#027 通常回
アンソニー先生に言われた通りに毎日できる限り錬金術の中上級クラスの講義を受講した。
結果、とうとう私 錬金術上級のバッチを頂きました!うぇ~いっ♥
毎日『イケ略』のヒロインであるマリー・ブラウンに絡まれたり、絡まれたり、絡まれたりしたけどもう上級クラスに上がってしまえばしばらく会わなくて済むかと思うと気が楽。
メリーは意地悪をしてくるわけでもないし、嫌味を言ってくるわけでもないけど、私が最速で上級に上がる事が悔しいと毎日言われ続けるのはとても苦痛だった。
悪意はないと思うんだけど・・・?・・・あれ?あるのかな?・・・わからん。
上級クラスは一日に一講座しかないので、余った時間で医術を基礎クラスから受けようと思う。
フレデリックも武術クラスを増やすって言っていたからこの前の事件はこたえたんだろうね。
まぁ、この帝国の皇太子なんだから武術には長けていた方がいいはず。
いつ何時命を狙われるかわからないからね。
そういえばお兄さまは叔母さまとお話しできたのかな?上級進級の報告もしたいから夜にでも連絡してみよう。
それよりも・・・
「メリッサ、午前の講義は終わったのか?ランチでも一緒にどうだ?」
私のスマートウォッチ型の通信の魔道具にフレデリックの魔法陣が追加されてから毎日のように連絡が入るようになった。
正直、イケメンは目の保養。見ている分には女性ホルモンが分泌されてお肌に良さそう♡ってなりそうだけれど、私には構わないでほしい。
私じゃなくてマリーとランチしてよ! なんて言えるはずもなく。
「わかりました。ルクス寮の食堂でお待ちしていますわ。」と返事をした。
午前中は新しく始まった錬金術上級クラスを受講したので、午後からは医術の基礎クラスと初級クラスを受ける予定だ。
医術は主に回復魔法や蘇生術などを学べるらしい。わくわくする!
寮の食堂でこれから受ける新しい講義に想いを馳せてニヤニヤしていたらフレデリックがやってきた。
「フレデリックさま。ごきげんよう。」
フレデリックに挨拶をしたのに今までに見たことがないほど機嫌の悪い表情をしている。
えっ?私なにか怒らせた?それならなぜさっき甘々ヴォイスでランチに誘ってきたの?
おろおろしていたらフレデリックの後ろからひょこっとマリー・ブラウンが現れた。
「メリッサちゃんやっほ~。お邪魔虫のマリーが一緒に来ちゃったっ。えへっ♥」
「マリーは招待してないんだから自分の寮に帰れよ!」
フレデリックがマリーに苦言を呈する。
「あの・・・わたくし本当に知らないのですけれど、ルクス寮じゃない人がここに入るためにはルクス寮に住む人が招かないと入れないのではなくて?」
私は常々疑問に思っていたことを質問する。
「うん。私は男爵家でルクス寮には入れないんだけど、ここの寮生にくっついて入れば入れるんだよっ。」
フレデリックが不機嫌なのに対してマリーはすごくテンションが高い。嬉しそうな顔で堂々と違法入寮を仄めかす。
あ、あれか。オートロックのマンションに誰かに続いてすっと入っちゃう系のやつか・・・
「でも今日は午前中にフレデリック殿下の部屋にいたから違法じゃなくて普通にここに来ただけだけどねっ。」
「フレデリックさまのお部屋に?・・・そうですか、仲良しですわね。」
ちょっとムカっとした私が作り笑顔で返事をした。なぜムカっとしたかはわからない。
でも・・・
二人でフレデリックの部屋にいたならそのまま二人でランチしろよ!私を巻き込まないで。
作り笑顔で平静を装ったつもりだったけど、ものすごく不機嫌な顔になってしまっていたらしくフレデリックが慌てた感じでオロオロしだした。
「マリー!お邪魔とか言うなら帰ってくれないか?私はこれから自分の婚約者と親交を深めたいのだ。メリッサ、違うんだ。マリーと部屋にいたというのは私の部屋の研究スペースで討論していただけなんだ。」
嫌われたらお前のせいだと小さい声でこそこそマリーを責める。
「えぇ~だってぇ~、メリッサちゃんとせっかく仲良くなったのにメリッサちゃんは最速で錬金術上級に上がっちゃったから会えなくなっちゃったんだもん!殿下こそぉ、同じ寮なんだからいつでもメリッサちゃんと会えるじゃないっ。マリーも一緒にランチしたいよぉ。」
なんならワイン飲ませて左の部屋に連れ込んじゃいなよ。と小さな声でこそこそフレデリックに言う。
フレデリックの左の部屋というのは寝室の方だ。
なんなの?この二人!何を言っているの?!
「殿下、マリーさん、少しいいでしょうか?じゃれあうならばお二人でなさってください。わたくしを巻き込まないで!不愉快ですわっ。わたくし失礼させていただきます。」
なんか盛大にムカついたから私は席を立って自分の部屋に戻ってきた。なんでこんなにムカムカするのかわからない。マリーは会いたかったと言ってはいるけど嫌がらせかもしれない。
やっとマリーと同じ講義に出なくて済むようになったというのにわざわざやってくるなんて。
フレデリックもマリーと一緒にいたのなら、そっちと親睦深めればいいじゃない!
もうっ!二人のせいでお昼食べれなかったよ!
お腹がすいて講義に集中できないのも困るので私は寮ではなくアカデミーの塔の食堂に向かった。
北塔、南棟、東棟、西棟を繋ぐように3階建ての中央棟があり、そこにアカデミーの食堂がある。
北塔だけ『棟』ではなく『塔』なのは、魔術の専門で学科も多く東棟西棟南棟よりも高い建物だからだ。ちなみに10階から上は魔術で増築されたらしく『魔塔』と呼ばれている。
アカデミー中央棟の食堂はかなり広くて人も多くガヤガヤしていた。
これは高位貴族には不快な場所かもしれないね。
私の通っていた大学の学食にとても似ていて私にはとても懐かしい雰囲気の場所だ。
この後の医術は東塔の4階にあるので東棟寄りの場所の長テーブルの端に座り、カフェテリアの横にある売店で買ったサンドウィッチを食べた。
さすがに命が狙われているとわかっているのだから誰が触ったかわからない食事や食器よりも、誰が買うかわからない売店の食べ物の方が安全な気がしたからだ。
食べる前に服の上から自分の作った解毒のお守りを手で確認する。
東棟の方から入ってきた茶髪の中肉中背の男が私と目が合うと、すごくバカにしたように笑いそのまま通り過ぎて行った。
なんなの?ま、いっか。知らない人に馬鹿にされても痛くもかゆくもないし?
学食のような場所で昼食を急いで済まし講義に向かう。
なんだかとても懐かしい行動だ。
東棟も西棟と作りは同じなので迷わずに医術基礎クラスの教室で基礎クラスの講義を受けられた。続いて医術初級クラスの講義を受けるために初級クラスの教室に入る。
初級クラスは基礎クラスに比べて受講者も多く教室も広かった。
すでに教室にいた何人かが私の顔を見ると隣の人とひそひそ話をはじめる。なんか感じ悪い。
さっきの人もそうだったし、なんかバカにされている気がする。
面と向かって言う人は減ったけれど、私はまだバカで悪女って有名なのかもしれない。
知らない人にバカにされても貶されても、私は私が学びたいものを学ぶんだ!そっちが優先!
授業開始の鐘が鳴り女性の先生が入室してきた。
驚くことに医術初級の先生が私の顔を見るなり周りの生徒と同じように、とてもバカにした顔で私を見て嘲笑った。
「これはこれは、オーヴェル令嬢。貴女は皇太子に対して習ってもいないスキャンの技術で治療をしたと仰ったそうですね。毒を?お守りに移した?とか!入学試験の時もよりによって『魔力酔い』をおこしたと仰ったそうですね! 私のクラスを受講なさりたいならばそうされて構いませんが発言は控えてくださいませ。私は虚言を吐く人間は許せないもので!」
爆笑がおこった。
教室中の学生が私の方をみて軽蔑したように嘲笑っている。
「えっ?」
さすがの私も狼狽えた。
「講義中は教師の許可ない発言は許されていません。何か仰りたいならば退出してください。」
自分の魔力に酔ったのも毒をスキャンの技術で動かしたのも事実だけど信用されていないらしい。
信用しないどころか虚言壁があると思われ見下されているようだ。
居心地はかなり悪いけど自分が嘘を認めたと思われたくないので講義は受けようと思う。
なんだろう?
この帝国の皇室の血統をひく公女のはずなのに、こんな大勢の人にバカにされるなんて・・・
でも講義は受ける!
回復魔法は絶対に習得してやるんだ!




