第15話 ノーグダ三連
ダイを改造した男が、自分を放置する理由はない。
俺は自分の攻略に着手した。対象:俺の見た目。方針:出せる範囲の銭で、最大の減点消し。
まず服。自分の系統を分析した。黒髪、塩顔、色白。派手に振っても嘘になる。なら、今の路上で強い装いに寄せる。調べて、正解のセットを組んで、買った。試着室で迷った時間、合計四分。
次に眉。眉は顔の額縁である。調べると、整えるより先に「描かなくていい状態を作る」施術があると知り、予約して、受けた。決断から予約まで、その日のうち。
最後が、まぶた。
俺の目は一重だった。調べると、切らずに留めるだけの施術がある。値段、調べた。腫れる期間、調べた。失敗例、調べた。調べ終わった時には、予約してた。
《決断速度:計測開始から予約完了まで、当日。……あなたのこの速度、他の場面でも見たいものです》
(どういう意味だよ)
《他意はありません(現時点では)》
友人にこの話をすると、だいたい同じ反応をされる。「迷わなかったの?」
迷う工程が、見当たらなかったのだ。効果とコストを調べる。割に合う。やる。以上。
俺は自分の顔を、初めて攻略対象として見た。攻略対象に感傷はいらない。いるのは手順だけ。淀みなく、俺は三連を終えた。
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数週間後、腫れの引いた俺の顔を見て、ダイが言った。
「……え、誰すか」
「俺だよ」
「変わりましたね……いや、でも」
ダイは少し考えて、鏡越しに俺を見て、あの日の試着室と同じ声で言った。
「変わったっていうか。……今持ってるものを、正しく良くすることでも、人って変われるんですね」
俺は一瞬、黙った。
俺が四分と手順でやったことの意味を、こいつは一言で言い当ててた。俺は別人になったんじゃない。俺のまま、減点を消しただけ。配られた札は同じで、並べ方を変えた。
それだけのことを「人は変われる」と呼んでいいと、こいつは俺より先に知ってた。
──ところで、一つ告白がある。
見た目が整うと、街での初動が変わる。声をかける前から、警戒の量が減る。楽になる。音も、鳴りやすくなる。
楽になったんだが、俺はこの頃から、鏡の前で妙なことを考えるようになってた。
見せてる顔と、隠してる顔。どっちが本物なんだろうな、と。
答えは出さなかった。出す必要も、当時はなかった。
数字は、上がり続けてたから。
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