#004 オーヴェル公爵家
「メリッサ」
「はいっ、公爵様っ!」
「公爵様?」
あっヤバい、お父様とか言わなきゃいけなかったのかなっ!
「父上、メリッサは落馬事故で頭を打ったらしく記憶がないそうです。」
兄が助け舟をだしてくれた。ありがとぉ~~~おにぃちゃん!
「落馬事故?報告を受けていないが、ゴードン何か聞いているか?」
ゴードンとよばれたのは執事のおじさんらしい。ビクッとして姿勢を正してきびきび答える。
「お嬢様は落馬の事故の後3日間お目覚めにならなかったそうです。私も先ほどはじめて奥様のメイドから聞きました。」
なるほど、さっき何もしないで出て行ったのは公爵夫人のメイドで、私は意識がない間見張られていたってわけか。
もしかしたら殺されそうになったのかもしれない。
「マティルダのメイドが?・・・そうか。」
ロゼの話は疑っていたけど執事の話は聞くんだね。そうですよ~私は公爵夫人から虐待されてるみたいですよ~ってだれか言って!お願い。
私は怖いから言えない。
「それでそのようななりで部屋から連れ出されたのか?体調はどうだ?」
公爵に対してどのように接していいかわからない私は静かに首を振った。
「メリッサ、お前は皇室に嫁ぐことになった。なので部屋も本館の方へ移動して最低限のことを学んでもらわないといけない。本来ならアカデミーに行けると良いのだが頭が悪すぎるからな。今まではマティルダがお前の教育のためにと彼女のいる北棟で生活させていたが、今日から私の目の届くところに移動してもらう。ゴードン、本館の三階に公女の部屋を用意して教師も手配しろ。ジェフリーお前はメリッサを医者に診せて、その落馬事故の調査もするように。」
頭悪くなければアカデミーに行けた?アカデミーとは何を学ぶとこなのかな?こんな怖い家でいたぶられているならいっそそのアカデミーとやらに行きたい!
「承知いたしました父上!メリッサ、立てるか?」
兄の名はジェフリーというらしい。メイドに引きずられてぼろぼろになった私をやさしく起き上がらせ執務室から連れ出してくれた。
「ジェフリーお兄さま」
「あぁ、なんだ?私の事を思い出したのか?」
兄は優しい口調だけどバカにされている雰囲気がひしひしと伝わってくる。メリッサって話が通じない程頭悪かったのかな?
「呼んでいただけたらお部屋に伺わせていただくのに、このような所に来ていただいて申しわけありません。」
兄に連れられて公爵邸の医師の部屋に行くと私たちの顔を見た医師はびっくりしてそう叫んだ。
「いや、実はメリッサが数日前に落馬したらしく今日まで意識がなかったらしい。知っていたか?」
「はっ?えっ?事故ですか?落馬?意識がなかったなんて!なぜ私は呼ばれなかったのでしょう?」
兄の質問に医師がうろたえながら私に長椅子に横になるよう促してきた。
「どんな状態で落ちたんですか?お怪我は?」
横になった私の身体に気功の人が手をかざすように身体から15センチくらいのところをあちこち動かしている。
「それが、何も覚えてないんです。家族の名前も何もかもです。」
「なんてことだ!それなのに私が呼ばれないなんて!」
医師が辛そうな顔で兄の方を振り返った。
「公爵夫人がわざと呼ばなかったらしい。どうだろう?記憶障害とか起こしていたら治らないのかな?」
兄が心配そうに私を見る。
「痛いところがあれば言った方がいい。もっと早くに気づくべきだったな。」
「意識不明に記憶喪失なんて、どんなに大変な事故だったのでしょう?でも公女様はマナが多くていらっしゃるのでご自分で無意識に治療されたのではないでしょうか?外傷は殆どないようです。手首に炎症反応がみられるくらいで・・・」
「マナ?!」
私は素っ頓狂な声を出してしまった。
そうだよ!そうそう!ここはファンタジーの世界じゃない!
あ、さっき「皇室に嫁げ」って言われたよね。って事はあの『男爵私生児で元平民の私ですが悪役令嬢婚約者のイケメン皇子と略奪婚します』、略して『イケ略』のストーリーが始まる前なんだ。あの映画は悪役令嬢(私)と皇太子が婚約破棄されるところから始まるから。じゃあさ、じゃあさ、私って魔法とか使えちゃうんじゃなかったっけ?あ、そうか、この医者も気功じゃなくて治癒魔法とかで治してくれてるんじゃない。凄い!
「マナは魔力の源で、メリッサは頭は悪いけどマナだけは誰にも負けないくらい持っているじゃないか。それも忘れてしまったのか?」
「ジェフリーお兄さま、頭が悪いは余計ですわ!」
突然目が覚めたように『イケ略』の事を思い出して、あの登場人物の悪役令嬢っぽい口調にチェンジしてみた。
マナかぁ・・・マナって何ができるんだろう?研究したいっ!私も由吉ほどじゃないけどアニメも漫画も大好きだからマナが、魔力の源であることくらいは想像できる。しかもこの世界は元の世界と違って様々な機械類がなくても魔法を使って実験できるんじゃないかな?そうだと嬉しい。実験したい!
「ここって水銀はあるのかしら?」
魔法で材料などを混ぜ合わせたら実験できるんじゃないかなんて妄想していたら考えていることが口に出てしまった。
「水銀?メリッサ何を言ってるんだ?」
「あ、では錬金術師って呼ばれる方々はいらっしゃいますか?」
「錬金術ならブルターニュ侯爵家のコルネリス様がお得意かと。こちらの公爵邸でもコルネリス様がおつくりになったアーティファクトを数多く使ってらっしゃいますから。」
アーティファクト!
キタキタキター!キタよこれっ!私本物の錬金術師になれるんじゃない?
なんとかその錬金術師に弟子入りしたい!
「ジェフリーお兄さま!わたくし錬金術師になりますわ!」
兄も医師も『オマエミタイナバカガ?』という顔をしているが知った事じゃない。
私はどうしても夢を叶えるのだ!




