#041 【Side コルネリス・フォン・ブルターニュ】できた!
「できた!」
俺は二週間以上もの間フレデリック皇子の部屋と自分の部屋を行き来しながら皇子の部屋で顔を突き合わせて研究し、やっと『呪いの方程式』の数式を完成させた。
「あぁ!完璧だ。ありがとうコルネリス!さすがだったよ。」
元々は『殿下』『小侯爵』と呼び合っていたのが知らない間に名前呼びになっている。
「まだ『呪いの方程式』が完成しただけだ。あとはフレデリックが今までに研究したようにこれを反転させて『解呪の方程式』を導き出してくれ。俺は一旦失礼する、また何か行き詰った事ができたらその通信の魔術具で呼び出してくれ。」
「思ったんだが、コルネリス。その通信の魔術具なんだが、他人に聞かれてもいいように名前を付けないか?愛称でもいい。」
「そうだな。他人に聞かれても大丈夫なんだとしたら愛称の方がいいか?ネオブレスレットとかどうだ?あくまでも装飾品だと言い張れるし、愛称はネオと呼べるし。」
「さすがだよコルネリス!君はアイデアの宝庫だな。」
「フレデリックに褒められるのは気持ち悪いな。じゃあフレデリックは一日も早く『解呪の魔法陣』を完成させてくれ。俺はネオブレスレットの改良を研究するよ。」
「・・・メリッサに会うのか?」
「あぁ、当然だろう?メリッサに実験用のネオブレスレットを作らせているんだから。」
「・・・そうか。メリッサによろしく伝えてくれ。」
メリッサはどうしているだろう?
この二週間彼女と連絡を一切取っていない。
何かあればメリッサから連絡が入るだろうから『便りはないのは無事な証拠』ってやつだな。
俺たちの邪魔はしない様に非常以外の連絡はしなかったのだろう。
自分も研究の最中に人に話しかけられるのを嫌っていたからな。
大好きな兄が行方不明のままなのだから不安定なままだろう。
俺はそのままメリッサに連絡をとった。
「メリッサ、どうしている?食事でもどうだ?」
「コルネリス!久しぶり!今どこにいるの?食堂に行けばいい?」
メリッサの嬉しそうなキラキラの声に俺は眩暈を感じた。
俺の連絡がそんなに嬉しいのか?かわいいヤツめ!
「じゃあ食堂に集合でいいか?」
食堂に移動するともうメリッサが俺の到着を待っていた。
「やっぱり食堂じゃ問題あるから私の部屋で食事しよ?」
「お前さ、男を自分の部屋に招き入れるってどういう意味か解ってるよな?」
無言で思いっきり足を踏まれた。
ひどい!
元カレのちょっとだけ期待したジョークにそんなに目くじら立てることなくね?
メリッサの部屋で久しぶりに二人きりで食事だ。
食事だけでもふつーに嬉しい。
「で?で?亮ちゃんが出てきたって事は完成したの?」
「あぁ。なかなか大変な研究だったよ。」
「そうだよね!波動の研究は音波(波形が大きい)だって大変なのに精神(波形が細かい)に関与するところなんて想像つかないよ。亮ちゃんの能力のおかげで完成したの?」
「あぁ、俺の能力がなければ難しかったかな・・・」
嘘は言っていない。俺の能力がなければ完成は難しかっただろう。
だが、俺の能力は一瞬だけ作りたいものの数式が浮かぶものの、それを記憶できるほど詳細に浮かぶわけではない。
フレデリックが多方面から仮説をたててあったおかげで俺の能力が生かされただけだ。フレデリックは思っていた以上に凄いヤツだった。
だけどそんなこと言わない。
メリッサの前であいつを褒めるようなことはしたくない。
俺って思ったより器が小さい男だな・・・
「どうしたの?なんでそんなに手柄をたてたのに悔しそうな顔しているの?」
「いや、少しでも早くメリッサの能力が戻ってほしいけど、このあとフレデリックが反対式をつくるのにどのくらいかかるのかなと思って。あとさ、あいつの能力何だか知ってる?皇族なんだから1つや2つは持っているはずだよな?」
「あぁ、そうなんだよね。私も気になるから聞いてみたけど教えてもらえなかった。しつこく聞いていいのかわからなかったし言い淀んでいたから違う話でかわしただけなんだけどね。もう一緒に戦うなら知っていないと困るよね?わたしの能力が復活した時点できちんと『共有してください』って頼んでみよう?」
「だな。敵がいつどう攻めてくるかわからないからあらゆる場面を想定してできるだけ準備をしないと。そうだ、アマーリエ嬢に会えないかな?その、準備のアドバイスの為に・・・」
「・・・亮ちゃん、アマーリエって名前をいう時にちょっと恥ずかしそうにしたね?あぁ、好きなタイプだよね。憧れているね?」
「えっ?な、なにを言っているんだよ!」
「ほらぁ~赤面してる!」
いやいやいや。たしかに好きなタイプだけど。けっこう年上だしって・・・あぁ、理々沙にはバレちゃうんだな、ほんの少しの感情が。
「ほんの少しだよ。カッコいい人に憧れる感じのアレだよ!」
「ふふっ。まぁ、そういう事にしておいてあげるよ。それより実験用の通信の魔術具いっぱい作ってあるよ。」
「それさ、ネオブレスレットって名前つけたんだ。フレデリックがそのままの呼び方しない方がいいからって。」
「ネオブレスね。了解!」
メリッサがそのままアマーリエにネオブレスレットで都合を聞くために連絡をとると、今からくるという返事が返ってきた。
「すぐに来るなんてさすがだな。頼むから絶対に変な事いうなよ。」
「わかってるって!絶対に言わないよ。」
「何を言わないのかしら?」
「叔母さまっ!早くて驚きましたわ!」
瞬時に理々沙の話し方からメリッサの話し方になった。大変なんだな、使い分けなきゃならないなんて。
アマーリエ嬢は本当に綺麗なでカッコいい人だ。
忙しいだろうに数分でここに来るとかできる感がすごい。30代には見えない程若々しいしフットワークも軽い。
「叔母様、魔塔主のハインリヒ・ダンケルマンという人をご存じですか?その方は叔母さまの事を想われていたのですか?いらっしゃるなりこのような事を伺ってもうしわけないのですけれど・・・」
「あら?ハインリヒに会ったの?何か言われたのね?」
「えぇ、無理やり心を読まされましたの。」
なんだって?!魔塔主?!
勝てるわけないじゃん!
芽生えかけの想いが数分でぽっきり折れた。




