#005 私のマナって凄いらしい!
「私、錬金術師になる」
と、最初に言ったのは数日前。
現代社会において錬金術師になるなんて荒唐無稽な話なのに、同じ専攻の院生たちはバカにするどころか応援してくれていた。なのに何故だ?実際に錬金術師がいる世界で「錬金術師になる」と言ったらバカを見る目で見られた。この身体の持ち主はどれだけ頭悪かったんだ?脳みそちゃんと稼働するかな?
執事のゴードンが呼びに来て私の新しい部屋に案内された。
豪奢!ほらね〜公爵令嬢だったらやっぱりこういう部屋だよね。兄はメイドにお茶を淹れさせて人払いをした。
「メリッサ、誰にやられたんだ?」
「本当のことを言ってもよいのですか?たぶんお兄さまの想像通りですわ。」
実は・・・
さっき公爵邸の医者に手をかざされマナで身体をスキャンした後、炎症反応のある場所に治癒魔法をかけてもらったのだけれど・・・
その時に医師のマナが体中を駆け巡って私自身のマナが覚醒してしまったようだ。
結果、この身体の脳細胞深いところをマナで調べてこの身体に起こったことをすべて理解してしまった。
厳密にいうと脳細胞と言ったが細胞ではなくその細胞より素粒子よりもさらに細かい電子の波動というか波形に情報として残っていて・・・いや、また出てしまった。科学者の悪い癖が。
ちなみに波動は東洋では『気』とよばれ、西洋ではそれを測る機械もできている。MRAとかEAVとか。
「当然だ!私はお前の味方だよメリッサ。お前を害そうとするものは把握しておかないとならない。」
「公爵夫人だと思いますけど確証がありません。それより少し思いついた実験をしてみたいのですが、構わないでしょうか?」
「実験?お前実験と言う言葉の意味が解っているのか?」
何かすごくバカにされている気がするが、拒否される前にと兄の手を取り握ってみた。
右手で左手、左手で右手をとって、つまり私と兄が腕が輪になっている状態で私はさっきの医師の真似をしてマナを巡らせてみた。
このくらいの量だったよね・・・
すると私のマナが兄のマナを、なんというか・・・スキャンしている?読み取っている?みたいな感じになって・・・
(メリッサはいったい何をやっているんだ?何か私と遊んでほしいのだろうか?頭が悪いから実験なんて言っているけど何の真似なんだ?)
もしかして、もしかすると、とは思ったけど、どうやら兄の思考を読み取ってしまったらしい。
「メリッサはいったい何をやっているんだ?何か私と遊んでほしいのだろうか?頭が悪いから実験なんて言っているけど何の真似なんだ?って思いましたね?お兄さま。」
「は?何でわかったんだ?メリッサ!」
「どうやらわたくしマナで相手の思考が読めるみたいです。あと、お兄さまの右肩に少しだけ炎症反応がありました。」
「右肩はさっきロゼを父上の執務室にひっぱっていった時にかなり抵抗されて捻ったようだ。別に痛くもなかったんだが・・・驚いたな。思考を読む?いつからそんなことができたんだ?」
「今ですわ、お兄さま。さっきの医者の真似をしてみたらできたのです。わたくしはマナが多いんですよね?」
普通の人がレントゲンだとしたら私はCTかMRIかそれ以上の事ができるみたい。
「そうだな。平均的な貴族の2~3倍はかるくあるんじゃないか?脳みそがすべてマナになったって陰口を言われて・・・んんっ、いやなんでもない。それよりメリッサ、その能力は絶対に他の人には言わない方がいい。」
「どうしてですか?」
まぁ、私も兄以外には言わないつもりだったけど、この世界の環境を考察するためにも兄の意見を聞いておかなきゃね。
「そりゃあ、そんな力があれば権力をもった人間に拘束されて利用されるか、魔塔に連れていかれて実験体にされてしまうかもしれない。」
ま、魔塔~!そんなものまであるなんて!あ、そういえばアニメに出てきてたね。魔塔主と言うキャラが。
「わかりました。誰にも言いません。でもこの読み取り能力は誰にでもできる事じゃないんですの?」
「私は聞いたことがない。それよりそれは誰の思考も読めるのか?マナの量とか質とか種類にもよるのか?」
「わたくしもわかりませんわ、お兄さま。だって今初めて実験したんですもの。おいおいバレない様に実験したいですわね。それよりも、なんとかっていう侯爵家の錬金術お得意なお方にはいつ会わせていただけますの?」
「コルネリスか。彼は私とアカデミー同期の友人だ。すぐにでも言伝を出しておくよ。」
「アカデミー・・・ですか?お兄さまは卒業されたんですの?」
あっ、そういえば『イケ略』のアニメの舞台はアカデミーだったね。この世界の学校ってどんな感じなのかな?(わくわく)
「アカデミーは帝国立学園で、試験に合格すれば平民でも入れる授業料が無料の学校だよ。教養科目を最低5つと専門科目を最低7つとれば卒業できる。私はコルネリスと教養科目のほかに薬草学と領地経営学、あとは武術の講義が同じだったのでアカデミー時代は一緒にいることが多かったな。」
「薬草学?お兄さまはお薬を作られるんですの?」
え、似合わない!剣術とか経営学とかは似合いそうだけど・・・
「薬草学は高位貴族の子息は必ずとるんだ。毒を感知できないとならないし、毒にあわせた解毒薬もすぐに用意できないとならないからな。」
なるほど。毒殺の可能性があるんだ。令和の日本の感覚でいると危機感が足りなすぎるってわけだ。肝に銘じないと・・・
「あと・・・」
「え?なんですか?ジェフリーお兄さま。」
「公爵夫人の管轄の部屋から父上の管轄の部屋に移ったからしばらくは大丈夫だろう。あとでチャンスがありそうなら人の考えていることを読む練習をして色々わかったら教えてくれ。本当は公爵夫人の頭を読めればいいのだがな・・・。たとえば両手ではなく片手で触れただけではだめなのか?訓練が必要ならいつでも呼んでくれ。」
「わかりました。お兄さま。コルネリス様の件もなるべく早くお会いしたいのでよろしくお願い致しますわ。」
「このあとすぐ使いをだそう。メリッサも皇太子と婚約すればなにかと忙しくなるだろうからな。」
あぁ、そうだ皇太子ね。忘れてたよ~。
どうせ婚約破棄になるんだけどね。




