#043 フレデリックも転生者?
がれがれで死にそうな声のフレデリックから連絡があった。
「フレデリックさま、もしかして完成されたのですか?」
「あぁ、メリッサ。できた。会いたい・・・」
「素晴らしいですわ!体調が悪そうなのでいったんお休みになってから夕方にお茶か晩餐をいかがですか?」
「・・・・・」
「フレデリックさま?」
あ、寝たっぽい。
コルネリスもマナレーダーを作るために引きこもってしまったし、夜ひまだから後でコールしてみよう。
アマーリエに言われた注意を思い出したら講義以外は部屋から出ないほうがいいかなって。一人で部屋で食事をしていたので寂しかった。
私、魔力が多いだけで戦闘能力ないから、なんか魔力で戦える武器でも考えようかな・・・
懐からバッと杖をだすと武器に変化したり、魔法陣がたくさん空中に現れて攻撃魔法がぶあぁ~ってでるような・・・
なんか考えていることが小学生男子みたいで恥ずかしいけれど、もしも仮にラスボスがあの魔塔主だとすると生半可な攻撃じゃ返り討ちにされてしまう。
ん?ラスボスって本来わたし?
あれっ?あのハインリヒという魔塔主はアニメのイケ略の攻略対象だよね。
じゃあ本来ならばヒロインのマリーを好きになるんじゃないの?アマーリエに執着しているのはなんで?
あ、でも攻略対象のコルネリスもマリーは苦手なタイプとまで言っていたよね。
私はこのストーリーをめちゃくちゃにする気はない。でもストーリーがめちゃくちゃになっているのは私が悪役令嬢としての役割を果たしていないからとか?
でもコルネリスだって転生者で好きなように生きているんだから私のせいだけじゃないよね?
私が優秀って言われているのは単に大学院まで行って勉強していたから知識があっただけで、コルネリスだって大学院まで進んで物理工学を学んだ知識があるから『頭に浮かんだ』数式を扱えるんだよね。
そのコルネリスがあいつすごいって言ってしまうフレデリックって何者なんだろう?たかだか2~3年アカデミーで学んだ知識量じゃない気がする。
私はフレデリックの部屋の黒板に書きなぐられていた数式を思い出し首を傾げる。
あれってたしか、波動関数だった。なぜ量子力学に長けているの?
少し遅めの夕方、私がフレデリックに連絡をとろうかと悩んでいると向こうから連絡が来た。
「メリッサ、さっきはすまない。貴女の声を聴いていたら安心して寝てしまったようだ。」
「いいえ、大丈夫ですわ。お疲れであることは理解してますので。」
そしてフレデリックの部屋で食事をすることになった。
「会いたかったよメリッサ!まずはこの魔法陣の上に乗ってくれ。」
フレデリックが待ちきれなかったとばかりに私の呪いを解いてくれようとしている。
「もしフレデリックさまが本当はわたくしの敵でしたらこの上に乗ったわたくしは死ぬのかしら?」
私の為に必死に解呪をしてくれようとするフレデリックがなんとなく照れくさくて私は照れ隠しに余計な事を言ってしまう。
「えっ?私の事が信用できないのか?そうか、私に変装した敵ってこともあるもんな・・・」
フレデリックは私の冗談を真に受けて「どうしたら信用してもらえるのだ・・・」とぶつぶつ言っている。
「フレデリックさま、冗談ですわ。わたくしフレデリックさまの事を信じていますの。もしもフレデリックさまがわたくしの敵なら潔く死にますわ。」
そう言って魔法陣の上に立って少しマナを開放してみた。
するとぶわっと髪が逆立つ感触が一瞬だけしてそのあとは何も起こらなかった。
「フレデリックさま、これで大丈夫ですの?」
「大丈夫なはずだが、確かめようがないな・・・とりあえず食事しながら話そうか。」
私たちはいつもの通りフレデリックの部屋に運ばれた食事を摂りながら話すことにした。
私はゴブレットをフレデリックにわたし果実酒をついだ。
「フレデリックさま、わたくしのためにありがとうございます。」
学生寮なのにふつうにお酒がでてくる。年齢制限などは特になく、貴族の子供たちには食前酒はあたりまえのようだ。
少しお酒が入った私は勢いで常々聞きたかったことを聞いてみた。
「フレデリックさまは誰か想う令嬢がいらっしゃいますの?」
「どういう質問だ?それは。あぁ、いる。」
「それはマリー・ブラウンですの?」
「え?いや、彼女はあくまでも友人だ。親友と呼べるだろう。正直に言おう、私はメリッサのことをとても好ましく思っている。もちろん女性としてだ。でも実は忘れられない女性がいるのだ。こんな私を疎ましく思うのならば婚約は解消してくれてもいい。だけど私の側にいてほしいのはメリッサだけなんだ。」
「皇帝になれば側室も娶るのでしょうから気にしませんわ。」
「・・・冷めているんだな。」
しまった!祝杯をあげたばかりなのにしらけさせてしまった。
何か話題を変えなければ、何か・・・
「フレデリックさま、箱の中に猫がいたと仮定して放射性物質によって猫が生きているか死んでいるかわからない場合どう思われますか?」
ちょっと唐突すぎたかもしれないけれど、『シュレーディンガーの猫』の話だ。
フレデリックは驚いたような顔で私をみた。
「メリッサ、何を言っているんだ?」
あぁ、フレデリックはやっぱり転生者じゃなかったのか・・・
なぜだかよくわからないけれど私が少し落ち込んでいると
「猫は生きていて、そして死んでいる。というエルヴィン・シュレーディンガーの思考実験だろう?メリッサ・・・なぜその話を?」
「『シュレーディンガーの猫』を知っているという事はやっぱり量子力学をどこかで学んでらしたのですね?わたくしも学びましたわ。錬金術師になりたくて。」
「錬金術師になりたい・・・・・理々沙か?」
「えっ、誰?まさか加賀くん?」
テーブルの向かい側にいたはずのフレデリックが0.何秒後には強い力で私を抱きしめていた。
自分たちで確認したのになぜか思考が停止して理解が追い付かない。
「ずっと忘れられなかった理々沙がこの世界で一番好きなメリッサだったなんて超ラッキーだ。どちらも好きで選べないと思っていたのに同一人物だったとは。」
それってもし同一人物じゃなかったら『二人とも好きなんだ選べないよ~』と言っているダメ男なのでは?
ちょっとイラっとした私は口づけをしようとしたフレデリックの胸を静かに押し返した。




