#042 アマーリエのstory
「ハインリヒ・ダンケルマン?魔塔主って、あの北塔の主?魔術の棟だよな?その人とアンソニー先生は仲がいいのか?」
コルネリスが不思議そうに言う。
「一緒にいらしたのだから仲が良いのではないかしら?そうですわよね?おばさま。」
「だってアンソニー先生はドラクレシュティの流れだってアマーリエ嬢が言ってなかったか?」
「言ったわね。」
アマーリエが静かに答えた。
「叔母さま、魔塔主はどんな方なんですの?叔母さまの事を想ってらしたということは叔母さまとも仲が良かったのですか?」
「そうねぇ・・・話さないといけないのよね。ハインリヒはビスマルク・フォン・バーデンベルク辺境伯の庶子で、私がアカデミーに通っている頃はバーデンベルク辺境伯には嫡子もいたの。卒業して何年かたった後ハインリヒは魔術師として参加した戦争で手柄をたててダンケルマンの領地と男爵の称号を叙爵したのよ。ダンケルマンという領地はバーデンベルクのすぐ隣にあって、その頃病気になった父親にすぐに会いに行ける場所を希望した。という事になっているけれど、最近の彼の動きを見ていると最初からバーデンベルクとダンケルマンを統合して大きな領地にする腹積もりだったのではないかしら。ハインリヒが叙爵のために首都に来ている間にバーデンベルクの嫡子だった男の子は謎の死をとげたの。首都からバーデンベルクの領地まではとても離れているからよほどの魔力の持ち主じゃないと1日で移動スクロールを使う事はできない。という事を利用してアリバイを作ったと私は思っているわ。」
「魔塔主はその1日で移動できる魔力を持っていらしたのですか?髪は明るめのブラウンでしたわ。」
私はふと、『マナが多いほど髪の色が濃い』という事を思い出して首を傾げた。
「彼の本当の髪色は黒よ。」
「えっ?」
変えてるって事?ブリーチしてるとか?
「実はね、私は彼の婚約者だったのよ。彼が戦争の褒賞の1つとして私と結婚することを望んだの。・・・姪にこんな話したくはないのだけれど、仕方ないわね。私と彼はアカデミーの頃とても仲が良くて・・・私は親友だと思っていたわ。でもある時、魔術に関する論文を書いていて私たちは魔術の研究室で徹夜で作業をしていていたの。だから出来上がった途端に寝てしまったのよ。私の方が少し早く目を覚まして向かいで寝ていた彼を見たら髪が黒かったの。驚いたわ。私はもしかしたらこの人に騙されているのかもしれないということにその時気づいて、そのままじっと彼を見ていたら彼も目を覚ましてね、目が覚めたら自然に髪がライトブラウンに変わったのよ。その後色々さぐってみたけれど、どうやら彼は眠っているときには自分のかけた変装の魔法が解けてしまうということには気づいていないようだったわ。」
「魔法で変装していたのですね・・・」
ブリーチじゃなかったみたい。
「私はその経験から、親しくしていても人は信用できるかわからないと思って徹底的に情報を収集するようになったの。情報を集めるための魔術具もいくつか作ったわ。そしてその情報を持ってお父さま、先代のオーヴェル公爵に相談したの。『褒賞として皇帝の命令で婚約をしたけれど、彼は信用できない。皇命に背くならば一生結婚できないことになるけれど、アマーリエを信用できない男に嫁がせるわけにはいかない。別邸を建てるからそこで暮らせ』って。それから私はさらに情報を収集するための魔道具の開発をしたり情報を売るためのギルドを秘密裏に開いたりしながら今に至るってわけ。もしも、もしもだけれど、まだハインリヒが私との結婚を望んでいるかもしれないと思うと公の場所にも顔を出せなくなったわ。」
「魔塔主はまだ叔母さまの事を想っていると思いますわ。私が心を読んだとき・・・」
「待って、メリッサ。その状況からすると彼は貴方が思考を読めるのか確認したのかもしれないわ。わざと私の名前をだして貴女の反応をみたのかもしれない。スキャンの応用なら魔力が潤沢な彼にもできるはずだから。」
「えっ?!」
あ、そっか。相手の思考を読めるのは私の能力じゃなくて、マナが多いからできることだった。
じゃあ私が思考を読んだのはバレたのかな?
あ、じゃなくて暴かれたのか・・・
「髪が黒い方がマナが多いという事はアマーリエ嬢も多いのですか?」
コルネリスが空気をぶった切って質問してきた。
「そうね。オーヴェル家はみんな平均より群を抜いて多いわね。でもメリッサはその中でも規格外の様よ。ハインリヒも規格外だったわ。規格外なのだからどちらが多いかなんて私にはわからないけれどね。」
「ということは・・・マナの探知機のようなものを作ったら便利ですか?」
「あら、それはこのブレスに追加してもらえるとかなり助かるわね。ジェフリーのマナに反応するくらいのものがいいわ。ジェフリーは私と同じくらいだからもし計測が必要なら協力するわよ。」
・・・マナのドラゴンレーダーかw
でも後付けで居場所を突き止めるにはいい方法かもしれない。
「マナの色も計測できるともっといいわね。」
「おばさま、マナの色ってなんですの?」
「マナの色はね、生まれつきのものと、属性の色があるのよ。例えば青、青が強いと武術に特化するでしょ?で、武術を極めていくと元々持っていた青色が濃くなっていくの。だからマナが多い人がどこにいるかわかるならば、その探知機に色もでれば誰だかの予測がたてられるようになるわ。空の星も温度によって色が違って見えるでしょ?」
「なるほど!敵と味方がどこにいるか予測がつくと有事の時には便利ってわけだ。それなら・・・」
コルネリスが自分の世界に入ってしまった。
コルネリスは今、頭の中で数式を組み立てているのだろう。
「叔母さま、以前アンソニー先生がドラクレシュティの末裔だと仰っていた件ですが、ハインリヒ・ダンケルマンもドラクレシュティなのですか?」
「そうね。ドラクレシュティの末裔だからと言って必ずしも悪い人だとは限らないと思うわ。でもハインリヒは庶子でしょ?アカデミーの頃は母親の家系については聞いても答えてくれなかったのよ。今だったらあの頃よりは私もルートを持っているからもう一度調べてみるわ。メリッサ、誰だかわからない者達に命を狙われているのはわかっているのだからくれぐれも気を付けて過ごすのよ?この後すぐにでも危険が迫ってくるかもしれないって事を忘れないで油断しないでね。じゃあ私は一度帰って色々調べてみるわ。」
「叔母さまありがとう。叔母さまもお気をつけて。お父さまによろしく。」
そうか、わたしって命を狙われているんだった。
平成生まれの平和ボケした思考をどうにかしないと本当にヤバいよね。




