、同期二人。対異界攻略隊、五名。


今回は俺に秘策があった。研究の結果、異界の民には共通の装備があると判明したのだ。


酒である。


あの国の民は、みんな飲んでた。つまり酒は、あの国の民族衣装なのだ。郷に入っては郷に従え。俺たちは入国前に、居酒屋で「装備」を整えてから、扉をくぐった。



結論から言う。


楽しかった。


いや、違うんだ。聞いてくれ。酒が入った俺たちは、音の洪水が、怖くなくなってた。言葉が届かない? 届かなくていい。体が勝手に揺れる。隣のダイも揺れてる。イチまで揺れてる。あの一撃の居合の男が、リズムに合わせてぴょこぴょこしてる。面白すぎる。


気づいたら、知らない集団と合流してた。言葉は交わしてない。ノリだけで乾杯して、ノリだけで笑って、ノリだけで別れた。女の子たちのグループとも、いつの間にか同じ輪で踊ってた。誰も警戒してない。だってここでは、誰も「会話」というリスクを冒してないから。


《……報告があります》


酔いの薄い層で、システムの声がした。


《気づいていますか。あなたは今、技を、一個も使っていません》


(うるせえ、今いいとこ)


《技を使っていないのに、この空間との摩擦が、ゼロです。これは、重要な──》


(うるせえって!! 今いいとこ!!)


システムの言いかけた何かを、俺は音の中に置き忘れた。


──あれが何だったのか。技を捨てた瞬間にだけ開く扉があることを、当時の俺は、知る由もなかった。



で、どうなったかというと。


楽しみすぎて、攻略を忘れて、終電を逃して、五人で始発まで踊って、撤退した。


戦果、ゼロ。札、ゼロ。楽しさ、無限大。


「俺ら、何しに行ったんでしたっけ」朝の牛丼屋で、ダイが言った。


「攻略」


「攻略、してました?」


「してない」


「じゃあ何してました?」


「……酒飲んで踊ってた」


五人で、牛丼を挟んで、静かになった。


「……つーか俺ら」同期が味噌汁をすすって言った。「素面じゃあの国、入れなくないすか」


「入れない」


「酒ないと楽しめない集団て、それもう」


「──アル中一門じゃん」


誰が言ったか、覚えてない。でも言った瞬間、全員の箸が止まって、それから、朝の牛丼屋に不釣り合いな爆笑が起きた。


「アル中一門wwww」


「例の、名前のなかった団体!! 名前、決まったな!!」


「待て、俺は反対──」


「「「満場一致!!」」」


「聞けよ!!」


こうして、旗揚げから数週間、名無しだった俺たちの団体は、朝の牛丼屋で「アル中一門」として正式に発足した。命名の由来が敗走なの、うちららしくて、ちょっと好きだ。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。