#033 異能は先天性らしい
「お兄さま、大事なことを忘れていましたわ!お父さまは大丈夫ですの?」
私の質問にアマーリエが笑い出した。
「メリッサ、あなたはアカデミーでとても優秀な評価を得ていてしっかりしているようで、そうでもなかったりするのですね。甘えん坊だったり、ちょっとうっかりだったり。」
「おばさまは何でもパーフェクトでいらっしゃるように見えますわ。」
「ふふっ、そんなことはないわ。そうね、敵か味方かわかってしまう能力はあるわ。マナの多さによって特殊能力を持っている人は多いけれど、私もそれ。小さい時から相手の感情が色でわかるのよ。あなたもマナが多いと聞いたわ。何か特殊能力があるのではないかしら?あ、待って!言わなくてもいいわよ。秘匿したほうがいい場合も多いから。」
「わたくしは・・・魔力を流すと流した相手の心が読めます。秘匿・・・した方が良いのかもしれませんが、ここにいる人はみんな知っていますし、叔母さまには知っておいてもらった方がいいかもしれませんので・・・」
「魔力を流すと?というのは?」
「医師の真似をしてスキャンしていたら思考が読めてしまったのです。たまたま…と言いますか・・・」
「まぁ、そんなに魔力が潤沢なのね。でも、それは特殊能力とは違うわ。特殊能力というのはね、生まれつきのものなのよ。それだけマナが多ければ何かあるはずだわ。黒魔術や洗脳で封じられていなければね・・・」
えっ?!私なにか異能が使えるの?すごぉ~い。なんだろう?攻撃系だったらいいなっ。目からビームがでるとか~。
わくわくしている私とは反対に兄が青ざめた顔になった。
「ではやはり、現公爵夫人が?」
「まぁ、間違いないでしょうね。私の予測だと、誰よりも先にメリッサの特殊能力に気付いて自分が預かると言い張ったのではないかしら。手元に置いて黒魔術の洗脳で封じたのでしょうね。メリッサの記憶障害も洗脳系かもしれないわね。」
叔母様・・・申し訳ありません。記憶障害は理々沙がメリッサの身体に入ったせいです・・・
「ではメリッサの特殊能力が何かを知っているのは現公爵夫人だけというわけか。兄なのに妹の先天性の能力も知らなかったなんて悔しいな。」
「でもお兄さま!もしそうだとしたら、わたくし現公爵夫人の脅威になるような能力があった・・・かもしれないということですわね?叔母さま、黒魔術によって封じられた力を再び使えるようにするためにはどうしたら良いのでしょう?」
「メリッサ・・・」
突然フレデリックが私を呼んだ。・・・にもかかわらず口ごもった。
「フレデリックさま?」
「前に私がメリッサと食事をしたときに、私が何の研究をしているか話したのを覚えているか?」
「あっ!呪いの反対式の・・・」
そうだった。
フレデリックは人間の精神も波動でできているので、黒魔術による呪いの数式をつくって反対の波動をぶつけることによって無力化する研究をしていると話していた。でもこのことはまだ秘密にしたいと仰っていたはず。
「フレデリックさま、無理にお話しされなくても大丈夫ですわ。」
「いや、私も覚悟を決めた。貴女の味方は私の味方でもある・・・そう考えても構わないだろうか?アマーリエ嬢。」
アマーリエがフレデリックをじっと見てそして他の人、ジェフリーとコルネリスを見てにこりと笑う。
「大丈夫ですわ、フレデリック殿下。ここに貴方の敵になる人間はいませんよ。恋敵になりそうな者はいますけれど・・・」
ふふっと笑ってちらりとコルネリスを見た。
亮ちゃんまだあきらめてないんだ・・・嬉しいけど困る・・・
「恋敵!それは困るな。冗談はさておき私の敵になる者がいないならば他言無用の話をしよう。今ちらりとメリッサが言った通り私は呪いの波動の計算式の研究をしている。計算式ができれば反対式を作れば解くことができるという仮定の元にだ。こんな言い方をすれば誤解をされるかもしれないが、『メリッサが受けた呪いがなんなのか』がわかれば計算式を完成させる一助となるし、私がメリッサを助けたいという願いも叶うのだが、『何を封じたのか』がわからないと仮説をたてるのが難しい。公爵か誰か知っていそうな者はいないのだろうか?メリッサの様子だと本人は忘れてしまているようだし。」
「まぁ、フレデリック殿下!素晴らしい研究をなさっているのですね。もちろん秘密にさせていただきます。そうですね・・・メリッサが現公爵夫人をうまく誘導して心が読めたらいいのですけれど・・・」
「叔母上!それはメリッサが危険すぎます。すでにメリッサは何回か命を狙われているのですよ?公爵に毒をもったのもあの女に決まっています!」
「でしょうね。今は公爵はどんな状態なの?毒を盛られた後誰にも会っていないままかしら?」
「そうです。メイドに扮した伯母上と会っただけです。」
「ん~そうねぇ、まだ公爵の生死を隠しておく理由ってある?それよりも、マティルダをアーサーが呼んでいるという理由で呼び出してその時にメリッサに回復魔法と称して魔力を流させた方がいいのではないかしら?私とジェフリーも同席していれば変な事はできないでしょうし、うまく誘導できるかもしれないわ。そういえばジェフリーの特殊能力は何なの?」
「私も言うのですか?私は伯母上やメリッサのようにマナは多くないので大したことはないですよ。そうですね、わかりやすく言うと剣で戦っているときに相手の一手先がわかってしまう・・・くらいのものです。わかっても防げなければ何の意味もない能力です。」
「そうなのね・・・覚えておくわ。では、あなたはどう?小侯爵。言いたくなければ言わなくてもいいのよ。」
静かに成り行きを見守っていたコルネリスが急に話を振られてビクッとした。
「すみません。アマーリエ嬢が戦略を練るのに俺の能力も話したほうが良いとは思うんですが、俺のは全く役に立ちそうにないんですよ。『こんなものを錬成したい』って思った時に一瞬だけぱっと計算式が頭に浮かぶだけの能力です。結局一瞬ひらめいただけの感覚を頼りに自力で計算式を組まないといけませんし・・・」
「なんだって?!」
コルネリスにフレデリックが食いついてきた。
「素晴らしい能力じゃないか!是非メリッサの呪いを解くときも協力してくれ!」
「さすが私の姪ね。自分に都合がいい能力を持ち合わせた人材がすぐそばにいるとは!では私はジェフリーと一旦アーサーの所に戻って作戦を練るわ。作戦実行は次の日曜日!作戦終了後はまたここ、寮のメリッサの部屋に集合という事でいい?」
全員深く頷いた。
それより、『日曜日!』って。
さすが日本で作られたアニメが原作って感じで笑いそうになるのを我慢した。




