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#031 So stupid it got found out.


 フレデリックが自首を促すと講義を受けていた学生たちが一斉に下を向いた。


 「なぜ全員下を向くのだ?調べはついているのだぞ?ではまずメリッサを突き飛ばしたものだ。自分から名乗り出ろ!」


 フレデリックが叫ぶと茶髪の男子学生が恐る恐る立ち上がり

 「違います殿下!突き飛ばすなどと!手が触れたので少~しだけ押しただけです。」

 と必死に弁解を始めた。

 「あぁ、わかるぞ。」

 「そうですよね!殿下!本当に少し当たっただけなのです!」

 フレデリックの相槌にすがるように返答するも

 「少し押しただけでメリッサが勝手に転んで数十センチも勢いで擦られ擦過傷ができたとでもいうのか? 子爵家の分際で公爵家の令嬢を押しただけでも問題があるというのに傷をつけたのだぞ?ごまかしたい気持ちはわかるが、話にならぬ!連行しろ!」

 再びどこからともなく騎士が登場して私を押して転ばせたらしい男子学生が連行された。

 

 下を向いて自分は関係ないという姿勢を決め込んでいた受講生たちがブルブル震えだした。

 フレデリックが「自首しろ!」と言いながらも誰がやって、そいつがどこの家門の者なのかもすべて把握していることに恐怖を感じているらしい。

 反対にフレデリックはとても嬉しそう。まるでお白洲(おしらす)で奉行が悪者に沙汰を言い渡しているようだ。

 

 「次っ!転んだメリッサの手を踏みつけたもの名乗り出よ!」

 思ったよりも小柄な女子学生が立ち上がった。踏んだのは女の子だったんだ・・・そうだよね、体重のある男性だったら手の甲が骨折するよね・・・

 「私は踏みつけていません!歩いていた先にたまたま令嬢の手があって避けられなかったのです!むしろそのせいで私が転びそうになりましたわ!」

 こういう時に開き直るのは女性が多い。女性には『だから?!』という必殺技を持ち合わせている人が多いからね。

 でもその必殺技はフレデリックには逆効果だったようだ。

 「ほう?其方も子爵家のものだな?子爵家の者がたとえ故意だとしても公爵家の令嬢に怪我を負わせて開き直って済むとでも思っているのか?見ていた者の証言によると其方が一番うれしそうにメリッサを踏みつけたらしいではないか。しかも気が付かず引っかかって踏んだのではなく傷は垂直に踏みつけられたものだった。其方には偽証罪も追加されたという事だけは教えておいてやろう。連れていけ!」

 小柄な子爵令嬢は逆切れして騎士たちに嚙みついたり蹴ったりしながら連行されていった。

 その行為が罪を増すということに考えは及ばないのだろうか?

 

 「自分の考えの狭さから学生を傷つける教師も自分が害を受けたわけでもないのに自分より高位の者を突き飛ばす学生も尻馬にのって自分より高位の令嬢を踏みつける学生も全員子爵家のものではないか!そんなに子爵家が常識さえも教育できていないのなら子爵家の者はアカデミーに通う資格はないのではないか?!」

 フレデリックが吐き捨てるように言うと教室が葬式のような雰囲気になった。どこかからかすすり泣くような声も聞こえる。

 正直、痛い思いも嫌な思いもしたので『私は正しかった。嘘なんかついていない。』って認めさせただけでも『ざまぁ!』っておもう。

 でも結局権力でねじ伏せただけで、私の手を踏んだ令嬢は「ごめんなさい」とも思っていない。


 これって正しい事なの?


 フレデリックの沙汰を静かに見守っていたアンソニー先生が私の疑問に気づいたらしい。

 「ザビーネ、オーヴェル令嬢に何か言う事はありませんか?」と静かに女教師に尋ねた。

 あの女教師ザビーネって名前なんだ・・・

 「オーヴェル令嬢・・・申し訳ありませんでした。まさかまだ医学初級を受けたばかりの令嬢にスキャンの技術があることも、それを使用して毒を動かせるほどの技術と魔力を持ち合わせてるということもあり得ないと思っていました。こうして自分が体験した今でも信じがたいほどのことなのです。驚きました。私の無知が令嬢を傷つける一因となった事本当に申し訳なく思っています。」

 この先生に怪我を負わされたわけではない。落ち込む姿に心が痛い。

 「いえ、大丈夫ですわ。わたくしが皆様の想像の範囲外の事をしてしまったのは事実のようですから。なのでフレデリックさまも、もう怒りを鎮めてくださいませ。わたくしここにいる学生の皆様にも何かしてほしい訳でもどうにかなってほしい訳でもありません。むしろ私が常識外の事をしてしまって申し訳ないと思っていますもの・・・ザビーネ先生痛い思いをさせてしまってすみませんでした。」

 

 私怒ってないから、だから早く講義を始めて?と言う気持ちで反対に謝罪するとなぜかフレデリックとコルネリスがむっとした表情になった。

 「オーヴェル令嬢もこう言っていますしここにいる学生の皆さんは一言づつ令嬢に謝罪の言葉をかけて退出されたらどうでしょう?もう今日は講義にならなそうですし。」

 アンソニー先生が大人の余裕で纏めにかかる。


 え~折角来たのに講義無し?

 でもここにいる全員に何らかのお咎めがないうちに退出させた方がいいというのは正しいかもしれない。

 


 学生たちがひとりづつ「申し訳ありませんでした。」と謝りながら退出していった。

 「では私達も引き揚げましょうか?」

 アンソニー先生がザビーネ先生に話しかけた時だった。


 「お待ちなさい!」

 

 アカデミーにはふさわしくない華美な装いに派手な化粧の少し年配の女性がお付きの者を何人か引き連れて教室に入ってきた。

 誰?首を傾げたのは私だけらしく残っていた教師二人とフレデリックとコルネリスは驚いた顔をしている。

 「皇后陛下?!なぜこのような場所へ!」

 フレデリックが驚きの表情を隠せないまま呟いた。

 

 はぁ?皇后?本当になんで?!

 

 「オーヴェル令嬢」

 「あっ、はい陛下。ご機嫌麗しゅう・・・」

 「オーヴェル公爵はお元気?」

 「はい、父は息災です。」

 「・・・そう・・・」少し不満な顔でつぶやきフレデリックの方に向き変えた。

 

 「皇太子、貴方にはがっかりです!くだならいことでアカデミーで騒いでいるという報告と苦情があったので私が確認に参ったのです。」

 「くだらない事?アンソニー先生、これはくだらない事でしたか?」

 「・・・皇家の血筋である公爵令嬢が子爵家の者達に侮辱され大怪我を負ったのですからくだらない事ではないと私は思いますよ。」

 「ほら、アカデミーの教授がそう言っているのです。誰の何の苦情を真に受けてここまで来られたのでしょうか?。大体、アカデミーに関することは私と父上が行っている事業です。貴女がしゃしゃり出てくることではありませんよ?」

 「なんですって!皇宮の騎士が無断で使われたのだから私にも関係がありますわ!」

 「何を仰っているのです?皇宮の騎士など使っていません。すべて私の管轄の護衛騎士です。私にはがっかり?貴女は一体何がしたいのです?」


 突然やってきた皇帝の後妻とフレデリックが口論を始めた。

 フレデリックが権力を笠に自分の婚約者をバカにしたものを断罪したとわめきたてる皇后VSそれは正当だし皇后には関係ないだろうと怒る皇太子・・・

 

 ・・・あれ?待って・・・

 

 「オーヴェル公爵はお元気?」って社交辞令だと思ってたけど、元気だって言うとちょっと嫌な顔しなかった?

 お父さまが即死毒を盛られた後は姿を見せずに過ごしているはず。

 だから毒を盛った犯人と関係者は「生きてるの?死んだの?」って思っているはずだよね、そういえば。

 まぁ、ドラクレシュティの末裔の誰かだとは思っていたけどちょっと鎌をかけてみる?


 「皇后陛下、先ほどわたくしに父上が元気かと聞かれましたね?そのあと少し嫌な顔をなさったのはなぜですの?公爵が元気だと困る事でもあるのですか?」

 言い争っていたフレデリックがぴたっと静止して皇后の顔を見る。

 皇后は不意打ちをかけられて明らかに狼狽えた表情をした。


 フレデリックが「She was so stupid she got found out.《バカすぎてバレちゃった》」

 と肩を上げた。


 

 

 

 

 


 

 

 

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